速いけど軟らかい。この理想の実現に挑んだ

(左)「TP5」従来からソフトな打感を備えるボールだったが、新作はさらに軟らかくなり、ボール初速がアップ。グリーンサイドでのスピン性能も高い5ピースボール。(右)「TP5x」芯のあるしっかりとした打感は残しつつも、前作のTP5と同等の打音(周波数)まで抑え、ソフトフィールに。ボール初速も格段に上がった5ピースボール
今を遡ること7年前。それまでの契約メーカーがクラブ事業から撤退することに伴い、ローリー・マキロイはテーラーメイドと大型契約を結んだ。飛距離が大きな魅力のマキロイだけに、彼が選んだM2ドライバーに注目が集まったが、実はマキロイがテーラーメイドに決めた最大の理由は〝ボール〞にあった。
「まさに僕の弱点を補うボールだと思った」と特に風の中でのアイアンショットの安定性に感銘を受け、以降モデルが変わるたびにボールを味方につけ、トップで活躍し続けている。
そして今年、新TP5 / TP5x が登場すると真っ先にチェンジ。幸先よく優勝を果たした。「新しいTP5x は、ドライバーでさらに初速が増し、アイアンで半番手飛ぶ」とマキロイ。かつ打感、打音も格段にソフトになったという。果たしてこの新ボールの正体とは……。

新TP5xに替えていきなり強さを見せつけたローリー・マキロイ
D P ワールドツアーの「ヒーロー・ドバイ・デザート・クラシック」で連覇と大会4勝目を飾った。新TP5xを手に4月には悲願のマスターズ制覇を目指す
ボールスピードとソフトな打感、この2つは相反する関係にある。スピードを上げるにはボールを硬くすることが常識だからだ。しかしテーラーメイドはこの常識に挑んだ。ポイントはコア。

密度が下がってソフトになった1層目のコア
コアの密度を下げて打感を軟らかく。これだけでは反発が落ちるところを新素材によりスピードアップに成功。コアが軟らかくなったことでより内と外の剛性の差が進み、ロングショットでの低スピン化にも寄与する
〝低密度〞にすることで打音を抑え、打感をソフトな方向へシフト。そのままでは反発が落ちるが、新素材を配合することで、ボールスピードを逆に引き上げた。低反発の枕なのに押し込んだ後、手を離した瞬間にバン! と素早く戻る、そんな常識外れのコアなのだ。

速く軟らかいだけでなく、グリーン周りでは、高いスピン性能も兼ね備える。これはコアの進化だけでなく、従来から採用している〝5ピース構造〞のなせるわざ。各層がドライバー、アイアン、ウェッジ、パターで必要な役割を専門的に果たすことで、あらゆる局面で妥協のない性能を発揮する。これも新TP5シリーズの優位性につながる大きなポイントだ。

新TP5シリーズ開発担当
マイク・フォックス
新開発の素材が生み出す究極のパフォーマンス
「多くのプレーヤーはボールにスピードとソフトな打感を求めます。この相反する性能を融合するために新素材の探求を続け、今回テーラーメイドが初めてゴルフボールに導入しました。これが前例を見ないパフォーマンスを生みます」
【合わせて読みたいオススメ記事】★★★★★ TaylorMade2024特集 ★★★★★
相反する性能の両立がテーラーメイドの十八番!
先に発売されたQi10 MAXドライバーも深重心の極大慣性モーメントながら、従来では考えられない低重心、そしてつかまりの良さを実現している
P790アイアンのソフトな充填剤にも着想を得た
新素材を積極的に活用するテーラーメイド。P790アイアンも中空の弾く打感を抑えつつ、反発は落とさない充填剤を採用。新TP5シリーズもここに着想を得た

打ってわかった! TP5/TP5xの無二の性能
「軟らかい!」「でも速い」

試打/佐々木勇プロ
宮崎県出身。ショットの精度はプロ仲間からも一目置かれる。現在はツアーに挑戦しながらレッスン活動も行う。ニュー南総ゴルフ倶楽部所属
TP5xはドライバー、TP5はアイアンで衝撃
新TP5 / TP5x は、前作から格段の進化を遂げたと、テーラーメイドは胸を張る。ならば前作と比較試打をして、その実態を明らかにしていこう。まずはドライバーでの試打からスタートしたが、計測器の不具合かと思うぐらい、新TP5x の飛距離が突出したのだ。
「新しいTP5も前のTP5xより飛んでいることに驚きましたが、新しいTP5xはちょっとレベルが違う。私はもともとスピンが多いタイプなのですが、普段より500回転以上少ないことが大きい。初速自体も速いことが実感できます。ドライバー(Qi10)の要因もあるかもしれませんが、芯を外してもスピンが少なく、前に行く感じは経験したことがないですね」(佐々木)
ドライバーショット
新しいTP5x。その初速性能の高さに、ただただ驚いた

ドライバーショットで際立ったのは新TP5xの飛び。「確実に頭ひとつ抜けている。前作からの飛距離性能の進化は明らか。それでいて打感も軟らかくなっているところも驚きです。TP5は高初速でつかまる感じがある。つかまえて飛ばしたい人にいいですね」(佐々木プロ)

目を引くのは、新TP5xの低スピンと飛距離。もともとドライバーで平均3000回転近いスピン量の佐々木プロは、この低スピン性能に興味津々だ(ナイスショット3球の平均、GARMIN Approach R10使用)

どちらも高初速で低スピン。新TP5は前モデルのTP5xの飛距離性能をしのぐ結果に
アイアンでは、新TP5の性能に佐々木プロは舌を巻く。
「前作と比べて、10ヤード以上飛ぶことも。確実に5ヤードは飛ぶようになっています。でも高さもスピン量も確保されていますから、しっかり止まる弾道です」
アイアンショット(7番アイアン)
TP5は前作に比べて5~10Yも前に行く!

「空中で他とは違う伸び方をする」と佐々木プロが目を見張ったのが新TP5。データ的にも最も飛距離が出ている。「スピンもさることながら高弾道でそこから前に伸びる感じ。ちょっと体感したことのない飛び方です」(佐々木プロ)

新旧のTP5を比較すると、飛距離の差は歴然。TP5xも約5ヤード伸びており、このあたりがマキロイはじめツアー選手たちが進化を実感するポイントだ(ナイスショット3球の平均、GARMIN Approach R10使用)
アプローチになると、新モデルの打感の軟らかさが顕著に。
「TP5同士の比較では、さらに打感が軟らかく、打音も低くなったのがよくわかります。加えてスピン性能も上がっています。出球が少し低く出る感じでギュギュッと止まります。とても距離を合わせやすいです」
TP5xの比較はどうか。
「前作はカチッとした打感で、新作ソフトさが際立ちます。前作のTP5と新しいTP5x の打感が近いですね。スピンは新TP5よりは減りますが、しっかりフェースに乗るので、こちらも距離を合わせやすいです」
30ヤード アプローチ
しっかりとフェースに“乗る”、イメージ通りに寄せられる

グリーンエッジまで10ヤード、そこからピンまで20ヤードの状況。佐々木プロの好みは新TP5。「フェースに乗って低めに飛び出す感じが毎回同じ。下を抜けるようなミスが起こりにくくて、距離感が合わせやすいです」(佐々木プロ)

短い距離なのでデータ的に大きな差はないが、打感、ボールがフェースに乗る感じは、データ以上に大きな違いがあるという(ナイスショット3球の平均、TRACKMAN使用)
パッティング
新TP5xは前のTP5くらい打感がソフト

パットは好みが分かれると佐々木プロ。「カチッとした打感が好きという人もいるのでどちらがいいと一概に言えませんが、新モデルは確実にソフトに。旧TP5と新TP5xの打感が近いですね」
前作からの〝進化〞をここまで明確に感じられるボールは、他になかなか見当たらない。
【合わせて読みたいオススメ記事】★★★★★ TaylorMade2024特集 ★★★★★
プロたちもその高性能に惚れ込んだ。
新TP5/TP5xに続々乗り換え中(&乗り換え間近)

今季からPGAツアーに参戦する久常涼は、もともと硬いボール(2代目TP5x)を使っていたが、飛距離性能が格段にアップしていることに鑑み、軟らかくなった新TP5xにスイッチ。世界的にも飛距離性能の大幅アップが注目され、従来にない速さで乗り換えが進む
久常涼:新TP5x使用中
C・モリカワ:新TP5使用予定
T・フリートウッド:新TP5x使用予定
中島啓太:新TP5使用予定
岩﨑亜久竜:新TP5使用中
N・コルダ:新TP5x使用予定
このデザインがスコアにつながる。
僕らはまだ「Pix」の真の実力に気づいていない

パットのスキルをじわじわ上げるPixの残像効果。ストロークの良し悪しが一目瞭然!
ツアーで勝つために開発されたビジュアル
マキロイの優勝の前週、そのマキロイを下して優勝したのがトミー・フリートウッド。彼は長年『Pix 』を愛用している。このPix 、もちろんメーカーの遊び心の産物ではない。そこにはビジュアルがもたらすテクノロジーが存在し、それがパッティングを強力にサポートする。

.ファウラーが開発に携わった『Pix』。斬新なデザインによりプロトタイプ的に考える向きもあるようだが、その実力はトミー・フリートウッドが実戦で使い勝利するなどお墨付き。今回デザインが一新され、Pixのデザインは前作の三角形から四角形に。視覚効果がさらにアップした!
前作の三角形から、TP5/TP5xのリニューアルに合わせてPixのデザインも四角形に変更し、より視認性が増した。このオレンジと黒の模様をターゲットと合わせて打つことで、残像効果によりボール上にラインが浮き上がる、という仕掛けだ。
前作のPixはデザインが三角形

開発に携わったリッキー・ファウラー。様々なプロトタイプでラウンドし、意見交換を重ね前作が誕生。そして今回新たなデザインに進化した。
フリートウッドはPixで結果を出している

今年DPワールドツアーの「ドバイ招待」で優勝したフリートウッド。Pixを使っての2度目の勝利を果たした。現在新しいPixも絶賛テスト中だ
効果は主に2つ。1つはオレンジと黒の残像のラインが乱れていないか。歪むようであれば、ストロークに問題ありと確認できる。2つめは、自分のイメージしたライン通りに打ち出して、残像もきれいに描かれたにもかかわらず外れた場合、読みが違っていたことを視覚に強く訴えること。このフィードバックによりパットのスキルが上がっていく。
テーラーメイドのビジュアルテクノロジーで上手くなる!
Pixは「合わせる→打つ→見る」を繰り返そう

Pixの使い方は「合わせる」→「打つ」→「見る」だ!
合わせる
目標に対してサイドスタンプを合わせることでセット完了。ちなみにPixのサイドスタンプは、ノーマルのものに比べ、線がやや長い
打つ
サイドスタンプの向きに合わせてストローク。ボールの存在感が強いので、テークバックでパターヘッドを必要以上に追わない効果も
見る
オレンジと黒の帯が乱れていないか、またライン通りに打ち出したものが入るかどうか。毎回のフィードバックがパットの上達へと導く
Pixのココがいい! 線じゃないから2打目やアプローチでも気にならない
Point.1残像効果がより鮮明になった

「三角形が四角形になったことで、残像の見え方がかなり変わります。浮き上がる線が太くなってより鮮明に視覚に訴えくるので、効果が増しています」(佐々木)
Point.2太いラインをイメージできてより構えやすい

「アドレスのときでも、模様の面積が増したことで構えやすくなりました。打ち出しから転がっていくラインもイメージしやすく進化しています」(佐々木)
Point.32打目でも構えにくさがまったくないデザイン

「2打目やアプローチなど基本的にボールに触れられない状況でもPixの模様は気にならない。このあたりもプロが試合で使える大きな要因だと思います」(佐々木)
繰り返しになるが、Pixは単なるデザインではなく、ツアー選手が使って結果を出すビジュアルテクノロジー。試してみて損はない。
Photo/ 三木崇徳、増田保雄、Getty Images
撮影揚力/ ニュー南総ゴルフ倶楽部、TRACKMAN、GARMIN
詳細はこちら
