ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、2月のジェネシス招待でPGAツアーで9勝目を挙げた松山英樹選手と一新した”チーム松山”について語ってもらった。
画像: 今季PGAツアーで9勝目を挙げた松山英樹(PHOTO/Blue Sky Photos)

今季PGAツアーで9勝目を挙げた松山英樹(PHOTO/Blue Sky Photos)

リビエラでの優勝は苦しいときを一緒に乗り越えたチームの力

リビエラCCで行われたジェネシス招待で、チェ・キョンジュを抜くアジア人最多となるPGAツアー通算9勝目を挙げた松山英樹選手。ここ数年、特にツアーチャンピオンシップに進出できなかった昨年後半からは「最近勝てないねえ」といった口さがない言葉も周囲から聞こえてきました。

そのたびに10年連続でプレーオフシリーズに進出したこと、9年連続で最終戦に出場したことがどれだけの偉業か、反論したい思いに駆られたものです。当然のことながら松山くんにも、またチームにもそうした雑音が入ってきたはず。それだけに今回の優勝を見て、「それ、見たことか!」と言いたい気分です。 

この試合で中継を担当していなかったボクは、あくまで一視聴者として観戦していました。14番でちょっと嫌な距離のパーパットを沈め「これは勝ったかな」と感じ、15番のティーショットを振り切って松山くんがサッとティーを拾う自信に満ち溢れた姿を見たときに(結果はフェアウェイへ)、確信に近いものを感じました。

この後ミスをする雰囲気が感じられなかったからです。今年に入って、インタビューの雰囲気が少し変わったような気がしていました。結果的にスコアがよくなかったラウンドもバッサリ切り捨てるようなコメントではなく、「よいものは出てきている」「よくなりそうな感じはある」というコメントも多く、表情や雰囲気も確かに以前より柔和な感じで、調子は悪くないのに結果が出ないもどかしさを語ることが多かった気がします。

トップ10に入り続け、勝利数を重ねていった20代。勢いで走り続けることができる年代です。その勢いは21年のマスターズ優勝という偉業につながります。しかし、一度頂点に立った選手が、その後に勝ち続けることの難しさはジョーダン・スピースやパトリック・カントレー、ザンダー・シャウフェレらも体験しているところ。

松山くんも例外ではない。しかし今回の"すごい"勝ち方。15番、16番のベタピンショット、17番の奥からのアプローチ。決して簡単なショットではありませんでしたが、ミスの予感がしませんでした。より強い”重量級”の松山英樹の姿を見せてもらった気がます。

ボクの記憶では早藤キャディが「やっと宮野さんがいるときに勝ったあ」というようなことを言いましたが、ツアーレップが宮野敏一さん。現在はコーチ、キャディ、通訳も人が代わり、PGA挑戦当初からチームは一新しました。

黒宮コーチは「開幕からやることを変えず、成績に関係なくやり続けてくれた」、早藤くんは「チームの雰囲気はよかっただけに結果が出てなかったのがもどかしかった」と繰り返してきました。

このチームの結束もまた、優勝を支えたんだと、早藤くんがインスタにアップしたチームの写真を見ても思いました。苦しいときを一緒に乗り越えての優勝、皆さんいい顔しています。

この10年、海外で戦う日本人選手を1人で引っ張ってきました。若い力も出てきていますが、また、刺激を与えてくれたでしょう。マスターズは、1~3月で優勝もしくは優勝争いしている人が勝つ確率が高く、ここからまたマスターズ2勝目にしっかり準備できる。ボクたちも楽しみです。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年3月19日号「さとうの目」より

This article is a sponsored article by
''.