シャフトの太さで変わってくるユーティリティの打ち方
GD ユーティリティって非常に混沌としている時代が長く続いているように思います。フェアウェイウッドもそういう時代があったと思うんですが、ここにきて5番ウッド、18度が定着し、落ち着いてきたのではないでしょうか。
長谷部 長い歴史の中でブラッシー(2番ウッド)が消えたり、バフィー(4番ウッド)がなくなりつつある中で、進化を遂げているっていう意味では、フェアウェイウッドは落ち着いてきたと思いますね。
ユーティリティは生まれてから30年くらいだとすると、たった30年という見方もあって、まだまだカテゴリーとしては成熟していないので仕方ないのかもしれません。あとは、ビジネスというメーカーが抱えている使命からすると、メインとして選ばれる機会が少なかった。
パター、ドライバーほど重要度が高くなく、緊急の必要性が求められない中で時間経過があったとすると、思い切った手が打てないまま来てしまった気がします。
GD 必要性といったら、アイアンのストロング化によって重要度は高まっていると思います。いいクラブが欲しいと思っている分野ではありますが、でも探してみてもクラブがない。
もう誰かが作らなきゃいけないんだろうと思うんだけど、なかなかその動きも感じられません。
長谷部 感じませんね。単品販売だからお好きな番手をどうぞという勧め方はけっして悪いわけじゃないんですけど、アマチュアからすると単品で買って、次に買うのが1年後だったりすると、その時はもうモデルチェンジしてしまっていて、セットの流れが組めなくなる。そんな問題も出てきます。
同じシリーズの新作を買ったのに「あれ? ちょっと違うな」っていうことも迷路にはまり込む原因になっています。アイアンセットが崩壊しそうになっている時に、ミドルアイアン代わりのユーティリティが3本セットであってもいいような気がします。
そうすることによって、ひとつの指標としてメーカーが推奨するスペックを確認することができるんじゃないか。今はなんか単品で選んでくださいって言われても、どう選んで良いかまでわからない。だからなかなか定まらないのかなと思います。
GD シャフトの問題で言えば、ウッド系にするのか、アイアン系にするのか、ここも混沌としていると思います。
長谷部 チップ径を中間の太さにして、アイアンでもない、ウッドでもないハイブリッド用のシャフトがかなり開発されました。
ですが、リシャフト市場やその後のメンテナンスを考えたら、どっちかに振れていたほうがユーザー的にはわかりやすいのかなっていうことで、専用設計のシャフトも最近は見直されつつあります。
GD チップ径の話はマニアックな話なので整理しておくと、シャフトの先端の太さには3種類あって、ウッド系は細く、アイアン系は太い。ユーティリティの専用シャフトはその中間の太さということでいいですよね?
長谷部 そうです。ウッド形状のユーティリティでも、アイアンチップ径が増えてきています。強度面のメリットもあってメーカーとしてはそういう傾向があるんですが、高い球でウッドのように打ちたいハードヒットしないタイプのゴルファーにとってみれば、先が細くしなるものの方が、球も上がりやすいし、遠くに飛ばせる可能性はあります。
GD 軽くぽ~ん、ぽ~んって打っていきたいって人はウッド系の細いチップ径のユーティリティを選ぶべきで、上からガツンと打っていけるパワーヒッターはアイアンタイプの太いチップ径のものを選べばいい。これってあんまりメーカーは説明してないんじゃないですか?
長谷部 メーカー個々には説明していると思うんですけど……。今自分が使っているユーティリティがウッド系なのか、アイアン系なのか、中間なのか、そこまで認識しているゴルファーも少ないと思うので、見比べてみて太いのか、太くないのか、もしくはお店に行った時に細いか、太いかぐらいは見てもらって、自分がどういうタイプのクラブを使っているのかを確認しないと、理想的な打ち方が違う可能性があります。
GD ユーティリティ30年。クラブの歴史から考えれば、生まれたての分野のひとつだと思うんですが、 まだまだこれだっていう答えに行きついていない。何が変わったら答えが見えてくるんでしょうか?
長谷部 なかなか難しいな……。
GD やさしい、上がる、止まる。そこまでは現在のユーティリティでも到達しています。
長谷部 機能的にはカバーされています。
GD 満足度に関しては、形状を含めゴルファーが求めているものとはちょっと違うようなきがします。
長谷部 ベテラン設計者の中に、最近そのようなことを言う人が増えてきました。物の形で感じる重心と、実際の重心がズレていることに違和感を覚える人がたまにいます。逆にそういった意識で物を見ている人もいて、人間はそれを言葉に表現できたり、認識しなくても物を見た瞬間にどこかにある重心を感じて振ろうとする感覚があると思うんです。
テニスラケットやクリケットだったら、グリップ、シャフトの延長に打点があるから、そのままグリップの延長線で打てばいい。ゴルフクラブはグリップの延長から外れているので、ヘッドのどこかを見て打とうとしているはずで、芯を感じる人はその辺で重心を感じている、もしくはまったく芯とかを感じないで、ぼよ~んと打つのが好きな人は別にそういうの意識しないで、フェースのトウ側に当たろうが、ヒールに当たろうが 結果的には真っすぐ飛べばいいという感覚で打つ。
この2種類があるとすると、どっちのゴルファーを目指して作っていますよっていうとこまでメーカーが示してあげないと、振ってみたり打ってみたりしないとわからない。
そういったパフォーマンスの違いがユーティリティにはあるのかな。芯を感じる、感じない、この辺の感覚を持っている方にとってみれば、慣性モーメント重視で深重心に作ってしまうのはちょっと物足りないし、コントロールしづらいものになると思います。
GD 古いタイプのゴルファーの中には常に芯で打っていきたいと思っている人もいるはずです。真芯で打つことの気持ち良さを大事にしているような気がするんですよ。 でも、スイートエリアの拡大が良しとされる現在は、真芯の感覚がぼやけてきていると思う。
それと、ドライバーにしても、ウェッジにしても、アイアンにしても、クラブの目利きみたいな人って、「これいい顔しているよね」って言うことがありますが、ユーティリティに関しては、これいい顔しているよね、ということはあんま聞かないし、いい顔の基準が曖昧になっているような気がします。
長谷部 例えがいいかわかりませんが、ミニバンとセダンを融合したSUVが流行っています。すごく便利で使い勝手がいいんだけどスタイリングが悪い。徐々にスタイリングが改善されたものが出てきて、スタイリッシュなSUVが出てきたっていうのと同じように、アイアンから発生したもの、ウッドから発生したものが混在してしまった結果、美しい形のスタンダードが未だに定められていないということが、もしかしたらあるかもしれないですね。
構えた時にどこを見るのか。リーディングエッジなのかトップラインなのかによって構えやすさが変わってきます。アイアンとウッドの大きな違い。ユーティリティはその間にあるため、何をもって綺麗な顔とか綺麗な形と言うのかがまだ共通に語られないのが原因かもしれません。
GD トップラインの位置ってメーカー(モデル)ごとで全然違うじゃないですか。 シャフト軸の左に出てるものもあれば、真ん中にあるもの、右にあるもの。
トップラインの位置によって、球のつかまりとかインパクトのイメージって随分変わりますよね。
長谷部 ボールを置く位置、手の位置も変わってしまうぐらい構えることに対する影響が出てきてきます。
昔ほどフックフェースのものが減っているのですが、すべての人の好みに対してまだ合わせられてはいないし、オフセットとその構えやすさや意図をちゃんと説明してないっていうことはあると思いますね。
トップラインの位置によって顔の形状、機能が変わるのがユーティリティ。その位置は各社バラバラでいまだに定まっていない