ユーティリティには「つかまる」「つかまらない」の2タイプがある
GD パターを除く13本の構成を考える中で、ドライバーは 1本独立して考えなきゃいけないのかな、と思いますが、ドライバーとフェアウェイウッドについてはどう考えればいいですか?
長谷部 ありがちなのがドライバーと同じシリーズで揃えようとすることです。ゴルファーニーズとして、デザインも見た目も含め、同じブランドで統一したほうがいいと思うのはすごくわかるんですけど、それが万人に合わない状況になっています。ドライバーのヘッドが大型化しているから、フェアウェイウッドまで大型化してしまって打てなくなったゴルファーがたくさんいるのが現実なので、ここは今の状況から考えると切り離して考えてほしい。
GD ドライバーが3種類あるのに対して、フェアウェイウッドは1種類しかない。
長谷部 これはメーカーの事情でしかありません。元々は3種類作っていたかもしれないんですけど、どんどん減らしていった結果ですよね。ビジネス継続のために生産と販売効率を考えているだけであって、ツアーモデルと一般モデルでなんとかしてくださいというのが現状です。本来ならもっといろんなヘッド、ロフトのバリエーションも必要なのがフェアウェイウッドです。
GD フェアウェイウッドとユーティリティは、なんとなくひとつの流れでセッティングしたいなと考える人も多いかと思うんですが、ユーティリティとアイアンについてはどう考えたらいいですか?
長谷部 ここは「ユーティリティ」っていう言葉を一旦忘れてください。ウッド系とアイアン系に分けたほうが本当は考えやすいので。
というのは、そのユーティリティの中にアイアン系のものもあれば、ウッド系のものがあります。ここで自分はウッド系が好きなのか、アイアン系が好きなのかまで範囲を広げて考えたほうがいいと思っています。
ユーティリティを中心に考えてしまうと、その前後が今のラインナップでは埋められなくなるようなことがあるので、まずはウッドが好きか、アイアンが得意か苦手かでいいと思うんです。
GD 飛距離の流れとは別問題であると……。
長谷部 飛距離はロフトで選んで、同じロフトでも打ち出し角に差のあるヘッドならば、長さを変えれば距離の階段は作れるようになります。
一番気をつけたいのがロフト20度から25度の範囲をどの形状で選ぶかによって、プレースタイルにも影響するということ。もっと言うと 28度ぐらいまで入れていいかもしれません。最近は28度ぐらいまでのウッド系ユーティリティが出てきているとなると、ヘッドスピード40m/s以下でも28度のユーティリティを使えばちゃんと綺麗な球が打てる。
スピンがかかって高く上げて止まることができるようになれば、プレースタイルは変わるので、その辺で自分はどっちが好きかを選んでいけると思います。
GD フェアウェイウッドとユーティリティには互換性みたいなもの、ブランドとかシリーズモノにはありそうな気がするんですが。
長谷部 これはなんとも言えないですね。テーラーメイドの中でも、アダムス系とテーラー系のユーティリティがあります。私が勝手にアダムス系と呼んでいるのですけど(笑)、キャロウェイにもアダムス系と元々のキャロウェイ系のものがあります。2種類あるんですけど、そのアダムス系のユーティリティをプロツアーで流行らせたのがこの2社なんですよ。アダムスの関係者がどちらのメーカーにいたのでそうなっているんです。
GD アダムス系?
長谷部 ジャンボさんがテーラーメイドと契約して、『アダムス』を使っていたことがありました。その時のユーティリティならわかりますか?
GD ああ、白いヘッドの?
長谷部 そうです、あれ。あの白いヘッドのユーティリティがアイアン顔でウッドヘッドという形状でしたが、ツアーモデル系に寄ってしまったために、つかまるユーティリティとつかまらないユーティリティの2種類になっています。
ジャンボ尾崎がテーラーメイド契約時代に使用した白いヘッドのユーティリティが『アダムス』。つかまり過ぎない(引っかけない)ユーティリティとして上級者に人気だった
GD ということは、つかまるか、つかまらないかで揃えないと性能が混ぜこぜになってしまうんだ。
長谷部 ユーティリティはロフトが増えてくるとつかまりすぎが気になってしまって、やっぱり怖い。だから使えないっていう方がアイアン系に走るんですけど、アイアン系ではもともとヘッドスピードが足らないから、球が上がらないというジレンマに陥ってしまう。
ユーティリティに関して言えば、キャロウェイもテーラーメイドも、つかまり系のやさしいユーティリティと、つかまりを抑えたハードヒッター向けのウッド系のユーティリティの2種類のラインナップがあります。でも、ここまでちゃんとラインナップを揃えているメーカーは少なくて、どっちかと言えば、つかまりを重視したユーティリティがラインナップされていて、結果的につかまってしまうがために、ハイロフトが使えない、怖くて打てないという方が多いっていう現象も起きているんです。
なので、「フェアウェイウッドの流れからユーティリティを選んでいいですか?」って言われるとそれが理想なんですけど、ユーティリティのロフトと、つかまりの問題がひとつネックになっていて、まだ十分なラインナップにはなっていないというのが現状です。
GD ドライバーから考えてみると、流れが見えなくなってしまった感じがします。ドライバーは別モノと考えた方がいいの?
長谷部 ティーショットで飛ばすためのクラブであるドライバーとフェアウェイウッド、ユーティリティの繋がりまでは考えなくてもいいでしょう。できればそこは無視していただきたい。
結果的に同じブランドになることもあるかもしれないですけど、同じブランドで揃えようとした時に選択肢が狭まって、いいセッティングにはならないってことがあります。
プロでもクラブを変えられない方が多くいるように、同じブランドやメーカーでも発売年の違うクラブや中古まで含めたら選択肢が広がりますね。