寄るアプローチを"数字"で考える
D PGAツアーでフェデックスチャンピオンになったビクトル・ホブランですが、「超」がつくほど苦手だったアプローチを、割とあっさり克服したのが話題になっています。
目澤 2021年に(当時、松山英樹のサポートとして)マスターズに行ったとき、練習グリーンで何発も"ザックリ"している選手がいて、この人、誰なんだろう……と思ったのが彼でしたね(笑)。でも、そこから2年ちょっとしか経っていないのに、伸び率がすごすぎますよね。
D その間にも、何人かのコーチを頼っていますよね。一番最近は、ジョー・マヨという、トラックマンのデータを基に、理論的というか数学的に指導するタイプのコーチがついていて、どうもそれがホブランと相性がよかったようです。
目澤 ホブランって、今でこそツアーでも屈指の「曲げない飛ばし屋」ですが、最初からそうだったわけではないんです。飛距離が足りないと思えば、飛距離を出すためにどうしたらいいかをコーチに相談して、周りが止めるくらい練習するタイプなんですね。そういう『自分の弱点に向き合える姿勢』というのが彼の一番の武器だと思っています。ただ、アプローチに関しては、マヨが「止まる球」の理屈を説明したら、瞬間的に自分の間違いを理解して、すぐにうまくなったらしいですよ。
D マヨが、「ビクター(英語の発音)に何を教えたのか」という質問に対して、「ボクは数学(Math)しか教えていない」と、言っていました。
目澤 もとからゴルフIQが高いんでしょうね。
D マヨが教えた"数学"というのは、具体的にはどのようなことでしょうか。
目澤 実は、マヨの有料チャンネルに登録していて、その中でかなり詳しく説明してくれているのですが、かいつまんで言うと、どうやって「ミート率を下げるか」ということに尽きると思います。
D つまり、いかに「振っても飛ばない」ように打つか、ということですね。
目澤 そうです。アプローチの場合は、大体、ミート率(スマッシュファクター)の数値を「1」前後にしたいです。ビクトールはアプローチのミート率が高かったので、ボールの勢いを弱めるためには、いわゆる「すくい打ち」をするしかなくて、だからこそザックリしていたわけですが、構え方とインパクト条件を見直して、今はちゃんとミート率が下がっています。
D それに、スピンロフトも改善していますね。だから、球が止まるようになって、より積極的にカップ近くを狙っていけるようになった。
目澤 その通りです。スピンロフトは、「ダイナミックロフト」(インパクト時のロフト)+「入射角」ですが、この数値が65度前後が、一番スピンが利くゾーンで、そうなるように打ち方も調整していますね。
D その辺も含めて、さらに詳しい話を次回お聞きします。
PHOTO/Tadashi Anezaki
※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月31日号「みんなのスウィング3.0 Vol5」より