白熱した優勝争いが続く
「THE G4D OPEN」最終日。今日は朝から気温も上がり曇りのち晴れ。ここでは雨が降らないだけでホッとします。日中は20度くらいまで気温が上がり、過ごしやすい陽気となりました。
優勝争いは、昨年優勝のブレンダン・ローラー(アイルランド・STANDING3)とキップ・ポパート(イングランド・STANDING2)の一騎打ちに。初日は68を出したポパートがトップに立ち、2日目は3打差で追うローラーがただ1人のアンダーパーを出し、1打差で逆転。最終日は最終組2人の“マッチプレーバトル”となりました。
さて、本大会で気づいたことの1つは、キャディを付けない障害者も多いということ。自立してしっかり回るんだ、という意志みたいなものまで感じました。生まれつき両手がひじの少し上から欠損しているトニー・ロイド(イングランド・STANDING1・53歳)も手押しカートで1人、ラウンドしていました。クラブにカバーを付けることもバッグにしまうことも自分で行いますし、ティーアップは両腕でボールを落とし両手で上手く行います。そして長いクラブを右上腕にゴムバンドで巻き付け、グリップを左わきに挟み、実に素晴らしいショットを放つのです。もちろん私より飛びます。230ヤードといったところでしょうか。
車椅子ゴルファーは、ほとんどが自動で立ち上がれるタイプを使用。障害者用車椅子は主にドイツでつくられており、数百万と高額ではありますが、協会がリースをしてくれる制度もあるようです。またみなさん、基本ボールを動かしたりはしない“あるがまま”の姿勢を貫きます。
障害者ゴルファーは、ゴルフ力アップのために、自分を知り、自分に合う技術や道具を探し、常に工夫し続けています。私たちのゴルフや人生のヒントになることがたくさんあるんです!
世界の若い障害者ゴルファーにミニインタビュー!
欧米には低身長症(shortstature)のゴルファーも多くいますが、みんな軸がブレないコンパクトで綺麗なスウィングで生き生きとプレーしています。19歳のエリー・ピークス(イングランド・STANDING3)は、お父さんの影響で7年前にゴルフを始めました。「この障害でできるスポーツが少ないこと、どの障害のプレーヤーとでも戦えることがいいと思い始めました」。目標は本大会の女子部門トップ3でしたが、今回見事達成。
「今後もこのままよいプレーがしたい。私には病院にいることが多い時期があり、外に出たり人に関わることができなかった。だから今は楽しいです」と聡明に語ってくれました。
21歳のフィリップ・リッツインジャー(オーストリア・STANDING3)は、生まれながらに右足ひざ下の骨が1本しかなく、見た目も足が細いです。実は彼、初日の秋山卓哉の”打球事故“の当人。木に跳ね返ったものの彼の打ったボールが秋山の背中に当たりました。それに対してものすごく申し訳なさそうに謝る姿が何だか憎めない。本人に「あなたはキュートですね」と伝えると苦笑いされました……。
8歳でゴルフを始め、サッカーやクロススキーなどいろいろなスポーツを行いましたがなかなか難しく、ゴルフを再開。今はとにかくゴルフが大好きだそう。
「多くの障害者ジュニアにもゴルフを薦めたいですし、もっとプレーヤーが増えれば、厳しくも楽しい競争になると思います」
日本選手の最終結果
最高位は吉田隼人でこの日80の総合21位。終わって姿を見せ「下手くそですねえ」との第一声のあと、詳細にプレーを自己分析し、「自分を変えなければ。今年はまた日本の試合でも7月のアメリカの大会でも自分のゴルフができるようにしていきたいです」。
小山田雅人はこの日76の総合23位タイで「まあまあでした」。上がり4ホールをバーディ、ボギー、バーディ、バーディで締めるあたりが経験豊富なさすがの粘り。「諦めたくないんです。病気のこともあり、プレーして悔いが残ったまま止めたくない」。
小林茂はこの日86の総合40位。最終日も“とにかく明るい”キャラでなごませてくれました。「スコアはひどいけど、楽しくできました。今回も勉強になりましたよ」と世界の選手たちの”転がし“アプローチを見て習得。直近の目標を聞くと、「目標? 僕今年で69ですよ(笑)。でもエージシュートはしたいですね」。
秋山卓哉はこの日86の総合41位タイ。「3日間最高でした。でも3日間試合は体力的な部分で辛かった」と語るも12年ぶりの国際大会にゴルフ熱が上がったそう。「またこういう大会に出たいからゴルフを頑張ろうと思えます。取り組み方や普段の生活から見直さないといけませんね」。
さて、白熱の優勝争いは10番を終え、ポパートが1打差リード。12、13番でローラーが連続ボギーを叩き3打差に広がるも、14番でポパートがボギーで2打差、そして15、16番でローラーが連続バーディで追いつきます。運命の17番、アプローチをしようとしたローラーの目にゴミが……これがミスを招きボギー。結局、ポパートが優勝を飾りました。試合後はエールを送り合う2人。優勝スピーチでは「障害を持ってゴルフをすることは簡単ではないけど、こういう大会をみんなで盛り上げていくのが僕たちの使命です」と障害者ゴルフのさらなる発展を願っていました。
ウォーバーンGCの美しい木々の向こうに落ちる夕陽のなか、「また来年会いましょう!」の声で、大会は幕を閉じたのでした。