番手ごとにライ角を調整するのが究極のカスタム
GD フィッティングというのは、先ほど長谷部さんから「選ばれたものの中からのベストを選ぶ」と言っていましたが、アイアンとの繋がりはどう考えたらいいですか?
長谷部 アイアンに関しては構えた時のオフセット。グースの好き嫌いで構えた感じがだいぶ変わってきます。つかまりがいいか? 悪いか? と、安心感があるか? ないか? 構えた時の印象っていうのがすごく重要になってくるので、ネック形状の雰囲気でアイアンの場合は選ぶのが基本になるでしょう。
GD アイアンは、自分の好みで決めちゃっていいわけですか。
長谷部 アイアンはフェースの形状に大きな変化ってないじゃないですか。もともとが狭い範囲での選択になるので、構えた感じで選んでいけば自分の好みはこの系統なんだというのがわかってきます。その中でキャビティだったり、中空、素材の違うものを選べばいいので、まずは好き嫌いで選んでいいんじゃないですか。
GD シャフトは簡単に言えば『モーダス125』を含め、『ダイナミックゴールド』系にするか、『NS950』のような軽量系でいくか、それともカーボンシャフトかになると思うのですが、アイアンのシャフト選びは結構大事じゃないですか?
長谷部 アイアンのシャフトは重量帯で選ぶことがまず大事で、アイアンはシャフトによってヘッドスピードが変わります。重さによってダフリやすい、ダフリにくいもありますし、あとはウェッジにどう繋げていくかも考えないといけません。
飛距離の繋がりも考えなければいけないのですが、一番は正確にインパクトを迎えられるシャフトはどれ? っていうことになります。つかまるとか球が上がらないという問題は、ヘッドの機能でなんとかなるものなので、まずは正確にクリーンヒットができるシャフトはどれか? になります。
GD アイアンのカスタムというと、ロフト、ライ角の調整は絶対にやるべきだと思うんですが。
長谷部 やったほうがいい。距離の階段と同じように、ライ角の階段もしっかり作るべきだと思います。プロゴルファーの中には、あえて同じライ角にした番手が2、3本あったりするんですよ。
GD どういうこと?
長谷部 普通ならちょっとずつ長さがずれるから、正確なインパクトを迎えるためにはライ角もちょっとずつアップライトになっていくのが理想なんですが、じゃあ、0.5度刻みである必要ありますか?ということなんです。0.5度の差ではなく0.2度ずつずらしたり、ロングアイアン、今で言ったら4番、5番、6番のライ角をすべて同じにしているプロもいます。
GD アップライトに?
長谷部 アップライトにです。なぜかと言うと、長くなればなるほどつかまりが悪くなるので、ライ角で調整するプロもいました。そういった実戦から生まれたノウハウが市販クラブにはなかなか生かせないんです。個人的なネームをつけたブランドでそれをやったことあります。6番のつかまり感を4番で同じようにするために、同じ61度にしてあげたほうがいいケースもあります。それが正にカスタムです。
GD でも多くの人はそのよういじり方はしませんよね。
長谷部 カタログ通りになっているのが理想だと思っていて、その結果に合わせて自分のスウィングなり、練習をしているんですけど、でも右にすっ飛んでしまうのは悪いことなので、それはクラブを直しましょうということになります。
GD 右に飛んでいくのをシャフトのせいにする。シャフトの硬さが合わないとか違うところに原因を持っていこうとする人もいますよね。
長谷部 基本的には左右に飛んでいくミスはライ角を疑ったほうがよくて、昔、シントミゴルフでしたっけ? インパクトの写真を見せて球が曲がるのはライ角が原因と昔から言われていましたけど、今、PINGのフィッティングでやっているように、ライ角調整はありますが、セットで流すのではなく、球筋に合わせて、番手ごとにライ角を微調整するのが、究極のカスタムでしょうね。
GD そうですね。アイアンはウェッジも含めて、出球に対してロフト、ライ角の管理をしっかりやらないとカスタムした意味がありません。
長谷部 カタログ通りに作ったり、メーカーの基準通りに作っていくことが綺麗なセッティングのように思われがちですが、自分が着る服の裾、袖を合わせるのと同じように、最終的な微調整をして仕上げないとカスタムした意味がない。
GD プロはもっと細かいところをこだわっていくじゃないですか。
長谷部 長さにしても、メーカーは半インチ指定で十分でしょうと思っても、プロは8分の1インチで指定してくることもあります。そういったプロの細かなニーズに対応しているのがツアー現場の仕事です。
GD 具体的にアマチュアはどのような対策をして、どういうところに注目しながらクラブを見ていくと、自分に合ったものを手にすることができそうですか?
相当なクラブ好きで、クラブのことを勉強していても、それが正解かどうかはわからない。でもその分野に入っていかないと、人に言われるがままにクラブを握らされることに変わりありません。
長谷部 コンシェルジュ的に あらゆる質問に対して答えてくれる人がいたほうがいいんですよね。でも、これを無料でやってくれる人ってそうそういないので、そういったことがビジネスにならない限りは、クラブに詳しい知り合いに相談するレベルになってしまう。でもそれが正しいかどうかもわからないので、ひとつ言えるのは、今お持ちのクラブをいじり倒すことでしょう。
例えば、アイアンだったらライ角を調整する何が変わるのか? シャフトを全体的に軽くしたときに何が変わるのか? っていうことをやってみると、その中から結果が見えたりすることがある。
中古ショップで自分が使っているアイアンと同じような系統のヘッドの中で、軽いシャフト、カーボンシャフトを試してみたら、何が変わるのかっていうのをやっていくと、自分には重いシャフトが合うのか、短いクラブが合うのかっていう傾向が見えてくるので、まずはその辺から試していく必要があるのかなと思います。
GDOゴルフガレージでは、各種カスタムチューンに対応。東京、神奈川、千葉、6店舗に工房があります
GD 今中古だとドライバーなんかやりやすいと思います。かなり安くなっていて、昔の名器で試すことも可能です。同じヘッドを揃えてシャフト違い打ち比べてみたり。
長谷部 そういうのもありだと思います。正直、最新のものがベストのパフォーマンスをあなたに提供するという約束はなくて、常に新しい提案があるだけの話であって、過去10年ぐらい遡っても、現実にいいものたくさんあると思うんですよ。
そういうものの中から自分に合う傾向はないのかと選んでいくのを楽しみのひとつとしていいんじゃないかなと思います。
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