スコッティキャメロンを代表するマレット型パターで、名器の呼び声が高い『レッドX』シリーズ(2005年~)。当時、丸山茂樹をはじめ、多くのプロに使用されたこのクラブは、なんとポルシェのクラシックモデルのドアミラーにヒントを得て生まれたのだという。
「デザイナーであるキャメロン氏は、モノには普遍的な美しさが存在すると考えています。つまり、美しく、人に愛されるデザインは、時代を超えてもやはり人を魅了すると考えているのです」(スコッティキャメロン ゴルフギャラリージャパン 廣田氏)
そんなキャメロン氏が、「これは」と目を付けたのが、ポルシェのミラーだった。車の部品をパターに見立てるなど凡人には思いも寄らないが、遊び心あふれるキャメロン氏は、そこから『レッドX』を生み出したのである。
近年のマレットは機械的なデザインが主流。しかし、時代を超える魅力から生まれた『レッドX』であれば、生まれ変わって再びボクらの前に現れるかもしれない。
キャメロンのフェースは真上を向かない
パターのシャフト部分を机などの平面に置いてバランスを取ったとき、フェース面が真上を向くものをフェースバランスというが、キャメロンのパターにはフェースバランスは存在しない。何故なのか?
フェースバランスのパターは、ストレート· トゥ· ストレートの軌道でストロークしやすく、直進性が高いと言われる。しかし、スコッティキャメロンは、この考えに異を唱える。
「キャメロン氏は、パターの基本はTOE FLOW(※パターを机などの上に置いてバランスを取ったとき、トウ側が垂れ下がる/下を向く)であると言いました。パターにライ角が付けられている以上、ストレート・トゥ・ストレートはあり得ない。イン・トゥ・インの弧を描くのが自然であると説いたのです」(ギアライター・高梨祥明氏)
これは、フェースバランスのパターにこだわらないという宣言でもある。大型マレットにもかかわらず、フェースが完全に真上を向かない。そんな絶妙なトウバランスの重心角を、キャメロン氏は、MINIMUM TOE FLOW と呼び、自身が作り出したマレットモデルに取り入れていった。
「たとえば、マレットにショートスラントネックを組み合わせると、ブレードに近い絶妙なマニュアル感が得られます。それでいて芯を外したときには、やさしさを発揮する。そんな実戦的なマレットの基本形を確立したのもキャメロン氏の功績と言えるでしょう」(高梨氏)
※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月24日号、10月31日号より(PHOTO/Takanori Miki、www.scottycameron.com THANKS/スコッティキャメロン ゴルフギャラリージャパン)