マスターズ週直前の日曜日に開催されたDCPを訪れ、ジュニアゴルファーのショットやアプローチを見ていた辻村が「この年から完ぺきなんだ。すごいなぁ」とボソリ。そこで何がすごいのか、聞いてみた。
“DCP”とは“ドライブ・チップ&パット(Drive, Chip and Putt)”の略で、マスターズと全米プロゴルフ協会(PGA・オブ・アメリカ)、全米ゴルフ協会(USGA)が共同で実施する無料の青少年ゴルフ育成プログラムで、ゴルフへの生涯にわたる興味を引き出すことを目的としている。7歳~15歳までのジュニアゴルファーを4つの年齢カテゴリーに分け、計80名がオーガスタナショナルGCでの全国決勝に参加した。なお、このDCPに参加したことのある女子アマの9名が先週末のオーガスタナショナル女子アマチュアに出場している。
GD アリエル・コリンズという14歳の女の子の記録が264.8ヤード!? すごいですね。
辻村 ただただ驚くばかりです……。でもそれよりすごいのが、こっちのジュニア選手たちは“打つ前の雰囲気”がすごくありますよね。クラブをくるくる回しながらアドレスへ入っていく所作が、もう子供じゃない。
GD たしかに打つ前のルーティンがプロみたい。
辻村 ショットに入るまでの流れがとても良いですね。レッスンの世界では時折、打つ場所を「ショットボックス」、ボールの後ろを「シンキングボックス」と呼びますが、こっちのジュニア選手はシンキングボックスでの時間の使い方がとても上手い。年齢は低くてもそこが確立されているから、ショットボックスに入ってからがスムーズに動けています。
GD 日本のジュニア選手と比べると?
辻村 正直、球を打つ能力に関していえば、日本人選手も負けていないと思います。ただ、構えの姿勢作りといった“構えの技術”は、やはりこっちの選手のほうが上に感じます。
GD 構える技術、ですか。
辻村 はい。どの選手もセットアップがパラレルに決まっています。ひざや足、胸、肩、目線がターゲットに対して気持ち良く、スッと立てているのでナイスショットを打つ確率も高い。上手い人って打つ前にわかりますよね?
GD たしかにどういう球を打とうとしているのか、打つ前からわかりますね。ちなみに隣のアプローチレンジではチッピングの競技が行われていますが、そちらに関しては?
辻村 まずすごいなと感じたのが、状況観察の緻密さです。小学高低学年くらいの子でも、ちゃんと後ろから見て、今度は真横から勾配をチェックし、カップの後ろからさらに見て、というルーティンを徹底しています。アプローチで大切なことは、球をしっかり打つ能力はもちろんですが、ある意味それ以上に大切なことが「状況をしっかりと見極めること」。ボールがある場所のライやカップ周りの状況、そこへ至るまでの傾斜やラインをしっかり見て、上げるのか転がすのか、曲がり幅やスピードまで、どの選手もイメージできているように見えます。
===
先週のバレロ・テキサスオープンで優勝し、今週のマスターズに初出場するアクシャイ・バティアは10年前に開催された第1回DCPの参加者。バティアのように、このなかから将来のマスターズチャンプが生まれるのかも。そして隣の打席では、マスターズ出場を控えた選手たちが練習中。こういった雰囲気もオーガスタならではだ。
PHOTO/Blue Sky Photos