ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回はアルゼンチン出身で今季PGAに昇格したルーキーの27歳、アレハンドロ・トスティについて語ってもらった。
画像: アルゼンチン出身で今季PGAに昇格したルーキーの27歳、アレハンドロ・トスティ(PHOTO/Getty Images)

アルゼンチン出身で今季PGAに昇格したルーキーの27歳、アレハンドロ・トスティ(PHOTO/Getty Images)

今回はまだ優勝経験はありませんが、PGAツアーの「取り扱い要注意選手」を紹介します。3月末のヒューストンオープンで2位タイとなったアレハンドロ・トスティがその人。

アルゼンチンはメッシと同じロサリオ出身の27歳。4歳のとき、01年のタイガーのマスターズの優勝をテレビで見て「これをしたい!」というのがゴルフとの出合い。

その後、石炭をすくうスティックをクラブに、プラスチックのボールを排水溝に入れるのが、毎日の遊びになりました。コースデビューは8歳。ゴルフへの情熱は、ゴルフを知らない両親をも動かします。イエローページでコースを探し、バスに1時間揺られて通うのがその後の日課となりました。

15歳でアルゼンチンジュニアを制し、戦績を重ね、18歳時の14年には軽井沢で開かれた世界アマに出場、優勝したジョン・ラームに次ぎ、2位タイに食い込んでいます。その後、フロリダ大学に進み、3年次にはオールアメリカンの1stに選ばれるなど、エリート街道を歩みます。

プロ転向は18年。昨年、コーンフェリーツアーで優勝、賞金ランク3位の資格で今季PGAに昇格したルーキーです。

トスティが取り扱い注意なのは、昨年の同ツアーのボイジーオープンで、感情を爆発させる姿に2日目は棄権するようにツアーから促されたり、ヒューストンオープンでは、一緒に回ったトニー・フィナウとの間でこんな光景が。

似たような距離を残したパッティングでは通常、実績のある選手への敬意から格下の選手が先に打つもの。いったんは受け入れたトスティでしたが、「俺のほうが近い」と言わんばかりの不満顔の本人に対して、人のいいフィナウが戸惑っている表情がカメラに収められていました。

3日目終了後、ゴルフ専門チャンネルでのフロリダ大時代のコーチのインタビューも秀逸でした。

トスティの性格を尋ねられた、プロゴルファーでもあり10年来同大学のコーチを務める彼は、「確かに彼は人に迷惑をかけることもある……ボクの頭は黒かったが、今の白髪には彼の責任も大きい(笑)」とトスティの”暴れん坊”ぶりを伝えつつも、「今まで見てきた選手のなかでベストプレーヤー。調子のいいときはコンピューターゲームを見ているように正確な選手だ」とも。

また彼は試合中とは違い、”敵”ではない老人や子どもにはとても優しいといい、今シーズ開幕前に「ツアーでは一緒に戦う仲間や関係者を思いやる人間的な成長が不可欠」とトスティを諭したら、「ボクはツアーに仲間づくりに行くわけではない」と返したそうです。

初めてトスティを知ったのは昨年、コーンフェリーで初優勝したときのスピーチ。フィールドに出たら感情をも爆発させますが、「これを夢見てきた。それを支えてくれた家族、ここにいる皆に感謝する」と、涙ながらに語る。

こういう心からのインタビューには心を動かされるもの。

飛距離に加え、闘争心の塊とも言えるプレー、アツいコメントには人を惹き付ける魅力があり、人気者になる要素も多分にあると思うのです。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年4月30日号「さとうの目」より

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