通常のプロは大舞台などではもちろん使い慣れたクラブを使用するが、デシャンボーは月曜日にUSGAから認可を受けたばかりの「これまでにない」アイアンを使用していた。
「私は新しいアイアンを今週使っている。大きな変化だが、火曜、水曜に使ってみて問題はなかった」とプレスインタビューの場で語った理系出身で"マッドサイエンティスト(狂った科学者)"の異名を持つデシャンボー。
最先端で独自の理論を持ち、クラブに関するこだわりも人一倍強い。あまりの注文の多さに彼のスウィングコーチは、「金はあるのだから本人が作るしかない」。
そこで登場したのが今回のアイアンだったというわけだ。といってもデシャンボー本人が作ったわけではない。「Avoda Golf」というあまり知られていない会社が、なんと3Dプリンターを使って作ったというのだ。
アイアンの全番手のシャフト長が同じなのは今回採用したクラブにも引き継がれたが、フェース面がフラットではなく、わずかにだがウッドのように膨らんでいるという珍しい仕様。数カ月前には試作品ができていたが、フェースの溝の問題でルール不適合となってしまっていた。
そこで問題点を修正して再度申請し、マスターズ週の月曜日にようやく認可が下りたというわけだ。それでいきなり初日に65を出してトップに躍り出たのだから、彼のクラブが一気に注目を浴びることに。ここ1年の間に「替えていないのはパターだけ」と語ったデシャンボー。
2日目の後半からの失速(73・75・73)は吹きすさぶ風のせいか、もしくは慣れないクラブのせい? あるいは"ここ一番"で入らないパターのせいか……。
もしかすると今後パターも3Dプリンターで新調するかも?
※週刊ゴルフダイジェスト2024年5月7&14日合併号「バック9」より