速いけど軟らかい。この理想の実現に挑んだ
今を遡ること7年前。それまでの契約メーカーがクラブ事業から撤退することに伴い、ローリー・マキロイはテーラーメイドと大型契約を結んだ。飛距離が大きな魅力のマキロイだけに、彼が選んだM2ドライバーに注目が集まったが、実はマキロイがテーラーメイドに決めた最大の理由は〝ボール〞にあった。
「まさに僕の弱点を補うボールだと思った」と特に風の中でのアイアンショットの安定性に感銘を受け、以降モデルが変わるたびにボールを味方につけ、トップで活躍し続けている。
そして今年、新TP5 / TP5x が登場すると真っ先にチェンジ。幸先よく優勝を果たした。「新しいTP5x は、ドライバーでさらに初速が増し、アイアンで半番手飛ぶ」とマキロイ。かつ打感、打音も格段にソフトになったという。果たしてこの新ボールの正体とは……。
ボールスピードとソフトな打感、この2つは相反する関係にある。スピードを上げるにはボールを硬くすることが常識だからだ。しかしテーラーメイドはこの常識に挑んだ。ポイントはコア。
密度が下がってソフトになった1層目のコア
コアの密度を下げて打感を軟らかく。これだけでは反発が落ちるところを新素材によりスピードアップに成功。コアが軟らかくなったことでより内と外の剛性の差が進み、ロングショットでの低スピン化にも寄与する
〝低密度〞にすることで打音を抑え、打感をソフトな方向へシフト。そのままでは反発が落ちるが、新素材を配合することで、ボールスピードを逆に引き上げた。低反発の枕なのに押し込んだ後、手を離した瞬間にバン! と素早く戻る、そんな常識外れのコアなのだ。
速く軟らかいだけでなく、グリーン周りでは、高いスピン性能も兼ね備える。これはコアの進化だけでなく、従来から採用している〝5ピース構造〞のなせるわざ。各層がドライバー、アイアン、ウェッジ、パターで必要な役割を専門的に果たすことで、あらゆる局面で妥協のない性能を発揮する。これも新TP5シリーズの優位性につながる大きなポイントだ。
新開発の素材が生み出す究極のパフォーマンス
「多くのプレーヤーはボールにスピードとソフトな打感を求めます。この相反する性能を融合するために新素材の探求を続け、今回テーラーメイドが初めてゴルフボールに導入しました。これが前例を見ないパフォーマンスを生みます」
【合わせて読みたいオススメ記事】★★★★★ TaylorMade2024特集 ★★★★★
相反する性能の両立がテーラーメイドの十八番!
先に発売されたQi10 MAXドライバーも深重心の極大慣性モーメントながら、従来では考えられない低重心、そしてつかまりの良さを実現している
P790アイアンのソフトな充填剤にも着想を得た
新素材を積極的に活用するテーラーメイド。P790アイアンも中空の弾く打感を抑えつつ、反発は落とさない充填剤を採用。新TP5シリーズもここに着想を得た
打ってわかった! TP5/TP5xの無二の性能
「軟らかい!」「でも速い」
TP5xはドライバー、TP5はアイアンで衝撃
新TP5 / TP5x は、前作から格段の進化を遂げたと、テーラーメイドは胸を張る。ならば前作と比較試打をして、その実態を明らかにしていこう。まずはドライバーでの試打からスタートしたが、計測器の不具合かと思うぐらい、新TP5x の飛距離が突出したのだ。
「新しいTP5も前のTP5xより飛んでいることに驚きましたが、新しいTP5xはちょっとレベルが違う。私はもともとスピンが多いタイプなのですが、普段より500回転以上少ないことが大きい。初速自体も速いことが実感できます。ドライバー(Qi10)の要因もあるかもしれませんが、芯を外してもスピンが少なく、前に行く感じは経験したことがないですね」(佐々木)
ドライバーショット
新しいTP5x。その初速性能の高さに、ただただ驚いた
ドライバーショットで際立ったのは新TP5xの飛び。「確実に頭ひとつ抜けている。前作からの飛距離性能の進化は明らか。それでいて打感も軟らかくなっているところも驚きです。TP5は高初速でつかまる感じがある。つかまえて飛ばしたい人にいいですね」(佐々木プロ)
アイアンでは、新TP5の性能に佐々木プロは舌を巻く。
「前作と比べて、10ヤード以上飛ぶことも。確実に5ヤードは飛ぶようになっています。でも高さもスピン量も確保されていますから、しっかり止まる弾道です」
アイアンショット(7番アイアン)
TP5は前作に比べて5~10Yも前に行く!
「空中で他とは違う伸び方をする」と佐々木プロが目を見張ったのが新TP5。データ的にも最も飛距離が出ている。「スピンもさることながら高弾道でそこから前に伸びる感じ。ちょっと体感したことのない飛び方です」(佐々木プロ)
アプローチになると、新モデルの打感の軟らかさが顕著に。
「TP5同士の比較では、さらに打感が軟らかく、打音も低くなったのがよくわかります。加えてスピン性能も上がっています。出球が少し低く出る感じでギュギュッと止まります。とても距離を合わせやすいです」
TP5xの比較はどうか。
「前作はカチッとした打感で、新作ソフトさが際立ちます。前作のTP5と新しいTP5x の打感が近いですね。スピンは新TP5よりは減りますが、しっかりフェースに乗るので、こちらも距離を合わせやすいです」
30ヤード アプローチ
しっかりとフェースに“乗る”、イメージ通りに寄せられる
グリーンエッジまで10ヤード、そこからピンまで20ヤードの状況。佐々木プロの好みは新TP5。「フェースに乗って低めに飛び出す感じが毎回同じ。下を抜けるようなミスが起こりにくくて、距離感が合わせやすいです」(佐々木プロ)
パッティング
新TP5xは前のTP5くらい打感がソフト
前作からの〝進化〞をここまで明確に感じられるボールは、他になかなか見当たらない。
【合わせて読みたいオススメ記事】★★★★★ TaylorMade2024特集 ★★★★★
プロたちもその高性能に惚れ込んだ。
新TP5/TP5xに続々乗り換え中(&乗り換え間近)
久常涼:新TP5x使用中
C・モリカワ:新TP5使用予定
T・フリートウッド:新TP5x使用予定
中島啓太:新TP5使用予定
岩﨑亜久竜:新TP5使用中
N・コルダ:新TP5x使用予定
このデザインがスコアにつながる。
僕らはまだ「Pix」の真の実力に気づいていない
ツアーで勝つために開発されたビジュアル
マキロイの優勝の前週、そのマキロイを下して優勝したのがトミー・フリートウッド。彼は長年『Pix 』を愛用している。このPix 、もちろんメーカーの遊び心の産物ではない。そこにはビジュアルがもたらすテクノロジーが存在し、それがパッティングを強力にサポートする。
前作の三角形から、TP5/TP5xのリニューアルに合わせてPixのデザインも四角形に変更し、より視認性が増した。このオレンジと黒の模様をターゲットと合わせて打つことで、残像効果によりボール上にラインが浮き上がる、という仕掛けだ。
前作のPixはデザインが三角形
開発に携わったリッキー・ファウラー。様々なプロトタイプでラウンドし、意見交換を重ね前作が誕生。そして今回新たなデザインに進化した。
フリートウッドはPixで結果を出している
今年DPワールドツアーの「ドバイ招待」で優勝したフリートウッド。Pixを使っての2度目の勝利を果たした。現在新しいPixも絶賛テスト中だ
効果は主に2つ。1つはオレンジと黒の残像のラインが乱れていないか。歪むようであれば、ストロークに問題ありと確認できる。2つめは、自分のイメージしたライン通りに打ち出して、残像もきれいに描かれたにもかかわらず外れた場合、読みが違っていたことを視覚に強く訴えること。このフィードバックによりパットのスキルが上がっていく。
テーラーメイドのビジュアルテクノロジーで上手くなる!
Pixは「合わせる→打つ→見る」を繰り返そう
合わせる
目標に対してサイドスタンプを合わせることでセット完了。ちなみにPixのサイドスタンプは、ノーマルのものに比べ、線がやや長い
打つ
サイドスタンプの向きに合わせてストローク。ボールの存在感が強いので、テークバックでパターヘッドを必要以上に追わない効果も
見る
オレンジと黒の帯が乱れていないか、またライン通りに打ち出したものが入るかどうか。毎回のフィードバックがパットの上達へと導く
Pixのココがいい! 線じゃないから2打目やアプローチでも気にならない
Point.1残像効果がより鮮明になった
「三角形が四角形になったことで、残像の見え方がかなり変わります。浮き上がる線が太くなってより鮮明に視覚に訴えくるので、効果が増しています」(佐々木)
Point.2太いラインをイメージできてより構えやすい
「アドレスのときでも、模様の面積が増したことで構えやすくなりました。打ち出しから転がっていくラインもイメージしやすく進化しています」(佐々木)
Point.32打目でも構えにくさがまったくないデザイン
「2打目やアプローチなど基本的にボールに触れられない状況でもPixの模様は気にならない。このあたりもプロが試合で使える大きな要因だと思います」(佐々木)
繰り返しになるが、Pixは単なるデザインではなく、ツアー選手が使って結果を出すビジュアルテクノロジー。試してみて損はない。
Photo/ 三木崇徳、増田保雄、Getty Images
撮影揚力/ ニュー南総ゴルフ倶楽部、TRACKMAN、GARMIN
詳細はこちら