解説&試打
堀越良和プロ
試打企画でおなじみの“キング・オブ・試打”。ドライバーからパターまであらゆるクラブを試打するスペシャリスト。TPIレベル3を習得している。週刊ゴルフダイジェストで「ギア選びのウソホント」を連載中。
ボール初速、打ち出し角、スピン量を「飛びの三要素」というけれど……
ドライバーの飛距離はアマチュアが最も興味を抱くテーマのひとつ。そこで今回、「飛ぶドライバーとは、どういうものなのか? 」を週刊ゴルフダイジェストで30年以上、試打企画を担当してきたキング・オブ・試打、堀越良和プロに聞いてみた。
「米ツアーは飛距離300ヤードの時代で、コースセッティング(長さも含め)も非常にタフです。当然、飛距離が重要であることは間違いないのですが、今のトップ選手たちを見ると、たとえば、LIVで活躍するダスティン・ジョンソンはロフト10.5度をネック調整で12度にしています。全米プロで優勝したザンダー・シャウフェレ、マスターズを制したジョン・ラーム、メジャーに強いブルックス・ケプカは、ロフト10.5度を使用しています」
「実はロフトが寝たドライバーを使っているプロは意外に多いのです。ヘッドの性能で考えれば、ロフトが寝るほど、ボール初速は落ちますし、スピン量は増えます。それなのにロフトが多めのモデルを使うのは、それだけ打ち出し角が重要ということです。これが飛ぶドライバー選びの大きなヒントになります」
たしかにプロや上級者はロフト少なめの8度や9度、一方、アマチュアはロフト多めの10度、11度を使う、というイメージは強い。だが、ギアの進化によってその常識が変わってきたのか?
「ギアの進化もそうですが、弾道解析による影響のほうが大きいです。弾道データが可視化されたことで飛ぶ弾道がわかってきたのです。そこから生まれたのが『飛びの三要素』です。ボール初速、打ち出し角、スピン量。この3つが飛距離の増減に大きく影響します。ですので、クラブ開発だけでなく、ドライバー選びにおいても注目されるデータとなりました」
飛びの三要素を理解しよう
①「ボール初速」/速度が速いほど飛距離は伸びる
「ボール初速はHSだけでなく、ロフト角、ミート率なども影響します。ロフトが立てば初速は上がり、寝れば初速は落ちます。ボール初速については、速ければ速いほど、飛距離が伸びます」(堀越プロ・以下同)
②「スピン量」/打ち出し角に合った適正値がある
「スピン量は打ち出し角によって適正値があります。ロフトが多めならスピン量は多く、少なめならスピン量が少ないのが基本。アマチュアは打ち出し角より、スピン量を気にしすぎる傾向が強いです」
③「打ち出し角」/スピン量に合った適正値がある
「打ち出し角はロフトが多いほど高くなり、少ないほど低くなります。打ち出し角も適正値があり、高打ち出しはスピン量が少なめ、低打ち出しはスピン量多めが基本です。この打ち出し角が大きなカギです」
「ボール初速が速い、つまりヘッドスピード(HS)が速い人は、打ち出し角とスピン量の兼ね合いで飛距離が変わるため、飛びの三要素が大きく関わるのですが、ボール初速が遅い場合、この定説が崩れてしまうんです。私の分析では、その分岐点は、平均ボール初速60m/sになります」
堀越プロはそういうが、「ボール初速」だとなかなかイメージしづらいだろう。そこでHS40m/sで考えてみよう。アマチュアのミート率は1.3~1.4と言われるが、仮にミート率が1.3ならボール初速は52m/sになり、ミート率1.4だとボール初速56m/sとなる。ミート率の上限1.5(真芯)でやっとボール初速60m/sになるのだ。つまりHS40m/s前後であれば確実にボール初速は60m/s未満になるだろう。
「ボール初速60m/s未満になるとスピン量の影響が極端に減り、打ち出し角によって飛距離が大きく変わることがわかったんです」
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後編では、HS40m/s未満のアマチュアに試打してもらい、そのデータを比較検討している。
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PHOTO/Tsukasa Kobayashi、Yasuo Masuda
THANKS/クレアゴルフフィールド
※週刊ゴルフダイジェスト2024年6月11日号「飛ぶクラブ選びの新基準 HS30m/s台ならドライバーは”打ち出し角”で選ぼう」より一部抜粋