元ドラコン競技者がおすすめする1本
連載19回目は福岡県大野城市に工房を構える「福岡ゴルフ工房」の徳永さんがおすすめする1本をご紹介。徳永さんは、「福岡ゴルフ工房」を創業した福留義次さんに師事し、昔ながらの技術と現代の知識をアップデートして日々の要望に応えているそう。主な顧客には「東急大分オープンゴルフトーナメント2024」で初優勝を果たした八川遼プロのほか、九州ミッドアマの予選通過者が多いという。顧客からのニュアンスを拾っていき、クラブを調整するため、お互いに意思疎通が取れる工房としても人気だ。
工房を始めた理由を聞くと「男性のクラフトマンさんが多いので、敷居が高いイメージがあったんです。私のような人がすることによって女性をはじめ、若い世代のゴルファーが相談しやすいような工房を作れたらなと思って引き継ぎました。またクラブを組み立てるだけではなく、見た目も重視して組み立てるのが得意です」と徳永さん。女性ならではの視点から提案できることも魅力だ。
フィッティングのこだわりを聞くと、「まずドライバーを打つ前にアイアンを見させていただくことが多いです。アイアンのシャフトを見て、スウィングのどこで一番力を加えているかを見ます。そこから逆算していって、まず合うものではなく“合わない”シャフトを探していくんです。手元が緩い、硬いシャフトを打っていただき、どんどん合わないタイプを除外して、最後に合うタイプを何本か試していきます。自身に合わないシャフトをわかっていただけるようなフィッティングを心掛けています。合わないシャフトがわかるとリシャフト時の基準ができるので、買い替えの際に大きく失敗する確率も防げると思います」と語った。
「エミリッドバハマ『CV8 』とUSTマミヤ『アッタスキング(4X)』がおすすめ」と徳永さん。「私自身ロースピンで、球が上がりにくいタイプだったため、ロフトは12.5度でスピン量を確保しつつ、先が走るシャフトですが4Xの硬さで方向性と飛距離を両立できるように組みました。ヘッドスピードは42~45HSm/sが理想ですかね。ドラコン競技とは違い、実際のラウンドでは方向性が欲しかったためフレックスを硬くすることで安定感が得られると思います。またヘッドはキャリーも出ますが、着弾後のランも出るため、非常に飛距離が稼げるヘッドです。実際に打っていただくと違いが分かりやすいかなと思います」とドラコン競技の経験を活かした組み合わせとのこと。
●ヘッド/エミリッドバハマ CV8(ロフト12.5度)
アドレス時のヘッド形状のこだわりをもって設計したヘッド。洋梨形状で弾道のイメージを出しやすい。特徴として、ソールフェース側に配置したウェイトにより低重心化に加え、浅い重心設計にすることで更にスピン量を減らしている。また、操作性を兼ね備えているため、幅広いゴルファーに対応できるヘッドとなっている。価格(税込)/7万7000円
●シャフト/USTマミヤ ATTAS KING(4X)
手元部から中間部にかけて四軸織物を採用。四軸織物の高い復元力を活かすことによってシャフト先端部が加速し、今までにない「つかまり」を実現した。さらに四軸織物を手元部分に使用することで通常のカーボンシートでは得られにくい軟らかい打感と振りやすさを演出。シャフト先端部に高弾性・高強度素材である「トレカM40X」を採用。ATTAS CoooLで培ったHTTテクノロジーと融合させることにより、スピード感ともうひと押しを両立し飛距離の最大化を生み出す。価格(税込)/4万4000円
飛距離アップが見込める組み合わせ
ここからは堀越プロの試打結果とインプレッションをお届けしよう。
クラブを手渡し、アドレスした瞬間に「これ、フェース面がかなり見えるけど、ロフト角は何度? 12.5度? ここまでフェースが見えると球が上がるイメージが強いので、“やさしさ”がありますね」と堀越プロ。「フェースは見えるんだけど、ヘッド後方にストレッチされていないので、強い球が打てそうなイメージもあります。ソールのフェース寄りにある5つのウェイトも低重心・浅重心設計を試みているのだと思います」とヘッドの特性を推察する。シャフトに目を移すと、「4Xですか!? まさに軽・硬シャフトですね。軽・硬で振りやすさと方向性を求めているのでしょう。ヘッドもシャフトも特徴がある組み合わせなので、相乗効果がどれくらいあるのか、楽しみです」と話す。
「ちなみに、同じシャフトのフレックス違い、たとえば4Xと5S、5Xと6Sなど、振動数が同じと思っている人は多いのですが、振り心地はかなり違うので注意が必要です。フレックスが硬いほうが手元がしっかりしているので、しなる感覚が強いと思います」とのこと。
いつもどおりHS42m/s前後で試打を開始。1球目から打ち出しが15.3度と高い球が出た。「この打ち出し角の高さは12.5度のロフト角のおかげでしょう。いまはHS42m/sで、ボール初速は61.7m/sでした。週刊ゴルフダイジェストで記事になりましたが、ボール初速が60m/s以下のゴルファーであれば、打ち出し角を上げることでキャリーが伸びることがわかっています。初速が60m/sということはヘッドスピードでいえば、40m/s前後。このくらいのゴルファーだと、この12.5度のヘッドは抜群にいいですね。とはいえ、このロフト角だと、スピン量は増えます。いまのデータは2958rpmなので、ボールが上がらなくて悩んでいるゴルファーに合いますね」(堀越)
数球打つと、「球が上がってくれる“やさしさ”はありますが、オフセンターヒットの強さを示す寛容性という点での“やさしさ”はそれほどない気がします。それは先に述べたように浅重心設計ということに起因します。このクラブを打ちこなすにはアベレージゴルファーというよりも腕前がアベレージで90前後で低弾道で悩んでいる人がいいと思います」という。
なお、ヘッドスピード42m/s前後で5球を打っての平均は下記のとおり。
ボール初速●62.2m/s
打ち出し角●15.2度
スピン量●2582rpm
キャリー●229.6Y
総飛距離●248.7Y
総評
「ロフト角による高打ち出しが最大の特長だと思います。また、ロフト角があるということでスピン量も増えます。弾道計測器の発達により、インパクト時のロフト(ダイナミックロフト)からアタックアングルを引いた数値が大きければ大きいほどスピンがかかるということがわかっています。基本的にリアルロフトが大きければインパクト時のロフトは大きくなるので、スピン量が増えるというわけです。この打ち出し角とスピン量によって高弾道が生まれます。また、シャフトは4Xという軽・硬シャフトなので、アップライトに上げて下す縦振りスウィングのゴルファーだと手元が浮くリスクがあるので注意が必要です。とはいえ、この組み合わせはキャリーが稼げるので、飛距離アップにつながると思いますよ」(堀越)
福岡ゴルフ工房
シャフトやヘッドに合わせてグリップやソケットのカラーリングを合わせたりする「機能性」と「ファッション性」を兼ね備えたクラブ作りが得意だそう。ドライバーのみならず、ウェッジも得意。中にはスピンがすごくかかるウェッジがあるとか…詳細は徳永さんまで。
住所/福岡県大野城市乙金東3-7-1
営業時間/10時〜19時
店休日/水・木
電話番号/092‐558‐8908
THANKS/クレアゴルフフィールド