PGAツアーのアジア圏マーケティングディレクター、コーリー・ヨシムラさんによるツアーホットライン。今回は、ZOZOチャンピオンシップに出場する、ザンダー・シャウフェレの中に残る日本の思い出。

2019年、シャウフェレは第1回ZOZOチャンピオンシップへ出場するために日本を訪れた。そこにはゴルフ界のスター選手が顔をそろえ、後に大会で優勝したタイガー・ウッズの姿もあった。

大会の初日と2日目は、ジャスティン・トーマス、ロリー・マキロイと同組でまわった。人気選手3人が一緒にまわるということもあり、そのグループについていたギャラリーは、一言で多いというだけでは足りないほどの数だった。

「JTやロリーと今でも当時のことを振り返ることがある。1番ホールに行くと大勢のギャラリーが、ティーイングエリアを取り囲んでいて私たちの名前が呼ばれるとメジャー大会並みの大拍手で迎えてくれた。それくらい日本のファンの熱狂ぶりはすごかった」とシャウフェレは語る。

以後、シャウフェレにとってZOZOチャンピオンシップは、毎年必ず出場したい大会となったのは言うまでもなく、2023年も例外ではない。ライダーカップに2回目の出場を果たし、その厳しい戦いを終えてまだ数週間しかたたない内に、シャウフェレはZOZOチャンピオンシップ初優勝を目指し、今年も千葉県のアコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブに戻ってきた。

母、ピンイーが4歳の時に台湾から移住し、今でも母方の祖父母が暮らす日本での大会は、シャウフェレにとって特別であり、楽しみも多い。その後、母は、アメリカのサンディエゴ州立大在学中に、ドイツ生まれの父と出会い、その地に留まった。

また、残念ながらコロナ禍のため無観客での大会ではあったが、日本は、シャウフェレがオリンピックで金メダルを獲得した場所だ。シャウフェレが30歳の誕生日を迎える10月25日の3日前に終了するZOZOチャンピオンシップは、この秋、彼が出場する唯一のPGAツアーの大会になるかもしれない。

画像: ザンダー・シャウフェレとその家族、親族。母方の祖父母が暮らす日本には特別な思いを持っている

ザンダー・シャウフェレとその家族、親族。母方の祖父母が暮らす日本には特別な思いを持っている

「タイガーがバハマで開催するヒーロー(ワールドチャレンジ)には出るかもしれないが、できるだけリラックスして休暇を楽しみたい」とシャウフェレは、ツアー選手権を2位で終えた後に語った。

2022-23年シーズンは出場22試合でトップ10入り11回、予選落ちなしと安定した成績を残したが、3度の優勝を飾った1シーズン前とは違い、優勝トロフィーを掲げることは一度もなかった。

したがって1月から始まる2024年シーズンは、まず1勝をあげることが目標となりそうだが、来年はフェデックスカップ優勝を狙うだけでなく、2度目のオリンピック出場もかかった年となる。

勿論、すべてのトップ選手と同じようにメジャー制覇は、大きな目標だ。これまで4大メジャーに26回挑戦し、トップ10入りを10回記録していることでメジャー無冠のベストプレーヤーに名前があがることも増えてきた。

これまで自国のナショナルオープンである全米オープンには、トップ10入りが6回で最低成績が14位というシャウフェレ。パインハースト№2コースで行われる来年の大会でも、間違いなく優勝候補の一人だ。ロサンゼルスカントリークラブで行われた今年の大会では、初日に大会最少スコア記録に並ぶ62を叩きだし、10位タイに入っている。

メジャーで好成績を残せば、オリンピック2連覇へ向けての勢いとなるだろう。2024年のオリンピックの舞台となるル・ゴルフナショナルは、パリからおよそ41キロに位置し、2018年のライダーカップ開催に加え、DPワールドツアーの大会を28回開催した名門コースだ。

オリンピック男子ゴルフは、8月1~4日に、女子は翌週の8月7~10日に開催される。ネリー・コルダ同様、シャウフェレも、前回金メダルを獲得していても、オリンピックには自力で出場を決める必要があるが、両者とも現在世界ランク60位以内を確保し、可能性を残している。

画像: 2021年の東京オリンピックでは見事、金メダルを獲得したザンダー・シャウフェレ。当時すでにPGAツアーで4勝を挙げていたが、その後、さらに3勝し、現在の世界ランキングは6位(10月11日時点)

2021年の東京オリンピックでは見事、金メダルを獲得したザンダー・シャウフェレ。当時すでにPGAツアーで4勝を挙げていたが、その後、さらに3勝し、現在の世界ランキングは6位(10月11日時点)

出場資格はオリンピックゴルフランキング(世界ゴルフランキングに基づく)によって決まり、同ランキング15位以内は各国から4名まで出場可能(シャウフェレは現在同ランク6位でアメリカ人では3位)。また、16位以下は上位15名の有資格者も含めて各国から2人までが出場可能となる。

男子代表の選考期限は、全米オープンが終わる6月17日まで。女子はその翌週の6月24日だ。その後シャウフェレは8月に男女合わせて初のオリンピック2度目の金メダルを狙う。

幼い頃からオリンピックを観て育ったシャウフェレだが、それはゴルフではなく陸上競技だった。ゴルフは2016年まで112年間オリンピック競技種目から外れていた。父、ステファンは十種競技の選手としてオリンピックを目指していたが、20歳の時に飲酒運転の車との交通事故で片目の視力を失い断念した。

それゆえ金メダル獲得後、「父がメダルを放してくれないんだ」と冗談交じりに話していたシャウフェレもオリンピックに対しては特別な思いがある。

「父は、いつかメダルを取りたいという夢を持っていた。そのために人生をかけて努力を続けたがその夢は叶わなかった。そのうえ、ここには祖父母が住み、母が育った場所だ。そう言った事全てが、ここで勝つための原動力になった」と金メダル獲得後にシャウフェレは言った。

「必要以上のプレッシャーを自分にかけていたかもしれない。でも自分にとってはゴルフの大会で優勝したこと以上の幸せを感じる」

日本に母の親族が住むように、フランスには父の親族が住んでいる。今度はフランスで何かを起こしそうだ。

※PGAツアーはBSJapanex(t BS放送)、ゴルフネットワーク(CS放送)、U-NEXT(動画配信サービス)で毎週LIVE中継が見られます。(PHOTO/PGA TOUR、KJR)

This article is a sponsored article by
''.