ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回はカナディアンオープンで、PGAツアー初優勝を飾ったロバート・マッキンタイアについて語ってもらった。
画像: 「マッキンタイアはボールは曲げるし、小技も上手く、ときに感情をあらわにするマッキンタイアのゴルフは見ていてとても面白いです」(佐藤プロ)

「マッキンタイアはボールは曲げるし、小技も上手く、ときに感情をあらわにするマッキンタイアのゴルフは見ていてとても面白いです」(佐藤プロ)

カナディアンオープンで、PGAツアー初優勝を飾ったロバート・マッキンタイア。昨年欧州ツアーでランク13位となり、今季はPGAツアーへ参戦。この企画でも一度紹介していますが、スコットランドのオーバンという田舎町育ち。家の前にあるわずか4000ヤード超、パー62のグレンクルイットンGC(1900年代初期開場)でゴルフを覚えた27歳です。

コースが人を育てるというように、週刊ゴルフダイジェスト連載中の漫画『オーイ! とんぼ』を地で行く、曲げたり、高さをコントロールしたりと、多彩な技の持ち主です。

本来は右利きのレフティ。スコットランドにはシンティという、フィールドホッケーがさらに激しくなったようなスポーツがあり、幼い頃からその選手でもありました。スティックは両手で扱う必要があり、レフティはその影響。ゴルフに見られる気の強さもシンティから来ているかもしれません。

渡米後、マッキンタイアはホームシックに陥ります。本拠地にしたのは、フロリダ州オーランドのアイルワースCC。かつてタイガー・ウッズの自宅もあった高級住宅街で、ハイソなクラブです。

田舎のパブリックコースで育ったマッキンタイアにしてみれば、居酒屋でしか飲んだことがないのに、いきなり銀座の高級クラブに入ったようなものだったでしょう。そして、3月末から約3週間、帰省し、シンティや実家を十分に楽しんだそう。

4月最終週のチューリッヒクラシックに戻り8位に。翌週も上位、全米プロでも8位タイに。大好きな家族と故郷の空気でリフレッシュされた効果がもろに出た結果でしょう、カナディアンオープンで優勝します。

さて、この試合でキャディを務めたのは、息子がゴルフを覚えたコースのグリーンキーパーを務める父のドギーさん。それまでに4人のキャディをクビにしてしまったため、急遽、スコットランドから呼び寄せました。首都オタワでの2人のワーキングビザの申請が必要で、コース入りしたのは火曜日の夜。しかも父はプロの試合でバッグを担ぐのは初めて。そんなハンディを凌駕する強い親子の絆があるのでしょう。

優勝を決めた瞬間、父のほうを振り返った息子の安堵 の表情は、2人の関係を雄弁に物語っていました。

「スピーチレスだ(言葉にならない)。ミラクルが起こるのもゴルフ」と泣く息子に対し、「僕はただのグリーンカッター(草刈屋)」と父。それに対し「いいキャディだったよ」と返す息子の言葉は、感動的でもありました。

シグネチャーイベントのメモリアルは欠場し、スコットランドに父と戻りお祝いパーティをするようです。カナダでも人気のローリー・マキロイやカナダ人のマッケンジー・ヒューズたちが優勝争いに加わり、マッキンタイアは完全アウェイな状態。上空から撮影するドローンにいら立ち、「もう少しでクラブを投げるところだった」と語る繊細さもありますが、「でも、これがナショナルオープンの重み」とも。

ロバートは今年、初めての全米オープンに出場した。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年6月25日号「さとうの目」より

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