「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

ヘッドスピードと密接なトルクとフレックスの関係

GD 長谷部さんはカーボンシャフトが普及に至る初期の段階から見てきてるわけじゃないですか。 プロが使えるカーボンシャフトは何だ? ってなったときに、「高弾性」がキーワードだったように思います。

長谷部 間違いなく高弾性です。シャープなフィーリングが求められるし、そうじゃないと、小さなヘッドだったということもあるんですけど、高弾性で作られるトルクの少ない性能でないと打球の曲がりが大きかったですね。

GD 高弾性ってどういう意味になりますか?

長谷部 高弾性、カーボンの弾性率ってすごく難しいんですけど、カーボン繊維の変形しにくさを表す基準で数字が大きいほど変形しにくい材料となります。そのほか引っ張り強度とかも基準としてはあって、カーボン繊維の特性の中で、10トン、40トン、その重さに耐えられる基準を持っている繊維のことになります。ひとことで言うと、数字が大きい方が強く扱いづらい材料になります。

GD それがトルクや調子と関係してくるんですか?

長谷部 その繊維を縦に使うのか、斜めに使うのか、その使い方でトルクを少なくしたり、シャフトのフレックスを硬くしたりすることができます。弾性率40トンの材料2枚重ねて使えば、80トンの効果が得られるんですけど、その分、重量が重くなってしまうので、軽くシャープなフィーリングを得るためには、高弾性の繊維を使うほうが、フィーリングもシャープになる特性があります。

GD 初期の段階からカーボンシャフトの問題点は明らかだったんですか?

長谷部 明らかだったんですが、それを作れる素材メーカーが少なかったのと、高弾性にチャレンジするメーカーが少なかった。グラファイトデザインが70トン、80トンと一気に使い始めて、製造過程でいろんな苦労をしながらモノにしてったのが、現在のカスタムシャフトのベースだと思うので、この功績は大きいと思います。

GD それを追随するように、「フジクラ」も「三菱」も追っかけたってことですね。でも、初期の頃は、先調子だ、中調子だ、って今ほど言っていなかったような気がします。

長谷部 MK、LK(ミドルキック、ローキック)みたいな表示しかなく、今のような剛性分布がどうのってところまでは話が及んでいません。キックポイントの違いもほんのわずかな差でしかなく、それも静的な状態での違いでした。トルクについても、先端が凄く低トルクに設計してあっても、あえてそこを言うことはしていませんでしたね。

GD 今とは大違いですが、すでに20年以上経っているわけで、シャフトの性能もある程度のところまで到達しているって感じですか?

長谷部 大型ヘッドの影響もあると思うんですけど、ヘッドのほうで打球の曲がりを抑えられるので、シャフトはヘッドスピードアップのための振りやすさになってくると、トルク値についてはあまりこだわらなくなってきています。 異素材、金属繊維を使うことでフィーリングを変え、「静的」なパフォーマンスよりは、振り感を重視した「動的」な変化の方に着目しているような気がします。

GD トルクってある程度あったほうが振りやすいような気がします。絞りすぎちゃうと難しくなる?

長谷部 そうですね。トルクを絞り込んだシャフトは、ミスヒットに寛容じゃないので、芯を外すと硬く感じることはありますからね。

GD トルクが大きすぎると曲がりにつながる。シャフトのフレックスとトルクの関係ってあるような気がします。

長谷部 レディスシャフトは特に軟らかく、トルク値が大きいものが多いんですけど、レディスクラブでトウヒットするとブルンってなる感じがあります。それと同じように、トルクってねじれだから軟らかく感じやすく、鈍く感じる要素のひとつになります。適正なヘッドスピードとその人が振るタイミングによって、心地よく感じるトルク値があると思います。

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