
館山CCは太平洋が一望できる絶景に、ヤシの木でセパレートされた本格シーサイドコース。東京湾アクアラインを利用すれば都心から90分でアクセスは良好。地元で生まれ育った佐野さんは風も味方につけて、23年のクラチャンに輝いた
「右手の手首を静かに使え」がインパクトのすべて!

太平洋に向かって打ち下ろす館山CCの名物ホール東コースの7番ホール354Yパー4。佐野さんは地元館山で生まれ育ち、このコースで海風に負けないスウィングを身につけた
昨年、挑戦10度目にして念願のクラチャンに輝いた佐野さんは、優勝の感動を今も忘れない。仲間やクラブ関係者、コーススタッフ、従業員ら100人近くのギャラリーが、花束や紙吹雪、クラッカーを手に待ち受けてくれたのだ。
通称”クラチャン祭り”と呼ばれる、館山CC恒例の派手で陽気な優勝者の出迎えだ。
「それまで7年連続、横目で祝福される優勝者を見てきましたから、いつか自分も……という思いは人一倍でした。だから本当に嬉しくて自然と涙がこぼれました」
佐野さんは同時に、やはりかつて同CCのクラチャンだった父・和雄さんの教えを思い出していた。

相撲でいうところの下手出し投げ。右手首の角度を変えず、インパクトでボールを押し込んでいく。いわゆる低く長いインパクトはこうして作られる
佐野さんが初めてクラブを握ったのは10歳、小学5年生の時。
「父が競技ゴルフにのめり込み出した時期で、上手くなりたい、強くなりたいという思いからか、とにかく厳しくて、それでわずか1年で逃げ出しました(笑)」
それから35歳まで、仕事の付き合い程度でほとんどゴルフをしてこなかった。再び本格的にゴルフを始めるのは、和雄さんの競技ゴルフ引退がきっかけだった。
「父からメンバーにならないかとの誘いがあり、その時初めて、歳を取ってから息子たちと一緒に回りたいというのが、ゴルフを始めたきっかけだったと知りました。その頃、ボクにも息子がおり、それがゴルフを再開するきっかけになったんです」

全体重、全エネルギーをボールに伝える。体の起き上がりは体重、エネルギーのロスであり、風に負けたショットにつながる。強風だと“2ホールは流される”のが館山CCなのだ
佐野さんが競技ゴルフに傾倒し始めたのは、10年前に初めて出場したクラブ選手権からだ。なんとか決勝まで進出したものの、当時、ジュニア上がりのトップアマにコテンパンにやっつけられた。生来の負けず嫌いは、何度もクラチャンに輝き、地元ゴルフ界では知らない人のいない父から受け継いだ遺伝子でもあったのだろう。ちなみに9年間で2位が4回、ベスト4が2回。そして昨年、挑戦10度目にして念願のクラチャンに輝いたわけだ。
「右手は静かに使え」は、脳裏に蘇った10歳の時に聞いた父の言葉。右手で強く押せる、270ヤードドライバーショットにつながっている。
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ふだん1Wで270Y飛ばす佐野さんは、強烈なアゲインストでも超ローボールで250Y飛ばす。高低自在のショットやアプローチの技術は2024年7月号の「月刊ゴルフダイジェスト」かMyゴルフダイジェストで是非チェックください!
取材・文/大羽賢二
カメラ/増田保雄
撮影協力/館山カントリークラブ
※佐野さんにはボランティアとして登場していただきました