「久常涼くんが見事に初優勝したね!」(時松)
時松 欧州ツアーのカズーフランスオープンで、久常涼くんが見事に初優勝したね! このツアーでは青木功さん、松山英樹さん以来の3人目の快挙。やっぱり世界で勝つって、本当にすごいことだね。
川村 心から祝福しているし、すごいことを成し遂げたんだって敬意を感じてる。本当に快挙だよね!
時松 松山(英樹)さんも、「僕はヨーロッパで勝っていない。中国もやっぱりアメリカっぽい雰囲気でしたから。ヨーロッパ圏で勝つのはすごい」と祝福のコメントを出されていた。久常くんは勝利者インタビューで、「こっちで一番頼れる先輩が川村さん。このタフなツアーに5年もいるのですごいと心の底から思う。毎週のように相談させてもらっていて、僕の心のなかでは『神様』。川村先輩のおかげで優勝できたようなもの」と語っていたみたいよ!
川村 そんなふうに言ってもらえて光栄です。僕も改めて頑張ろうという気持ちにさせてもらえるよね。
「欧州ツアーのなかで、ようやく飛ばない部類ではなくなった(笑)」(川村)
時松 そのタフな欧州ツアーの話をもっと聞きましょう。やっぱり飛距離勝負のところはあるの?
川村 飛ぶ選手は当然有利だよね。アメリカへ行くにしても飛距離は必要になってくるだろうから、トレーニングというよりも、体の使い方の勉強をして、狭いホールでもしっかり振れるようになってきたところだったんだ。キャリーで290ヤードまでは来て、欧州ツアーのなかでも中の上くらいで、ようやく飛ばない部類ではなくなった(笑)。だけど手首を怪我してからは飛ばす練習ができなくなって、20ヤードほど落ちちゃったかな。
時松 せっかくやってきたことが怪我で……悔しい。
川村 怪我したときはめちゃくちゃ落ち込んだ。飛距離を伸ばすためにどれだけ一生懸命いろいろやってきたかと思って。でも、怪我をして、やれる練習が少なくなったからこそ、今自分ができることで、どれだけ少ない数で上がれるかにフォーカスできている。以前は考えていなかったこともしっかり意識が及ぶようになったし、怪我の功名じゃないけど、マイナスには考えないようにね。
「僕は5番ウッド、マキロイは8番アイアン」(川村)
時松 飛距離ばかりがゴルフじゃないもんな。
川村 昨年の開幕戦、3日目までマキロイと一緒に回って、もう、どこまで飛ばすのってぐらいだった。5番ウッドで僕が2オンを狙ってるホール、マキロイは8番アイアン。違うゲームみたいに思えてきて、この2人が同じ舞台に立つなんて無理と思われたはず。だけど、3日目まで同組ってことは、2日間は同じスコアで回れているってことでもある。
時松 どれだけ飛ばすか、ではなく、どれだけ少ない打数で上がるか、が勝負のスポーツなんだと改めて思わせてもらえる。
川村 うん。僕とマキロイが2日間同スコアの勝負ができて、「コイツには敵わない」ではなくて、「僕でも勝負ができるんだ」と思わせてくれる。飛距離はもちろん不利。1年間なら勝てないかもしれないほどのハンディになるけど、1試合なら勝てるかもと思える。ゴルフというスポーツ、本当に面白い!
「強盗に遭ったんだって?」(時松)
時松 そうして欧州で戦ってること、尊敬するよ。そういえば、強盗にも遭ったんだって?
川村 南アフリカでね。もう過去のことだから、シリアスには考えてもらいたくないけど。車で走行中に1台の車に追走、並走されて、強引に停止させられた。中から出てきたのは警察を名乗る2人組だったんだけど、カギを抜かれてそのまま拉致されて。現金やゴルフクラブほか、旅の道具すべてが強奪された。レンタカーのスペアタイヤやガソリンまで。許されたのはパスポートだけ。
時松 大変な思いをしたんだな。怪我がなくて幸いでもあった。参戦予定の試合を欠場しなければならず、一時帰国する羽目になったんだよね。
川村 拘束されて3時間も、しゃべるな、目を開けるなと。その強盗が鈍くさくて、クレジットカードからカネをなかなか引き出せずに、暗証番号、嘘をついてるなら殺すと。あんな状況で嘘なんかつくわけない。早くしてくれよと思うんだけど、暗証番号を覚えられずに電話をかけ直してきたり。強盗に3時間もかけるなよって。
時松 3時間も! そりゃ大変だった。
川村 トイレをするときも腰をつかまれて、早くしろと言われるけど、そういうときに限ってなかなか止まらず、途中なのに引き戻されて、うわ、最悪や~って(笑)。3月のまだ肌寒い日本へ、強盗に遭ったときの服のまま、Tシャツ、短パン、サンダルで、ビジネスクラスで帰ってきた(笑)。
時松 話を聞いていると、やっぱ、欧州ツアーは、タフやな~。
PHOTO/ Tadashi Anezaki TEXT /Yuzuru Hirayama
※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月17日号「時松プロ ご指名プロと技トーク わかったなんて言えません」より