「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

まだまだ普及していない証拠。7番ウッドの中古の数が圧倒的に少ない

GD FW、ユーティリティで言ったら、プロでも固定している人と、コロコロ替える人がいます。そう考えると、モデルチェンジのたびに進化しているとは限らない?

長谷部 「進化していない」というのはちょっと語弊があるかもしれないけど、毎年新しい素材や構造にチャレンジすると、それだけでクラブの機能が変わってしまう。形状設計もマスターモデルから作り直すと、もしそのマスターモデルの出来が悪かったとしたら、結果としてクラブとしてはあまりいいものはできません。 だとすると、自分に合うもの、馴染んだものの代わりがなかなか見つからないことはよくあることなんです。

画像: 2016年モデルのキャロウェイ『XR16』の7番ウッド。旧モデルではあるがおすすめの1本。7番ウッドには球の滑り防止のためフェースにスコアラインが入っている

2016年モデルのキャロウェイ『XR16』の7番ウッド。旧モデルではあるがおすすめの1本。7番ウッドには球の滑り防止のためフェースにスコアラインが入っている

GD ドライバーの評判が良いから、FWも良いって考えは?

長谷部 ないです。

GD ドライバーとFWのデザインが似ていても、性能の流れというのはない?

長谷部 ないです。ドライバーはティーショットで打つものというのと、さまざまなスウィングに対して可変機能があって、マッチングできるように進化しています。それに対してFWは多少のロフト調整や、多少のウェイト調整ができたとしても、 ヘッドサイズまで変わらないし、ロフトを大きく変えると、ソール面も変わるから、地面に当たりやすくなったり、逆に当たらなかったりする現象も起きてしまう。それぐらい繊細なものなので、むしろ普通の状態で「座りのいい」ものを選ぶのがいいと思います。

画像: タイトリストも7番ウッドに該当するロフト21度がある。カチャカチャが付いているので微調整が可能

タイトリストも7番ウッドに該当するロフト21度がある。カチャカチャが付いているので微調整が可能

GD 3番、5番、7番は別設計ですか?

長谷部 別設計です。

GD 1個ヘッドを作って前後に流すというやり方はしていないんですか?

長谷部 そうする傾向はありますが、7番ウッドは重心を前にしようとか、そういう調整はしているはずです。FWはヘッドのサイズ設計で大体決まってしまうので、同じようなサイズで作るメーカーもあれば、 5番が急に小さくなるメーカーもある。デザインが自由なので、そのときの考え方とか、メーカーによってもだいぶ違うのかな。同じ7番同士を比較しても、全然形状や大きさが違うものはたくさんあります。

GD それでも大体のサイズ感があるじゃないですか。そのサイズ感のなかで重心の高さ、深さがあって、弾道が決まっていくと思うんです。FWはドライバーほどサイズアップしていません。メタルヘッドになって30年以上の経験値があるわけで、最適な重心位置と打球の関係のような方程式をメーカーは持っていないんですか?

長谷部 3番、5番ウッドにはあると思います。特に3番はやっています。ニーズもあるし、球を高く上げなきゃいけないというテーマもはっきりしている。7番ウッドはロフトが付いているので球が上がる。どれぐらいのスピン量で、どれぐらいの初速で飛ばすかはフェースの構造で決まります。スピン量は重心の高さで決まることはわかっているんですけど、それがゴルファーにどのような影響を及ぼすかまでテストしているか、といったら難しい。

GD そうなんですね。

長谷部 やる余裕がないというわけではないんですけど、そこまで深く開発しているとは思えません。

GD ドライバーを専門で作っている人、アイアンを作っている人に分かれていますか?

長谷部 分かれます。ウッド系、アイアン系は大体デザイナーや担当者は変えます。

GD FWは?

長谷部 FWはウッド系チームが作ることが多いかな。

GD ユーティリティは?

長谷部 ユーティリティもウッド系チームが作ることのほうが多いです。構造が中空メタルになるので。

GD ウッド系チームがFW、ユーティリティも作るとなると、ドライバーの流れで作ることはできないんですか?

長谷部 それはあくまでも形状の踏襲やデザインはできるんですけど、重心位置に関しては、ドライバーの最適重心とFWは違うので、 その部分においてはドライバーを深重心にしたからといってFWも深重心にしてしまったら、「尻もち」をついてしまう。

GD 「尻もち」は簡単に言うと、ボールの手前にソールが接地してしまうとということですよね。

長谷部 そうです。大型ヘッドのFWのデメリットが「尻もち」だとすると、そうならないための重心位置を徹底的に考えなきゃいけない。

GD FWは長いクラブだから、重心が後ろに下がるとスウィングに与える影響も大きいと。シャフト軸線上に重心があったほうが影響は少ない。ドライバーはお尻が下がっても、もうティーアップしているから大丈夫ということですか。

長谷部 ドライバーはアッパーで打つ意識があるので、ヘッドが下がっても大丈夫なんです。

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