そもそも「スモーク」とは?
『パラダイムAiスモーク』は『パラダイム』の2代目。シンプルな名前だと正常進化しかしていないように思われる可能性がありました。しかし、正常進化の枠を飛び出し、"Aiフェース第二章の幕開け"ともいえる大幅な進化を遂げていたので、インパクトのある名前を付けようと、候補のひとつに挙がっていたのが『スモーク』でした。
我々、日本人には『煙』や『燻製』といったイメージしかありませんが、英語圏のゴルファーにとっては、『速さ』や『飛距離』と結び付いているスラング的な言葉で、マン振りしてマン飛びしたときなど『今、スモークしたね』と言って相手を褒め称えることがあるんです。
ただ、確かに煙の意味もあるので、フォージドカーボンを成型する際に白い塗料を混ぜることで『パラダイム』の青色は継承しつつ、見た目にも白い煙のようなデザインになりました」とは日本のキャロウェイで長年クラブ開発に携わってきた茂貫太郎氏。キャロウェイがAiを使用した製品を初めて市販化したのは2019年の「エピック フラッシュ」だが、この時、Aiにインプットしたのは「ボール初速の最大化」「耐久性をクリアする」「ルール適合」の3つの要素だけだった。
この数年間でAiが急速に進歩した
「人によるクラブ開発は限界を迎えていたんです。でもAiなら人知を超えたところで新しいモノづくりができる。そして生まれた初代の『Aiフェース』は、本当に人では思い付かないような形をしていました。そこからスーパーコンピューターがアップグレードされ、Aiとの付き合い方もより上手くできるようになり、より複雑なインプットが可能になりました。
ただ、それまでもロボットテストの結果は利用していたのですが、リアルゴルファーのスウィングを取り入れるには複雑すぎて当時はまだ無理だったんです。リアルなスウィングデータを利用できるようになったのは2年程前。スタッフプレーヤー専用の『Aiフェース』を試作したことはありましたが、そこからわずか2年で100万件ものスウィングデータをインプットした『Aiスマートフェース』が市販されるとは思ってもいませんでした。また、同じくらい驚いたのが、『ジェイルブレイク』がなくなったこと。
ここ数年、『ジェイルブレイク』のすごさをメディアや販売店に力説してきた自分としては、なくなったことが弱点になるのではという不安もありました。ところがそんな不安は杞憂でした。今までのフェースはスクエアインパクトが前提。でもリアルなスウィングでは必ずしもスクエアインパクトではなく、むしろアマチュアにはスクエアなほうが少ない。その時に無数のたわみをフェースに発生させて修正するのが、今回の『Aiスマートフェース』だというんです。
ミクロの世界で本当にそんなことができるのか半信半疑だったのですが、実際に打ってみると驚きました。本当にフェースがミスをカバーしてくれると同時に、ボールスピードは最大限。『ジェイルブレイク』でクラウンとソールを結んでいたらたわみ量は増やせない。いわば『ジェイルブレイク』の役割を『Aiスマートフェース』がのみ込んだんです。Aiフェース第二章の始まりでした」(茂貫氏)パラダイム Aiスモークには4モデルあるが、ターゲットとするゴルファーによって入力したスウィングデータが異なるという。
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リアルなスウィングデータのインプット
「これまでは慣性モーメントなど、一部分の数値だけを追いかけたことで、クラブとしては無理のある形状になったこともありました。ところが、チタン製カップフェースである『Aiスマートフェース』だけでヘッドのほとんどの仕事をしてしまうので、数値を追う必要がなくなり、人間は『振りやすさ』『見た目』『構えやすさ』といった部分に力が入れられるようになったんです。
前作『パラダイム』では『360度カーボンシャーシ』を採用したことで『やさしさ』と『飛び』のどちらも100点満点を取れるようになりました。そして今回、『パラダイム Aiスモーク』ではこの『Aiスマートフェース』が加わったことで、さらにその上を行き、120点、130点を取れるようになったんです。
ここまで来るとは誰が想像できたでしょうか?本当にすごいクラブができちゃいました。でもこれで終わりだとは思っていません。さらにミスの傾向を細分化することもできるし、シャフトの特性を加味することもできるでしょう。究極はその人だけの世界にひとつのオリジナルのAiフェースだって物理的には可能なんですから」(茂貫氏)