ここ数年、より耳にするようになった「SDGs」という言葉やロゴ。持続可能な社会の実現を目指す世界共通の目標が広まりつつある。将来も、楽しくゴルフを続けられる、ゴルフ場の“サステナブル”活動を独自に調査。

SDGsの17目標は、人権、経済、社会、地球環境等、分野ごとに課題を分類。今回紹介するのは、目標に対し、具体的に真摯に取り組むゴルフ場だ。そもそもゴルフというスポーツ自体、「健康増進」の要素が大きく、昔から「環境問題」と常に向き合ってきた取り組みも多い。例えば、プラスチック製品、食品ロスの削減。ジュニア育成やコースでのイベントなど「地域とのつながり」を強化している。全国のゴルフ場に同テーマで聞いてみると……。

ロペ倶楽部では里山再生活動を実行中

栃木県の人気コース、ロペ倶楽部では、系列のジュンクラシックCCと、「心豊かな希望の未来へ。永く愛されるものを持続可能な素材と方法で」の理念のもと、とちぎSDGs推進企業の登録を行い、17のゴール達成に向けて取り組んでいる。重点項目はプラスチックごみの削減、地域の「くまの木里山応援団」との植樹活動。「今後もフードロス削減などの目標を達成すべく取り組みます。くまの木里山応援団さんとは協同で、休遊地の里山再生活動と植樹活動が広がるよう継続活動していきたいです」

「麺類に付くご飯は注文制に。お風呂場のビニール袋をなくした際、当初は『ないの?』と言われていましたが、今では浸透してきますね」(郡山熱海CC/福島県郡山市・矢吹支配人)。

「食材は残さないが基本、残った場合は、料理長が日替わりランチとして考案したり。グリーンフォークをなくした理由を最初は聞かれましたが、きちんと説明すれば理解していただけます」(大玉CC/福島県安達郡・高甫支配人)。従業員やメンバー、皆が自分事として意識することが重要のようだ。

郡山熱海CCと大玉CCと同運営で足並みを揃える白河国際CCでは、プラスチックごみの削減を目的に、グリーンフォーク&マーカーと脱衣所のポリ袋を廃止し、ランドリーバックの販売を行う。また、乳がんへの意識を高めていただくことにより「すべての人の健康と福祉を」の目標に向けてピンクリボンチャリティイベントを開催する。「レストランや厨房のフードロス対策への取り組みも行っていきたいです」。

岐阜県の明智CCでは、フードロス削減のためレストラン注文時に量の確認と苦手な食材を聞いている。箸はリサイクルだ。①企業として積極的に取り組むべき課題であること。②会員の理解を深める。③従業員の意識改革のきっかけとする。と3つの現実目標を掲げる。「会員さま、従業員の理解と協力は得られています。胸を張って素晴らしい企業に勤めていると感じてもらえるよう推進していきます」

「時代に合ったゴルフ場の在り方やサービスを考え、プラスチックごみ削減、AEDの運用、環境負荷の少ないエネルギー、ジュニアの育成の取り組みを進めています。ロッカーのビニール袋の提供終了は少し苦情がありましたが、ランドリー袋の持参等を呼びかけて、現在は当たり前の状況になっています。今後は駐車場の屋根に太陽光パネルを設置予定。脱炭素への取り組みを進めます。ハウス内のLED化も約90%行なっており、2025年には100%完了の予定です」(ABC GC/兵庫県)

富山県のパブリックコース、小杉CCでの活動。ロッカールームと脱衣所のビニール袋を廃止、ランドリーバックで対応、プラスチックストローやテイクアウトの容器を環境に配慮したものに。カートもガソリン車からバッテリー車に移行。ハウス内の照明のLDE化の促進や、館内温度管理の徹底と不要箇所のこまめな消灯を実施、フードロス削減、良好な職場づくりなど「ゴルフ場として取り組めること」からスタートし、誰一人取り残さないで実施することがテーマ。

福井県の越前CCでは、環境を汚さない新しい薬剤による芝生管理、雨水を利用した芝生散水などを実践。「お客さまに環境保護の観点から、ごみ捨てやビニール袋の軽減などもご協力いただいています」

「ゴルフを通じて健康維持、増進を図り、健康的な生活環境を実現してほしい」と話すのは愛知県の西尾CC。EV充電スタンドを設置しクリーンエネルギーの供給、照明のLED化、消費電力監視システムによる電力低減、クシやカミソリなどプラスチック品を廃止。これらが顧客満足度アップにもつながっているという。「EV充電はとても喜ばれました。今後も継続し、取り組みを増やしていきたいです」

女子ツアーやシニアツアーを開催する福岡県のザ・クラシックGCにも聞いた。「社会の流れを意識して紙ストローや浴室でのバイオポリ袋を採用しました。チャリティゴルフやゴルフ・カルチャースクールは、早期から取り組んでいてメンバーに評価を頂いています。今後は、エネルギーの自社調達を視野に入れています」。同クラシックマネジメントグループの佐賀クラシックGC(佐賀)、西日本CC(福岡)でも同様に取り組む。

栃木県の鹿沼グループのSDGs

栃木県の鹿沼グループが行う取り組みを覗いてみた。鹿沼CC、鹿沼72CC、栃木ヶ丘GCの3コースを運営する鹿沼グループマーケティング広報部部長の荒川磨理さんは、「弊社のビジョンは、また来たいと思ってもらえる『次のゴルフ場を創り出す』です」と語る。

昨年4月にビジョンが一新され、「次のゴルフ場」がキーワードになった。ここに鹿沼のSDGsの精神がある。鹿沼グループは、2022年3月にSDGs宣言をして、地元の情報力を生かした社会貢献・地域貢献・環境に配慮した事業活動を行うとともに省エネや廃棄物の削減を徹底した。社員の働きがい向上やダイバーシティ経営の促進に取り組み、健全な事業運営と継続を目標に立てた。「メインバンクの足利銀行さんのすすめが大きいです。当初は本格的なものはなくて、ひっそりという感じでした」。しかし、この時点ですでに、婚活イベントや花火大会など地域社会への貢献実績があった。

「地域と連携してゴルファー以外の方にもゴルフ場を利用していただく。ゴルフ場の場所は動かせないので、地域の方と一緒に作り上げていくことが大切です」。以前からコース管理の工夫のひとつとして地域の有機物を生かした肥料を手作りしてきた。「有機に変えて芝の活力や質感が変わりました」(豊田一弘グリーンキーパー)。この肥料を使用し続けることで、土壌が改善され芝や木々に病気が出にくくなった。環境にも寄与している。

画像: 県内の名水・日光市の天然水を使った氷に、地域特産とちおとめの手作りシロップをかけたかき氷。ゴルフ場での花火大会は、いまや鹿沼市の初夏の風物詩になりつつある

県内の名水・日光市の天然水を使った氷に、地域特産とちおとめの手作りシロップをかけたかき氷。ゴルフ場での花火大会は、いまや鹿沼市の初夏の風物詩になりつつある

「廃プラ宣言で、売店のビニール袋を有料にしたり、プラスチックストローをやめたり。ただ、お風呂場のビニール袋だけは要望に沿って戻してしまった。課題ですね」。約120名の従業員がいますが、4割は新卒で地元採用が多く、男女関係なく活躍しています。役職者の3割が女性、女性幹部が4名います」。コメントしている荒川さん自身が体現者だ。「縦割り組織を改め、若手も大抜擢しました。やる気も出ています。その時代の人が育たないと企業は育ちません」

画像: 地元商社・コレトチの提案を受けて吉川油脂と共同で廃油をリサイクルしたバイオ燃料を使い栽培したミニトマト「とまとまる」

地元商社・コレトチの提案を受けて吉川油脂と共同で廃油をリサイクルしたバイオ燃料を使い栽培したミニトマト「とまとまる」

この夏に始めたのは、廃油をリサイクルしたハンドソープを3コースで使用開始、廃油をリサイクルしたバイオ燃料を使って栽培したミニトマト「とまとまる」の販売。いずれも地元企業からの提案だった。「自分たちがSDGsをやっている印象は薄いかもしれませんが、誇りを持って取り組んでいます。イヤイヤではなくお客さまの喜ぶ顔が見たいという思いで取り組んでいることが、SDGsにつながると思うんです。カラフルなロゴはあるけど、結局何をやっているの? というのはイヤでした。1つずつ、だと思います」

メンバーさんの反応を訊く。「もしかしたら、気づいてない方がいらっしゃるかも(笑)。でも、実はメンバーさんには、スタッフと話をするのが好きで来ていただいている方も多いんです。伝わる機会も多いと思います」。ここで撒かれたSDGsの種から、多くの芽が出るのだろう。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年8月22 29日合併号より(弊社HP調べよりアンケート回答をいただいたゴルフ場を掲載しました。PHOTO/各ゴルフ場提供)

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