「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

振りやすさと許容範囲で言ったら、『NXブルー』が一番

GD 今日は女子プロに人気のシャフト、『スピーダーNX』シリーズを打ち比べてみました。3モデルを打った印象はどうですか?

長谷部 シリーズ最新の『NXブラック』は、先調子なのに振ったフィーリング、つかまり感が先調子らしくないというコメントがたくさんあったので、どんなシャフトなのか気なっていました。

NXシリーズは『NXブルー』からスタートして、一昨年に『NXグリーン』が出たわけですが、グリーンを打ったときにハードなシャフトだなという印象を受けました。改めて3モデルを打ち比べてみてわかったのは、3つのシャフトの意図が明確に分かれていて、3つの中から好みのものを見つけられる構成になっているんだなと感じました。

女子プロに人気という意味では、やっぱりある一定のシェアを占めている『NXブルー』は、振りやすさも含めて万人受けするような中調子で、ちょっと手元調子にも感じるんですけど振りやすいシャフトだなと思いました。

3モデルとも同じその測定基準の中での「5S」になりますが、一番ハードなのが『NXグリーン』で、とにかく速く振らないとタイミング合わない印象がありました。『NXブラック』はタイミングさえ合えばシャフトがしっかりしなって弾いてくれるので、飛びそうな印象がありました。でも、振りやすさで言ったら『NXブルー』が一番。

GD 以前の『スピーダー』シリーズから『スピーダーNX』シリーズに代わって、若干ハードな方向に味付けが変わったという声を聞きます。

長谷部 『スピーダー569』を長く使っていて、初期の569はつかまり感とか、やさしさ、走り感が、他社と比べて特性があって、自分が基準としている『ツアーAD DI』と比べても、飛び系のシャフトだという印象がありました。

「スピーダー=飛び」というイメージがあったので、今回打ったNXシリーズの3兄弟は印象が変わり、飛びだけを追いかけたシャフトではないように感じました。

もしかしたら、『ベンタス』で培われた方向安定性も加味されているのか、非常にバランスの取れた、かつての「暴れ馬」みたいな感じは一切なくなったような気がしますね。

GD 初期の『モトーレスピーダー』の時代には、暴れ馬のようなことも言われていましたが、モデルチェンジのたびにそれがマイルドになって暴れ馬が落ち着いてきたということですかね。マイルドになったことで、女子プロに人気が出てきました印象がします。

長谷部 そうですね。進化という意味では、飛びの進化よりは、むしろ扱いやすさの進化のほうにふれている印象です。これはメーカーの意図していることかどうかわかりませんけど、そのような感じがしました。

先調子、先中調子という説明が各種あったとしても、静的な調子以前に動的な性能の振り感というところでは個性が3つ揃っているように思います。

GD 『スピーダー』が女子プロにうけている最大の要因ってなんだと思いますか?

長谷部 今日の3モデルの5Sを改めて打ってみて思うのは、 軽いけど弾き、かつしっかり感があることです。軽いシャフトで弾き感のあるものを作るのは実は難しい。強度を出さなければいけない。しっかり作ろうとすると「棒」になりやすく、弾き感を出すには、ある部分の剛性に弱さみたいなものを作らないと、しなり戻りが生まれません。その辺のバランスが絶妙というか……。

GD ブルー、グリーン、ブラックで、ブルーが一番許容範囲が広く、その次がブラックで、一番狭いのがグリーン。グリーンはちょっと少しハード目の設計で、手元剛性と先剛性が締まっていると言います。

長谷部 方向安定性を重視したいプロにとってみれば『NXグリーン』がいいと言うでしょうね。手打ちが上手く、タイミングが合えば『NXブラック』もありだと思います。ある程度バラつきも含めて安定性を求めるんだったら『NXブルー』でしょう。そんな感じで当てはめることができるので、結果的に『スピーダーNX』が流行っているのだと思います。

『NXブルー』の打ちやすさと比べると、『NXグリーン』はかなりハードな印象

GD 『ベンタス』を使う女子プロも少し増えてきました。『ベンタス』と『スピーダーNX』の違いってなんですか?

長谷部 メーカーの説明にもあるようにUSPGAツアーの発想で作っているシャフトなので、動きを抑えているのが『初代ベンタス』です。ベンタスの赤は少しシャフトの動きを出しています。ベンタスの赤を使っている人も女子プロは、方向安定性を求めながらも、多少動きのあるシャフトを選んでいるのでしょう。

GD 『初代ベンタス』の5Sは、『NXグリーン』よりもさらに硬い、その上のシャフトという感じでした。

長谷部 それこそ一生懸命振らなければいけないし、『NXグリーン』はそこまで振らなくて、しなり戻りが速いので打てる感じがあります。『ベンタス』は自分で振らないと戻ってこないし、叩けば叩くほどいい結果が出るシャフトだとは思うんですけど、逆に叩けなければいけないと思うと力みが生じて、スウィングに悪影響が出るかもしれません。

GD 飛距離で言うのもなんですが、普通に250ヤード飛ばせるだけのスピードが出せる人じゃないと『ベンタス』は向かない。

210~220ヤードのレベルは、スピーダーの『NXブルー』、もしくは『NXブラック』で、230~240ヤードクラスは『NXグリーン』、そんな感じですか?

長谷部 そうですね、そんな感じかもしれません。『NXグリーン』は手元も先端も硬いのでしっかりクラブが振れて、切り返しも速いスウィングに合うシャフトなのかなって気がします。

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