コアの性能が大幅にアップ! 新『TP5』『TP5x』はかつてない進化を遂げた
新『TP5x』にスイッチして、早々に勝利を収めたローリー・マキロイをはじめ、久常涼ら多くの選手が新作ボールに乗り換えている。開発担当のマイク・フォックス氏は、今回の『TP5』『TP5x』性能は、これまでとはレベルが違うと胸を張る。
「あなたはボールにどんな“性能”を求めますか? この質問をすると、どのゴルファーも“飛距離”(ボールスピード)、もしくは“打感の良さ”(軟らかさ)と答えます。飛距離を最優先する人も、2番目の基準は打感ですし、打感の良さが最優先の人も次に欲しい性能は飛距離です。しかし、この2つは反比例の関係ともいえる。ボールを硬くすればスピードは上がりますが、打感も硬くなる。逆に軟らかくすればスピードは落ちる。新しいTP5シリーズでは、この相反する性能の両立に挑み、それを達成できたのです」(マイク・フォックス 以下同)
ボールスピードを司るのは、最深部のコア。今回ここを大きく変化させた。
「電子顕微鏡でコアを見ると、新TP5シリーズのコアの内部は隙間が多い。隙間が多いということは、打感はソフトなほうに傾きます。そこにゴルフボールでは初めての素材を加えることで、反発力だけアップさせたのです。この低密度だけど反発力の高いコアを我々は“NEW スピードラップコア”と名付けました。スピードを秘めたコア、という意味です」
この新技術の背景には、P790アイアンでの成功事例がある。P790は薄く強度の高いフェースと中空構造でボール初速を高めているが、中が空洞のままだとキンキン弾くような打感になる。そこで“スピードフォーム エア”という充填剤を開発。フェースの反発性能はそのままに、マッスルバックのような心地よい打感や打音に近づけたのだ。
「ボールも同じイメージ。低密度の軟らかいコアだけど初速は逆に上がる。打感は音(周波数・Hz)が低いほど軟らかく感じるのですが、それでいうと、新しいTP5xと前作のTP5(ソフトタイプ)がほぼ同じ周波数。そして、新素材を注入したことで上がったボールスピードは、新しいTP5が前作のTP5xをやや上回ります。もちろん新TP5xのボールスピードはそれより格段に速い。この結果は我々の想像以上のものでした」
マキロイは、すべての番手で初速が上がり、例えば6番アイアンは飛距離が200ヤードから210ヤードにアップ。下の番手でも5~6ヤード伸びているという。他の選手も軒並み0.5番手の伸びを見せている。打感が良くなり、飛距離もアップするなら、替えない手はないということだろう。
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「5ピース構造」だからこそ発揮できるパフォーマンスがある
「打感が良くなって、飛距離が伸びても、グリーン周りでも飛ぶ、つまり十分なスピンが入らないのでは使い物になりません。飛距離追求のためにロングショットでロースピンを求めれば、アイアンもウェッジもロースピン方向に振れやすい。その逆もしかりで、ウェッジやアイアンのスピンを求めれば、ドライバーなどでもスピンを抑えきれないのが常識でした。ですが、TP5シリーズは、ドライバーではロースピン、アイアンでは適切なスピン、グリーン周りではハイスピンと、ショットごとに性能が変化するイメージ。これはコアの進化に加え、テーラーメイド独自の“5ピース構造”だから達成できることなのです」
通常ゴルフボールは、内側が軟らかく、外側に向けて徐々に硬くなっていき、一番外側のカバーが最も軟らかい構造。これによりロングショットで低スピン、グリーン周りでハイスピンを目指している。多くのツアーボールは、これを3ピースないし4ピースで行うのに対し、TP5とTP5xは5ピース。他に比べて各層を理想的な硬度で設定できる優位性を持っている。
5ピースにすることでメリットが多いならば、他のメーカーも取り入れればいいのでは? と思うが、構成する層が増えるほど製造コストが上がり、製品誤差も大きくなるリスクを抱える。しかし、テーラーメイドはそれでも5ピースの高性能にこだわる。2011年の『PENTA』(日本名:5TP)からスタートした5ピースの実績と、製品誤差を極力減らす徹底した品質管理により、唯一その製品化を実現している。
「さらに今回の進化したコアの硬度は、100を最大の硬さとすればわずかに“5”です(初期のPENTAは50)。そこから硬度差をつけていき、ウレタンカバーの内側の4層目は約“90”。これだけ大胆な硬度変化は、5ピース構造でしか成しえないことです」
『Pix』を単なるデザインで片付けてはいけない
そのTP5シリーズには通常の白いボールに加え、独特なデザインの『Pix』があることはご存じの方も多いだろう。これは2019年の2代目TP5シリーズに限定モデルとして登場、2021年の3代目からはレギュラーモデル入りした。そして、今では白のTP5ボールよりも売れているのがPixなのだという。4代目のTP5シリーズの誕生とともに、今回Pixのデザインも一新した。
「サッカーやバレーボールなど、他の球技のボールは性能もさることながら、ビジュアル的にどんどん変化していますよね。なぜゴルフボールは100年間も白いまま変わらないのか。これが我々が推す“Pix”が生まれたきっかけです」
だからと言って、Pixは気分を上げるため、あるいは個性派を気取るためのデザインではない。ツアー選手が試合で勝つために開発された“ビジュアルテクノロジー”ボールであることを忘れてはならない。実際に、トミー・フリートウッドはPixがことのほかお気に入りで、今年も早々にDPワールドツアーで優勝を飾っている(Pixで2勝目)。
「もともとリッキー・ファウラーと取り組んだプロジェクトですが、あらゆるプロトタイプを彼のもとに持ち込んで、その都度ラウンドしてもらいフィードバックをもらう、これを何度も何度も繰り返して開発しました。何千ラウンドもこなしているツアープレーヤーの意見は本当に大きなものです」
Pixの残像効果をより高めるために、今回、従来の三角形から四角形のデザインに変更された。転がることでボールの上に帯のようなラインが浮かび上がるのがPixの特徴だが、オレンジと黒が50対50の同比率になったことで、この帯がより鮮明になり、ボールからのフィードバックが強くなった。
Pixはラウンドしながら“パット練習”になるボールであり、その効果は主に2つある。
ひとつは、ストロークが正確であったかの確認。ストロークが歪んでいると、残像効果によるオレンジと黒の帯も乱れるので、良し悪しの確認になる。
もうひとつは、例えばフックラインで、自分の読みが正しかったかどうかの確認ができること。残像効果によって打ったラインが鮮明に浮き出るので、それが入ったか否かにより、ラインを読む力が徐々についていく、ということだ。
「ちなみに、サイドスタンプの線の長さも白いボールのものより少し長くしています。Pixが目標に線を合わせて使うことが前提なので。ただこの長さも選手からのフィードバックによるもの。トミー・フリートウッドはサイド部分に自分で線を引きますが、書き足す線はそこまで長くしません。それは、長すぎると後方から合わせる分にはいいけど、アドレスすると線の両端が歪んで見えて構えにくいから。そういう細かな点もツアー選手からの意見を採用し、新しいPixに反映させています。
目指すはシェアナンバー1の“ボールカンパニー”
新『TP5』『TP5x』、そして『Pix』、それらの性能に並々ならぬ自信を見せるマイク・フォックス氏。その視線はすでに先を見据えている。
「テーラーメイドは“メタルウッドカンパニー”と言われます。それは否定しません。しかし、ここ5年で、アメリカでのボールのシェアは2位まで上がり、“ボールカンパニー”として認知されるようになったことも事実。TP5シリーズに代表されるウレタンカバーボールに関しては、アメリカ、韓国、台湾の3拠点の自社工場で生産を完結できるようになるなど、投資も積極的に行っています。今後の我々の目標は、2027年に全世界のボールシェアを伸ばし、世界1位になること。そのためにTP5、TP5xを中心とするボールの性能強化、そしてビジュアルテクノロジーのさらなる発展に取り組んでいきます」
近い将来施行される、いわゆる“飛ばない”ボール規制に対しても、「テーラーメイドの革新的なものにコミットし続けていく、というポリシーは守る。ルールは尊重するが、それで我々の姿勢が変わようなことは決してない」と断言する。
今までにない革新的な性能を秘めた新『TP5』『TP5x』、そしてビジュアルテクノロジーの『TP5 pix』『TP5x pix』。そのパフォーマンス、試してみる価値は十二分にありそうだ。