ストロングロフトに見えない工夫が施されている
ここからは実測データをもとに凄腕シングルでもある松尾氏にクラブ分析と試打レポートをしてもらいます。試打および計測ヘッドは7番、シャフトは「Diamana BLUE TM60」でフレックスSです。掲載数値はすべて実測値となります。
フェースが長いので重心距離も42.9ミリと長くなっている。リアルロフト角が28.2度とストロングロフト設定だ
クラブ長さは37.0インチと「標準」ですが、クラブ重量は373.3グラムとカーボンシャフトが装着されていることで「軽い」です。スウィングウェイトがC8.8と「非常に小さい」ので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントは260万g・㎠と「小さい」です。
計測数値のみで推察するとカーボンシャフト仕様ではドライバーのヘッドスピードが38㎧くらいのゴルファーにとって、タイミング良く振りやすくなっています。
同じ飛び系アイアンに属しながらも、『Qi アイアン』は「やさしく飛ばせる」ことを特徴とし、『P790 アイアン』は(ヘッドスピードがある程度速く、芯に当てられる技術があるという前提で)、操作性も期待できるアイアンとなっています。
『Qi アイアン』はヘッド形状から見ても、『Pシリーズ』よりも長いフェースと大きなヘッド、幅広のソールと厚いトップラインが特徴です。
実際に試打したところ大きいヘッドサイズのおかげで「ティーアップしたショットでは打ちやすそうな安心感」があります。フェースプログレッションが3.0ミリと「少しグースネック」になっていることで、球がつかまる雰囲気があり、ヘッドからやさしさがにじみ出ています。
試打シャフトのカーボンは軟らかめでした。クラブ全体の慣性モーメントが小さくて振りやすいので球も上がりやすく、ヘッドスピードが37㎧くらいのゴルファーでも十分扱えそうで、「シニアゴルファーにもちょうどいい設定」になっています。

長いフェースと軽いグースネック、そして幅広いソールの組み合わせになっている
ロフト角が28.2度と超ストロングロフトのアイアンですが、他のモデルと比べてフェースのトウ側が高いので、アドレスではロフト角が付いているように見え、「球が上がりやすそう」なイメージが出ています。
ソール面には綺麗な丸みがあり、ダウンブローでスウィングしたときでもソールの抜けが良かったです。フェース面は軟鉄よりも硬い素材が使われているので打感は硬く、インパクト音が高く、弾き感も強かったです。フェース面のスイートスポットは、フェース中央よりも少しトウ寄りになっています。
基本的にフェースが長いので、重心距離も非常に長くなっています。そのため、ヘッドのネック軸回りの慣性モーメントが非常に大きくなり、ダウンスウィングでのヘッドの返りが非常に遅くなっています。そのため、やや右に行きやすい感じがしますが、反面つかまりすぎることはないので、打ちやすさを感じるゴルファーにはいいでしょう。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年4月16日号「ヘッドデータは嘘つかない!」より