ベテランコーチ 高野逸夫
14歳でゴルフを始め、26歳で渡米、多くのティーチングメソッドを学ぶ。日本でもティーチングB級取得。横田真一の師匠としても有名で著書多数。小2のとき全国の交通安全絵画で金賞を受賞したという腕前で、今回は手書き資料でプレゼン。「動きがわかりやすいでしょう」
「重心を意識すれば心技体がラクになる」
今回がPGAティーチングプロアワードに初参加の高野は「力の抜き方」を追求し続け、自身の腰痛などの体験をもとに「体がよくなり心も軽くなってゴルフも上手くなる」方法を探してきた。
「バランスが崩れないスウィングが大事。バランスを取る場所はお腹だと思っていたけど、重心だと確信したのは1年半くらい前。僕が考える重心は、物理学のものとは少し意味合いが違っていて、“生きた重心”と言っています。簡単に言えばバランスの不動点です」
重心は、いわゆる丹田などではない。「おへそ、丹田は動くところですが、生きた重心は、動きのなかで動かないところです」。何やら禅問答のようだが、具体的に言葉にすると「おへそとみぞおちの中間のほんの少し上と、体幹の厚みの中間の位置が交差する点」となるそう。
動かないところがあるから力は出せる
「余計わからなくなるかな(笑)。まずは意識することが大事。初めは大きなボールのイメージでOK。意識するうちに点になる。スウィングでは脱力が大事。1つ1つの部分を意識すると筋肉は緊張しケガにもつながりますが、重心には筋肉も骨もないから意識しても力みません。また、重心は動く力の起点であり、重心から上下に力の方向(ベクトル)が分かれます。重心を意識して、そこから上は上半身で下は下半身だと分けていくと体は動いてきます」
「“生きた重心”は、動いているなかで動かないところ」
鏡で見ながら、棒などで縦と横にラインを作り、つま先立ちで、上半身を動かしながら、動かない部分をチェック。そこが重心だ。「日常生活での歩き方、ペットボトルを持ったり、パソコン作業などでも重心を意識するだけでラクになります」
人間は筋肉や部分の動きに束縛されていると高野。
「赤ちゃんは、自分一人で立つことを学んでいます。内側から重心探しをして、重心から動くことを感じている。大人になるにつれ、筋肉で動くことを覚えると、重心がわからなくなるんです」
スウィングでは、「重心から動けている人は、肩など回さなくてもいい。気持ちよくラクに動ける位置が見つります。クラブを上げる動作は重力に逆らうので難しいですが、筋肉を使わず、重心を下げることで自然にクラブが上がっていく。また下ろすときは落下(重力)を利用するんです」
筋肉も力も使わずシンプルスウィングへ
重心が動かない位置に手やクラブが上がっていれば力はいらない。「片方の手で重心を押さえて振ってみる。最初は小さくても、そのうち可動域が広がってくる。連続素振りも重心を意識できて有用です」
現代のレッスンは複雑で部分的で筋肉と骨の動作を元に行う“上塗り”のレッスンだと高野。「僕が提唱するのは、シンプルで体内感覚を大事に、重心の動作を元に行う“そぎ落とし”のレッスン。基本通りとか、プロが言った通りにしなくていい。自分の体が心地いいのが一番の目安です。YouTubeでいろいろな先生の話を聞き複雑化しているゴルファーこそ、自分の内側の1点の“先生”に気づいてほしいですね」
※週刊ゴルフダイジェスト5月28日号「多様な教えに上達ヒントありPGAティーチングプロアワードファイナリストのレッスン」から一部抜粋