ヘッドのブレを抑えるMAX系、芯に集めるゼクシオ
「MAX系ドライバーは、ミスヒットに強い。だからやさしい」と言われる。それを実現しているのが非常に大きな慣性モーメント(MOI)だ。最近ではトウ・ヒール方向、上下方向合わせて10,000g・㎠を達成する極大MOIのドライバーも出現、MAX祭りのような賑わいを見せている。
他方、『ゼクシオ13』や『ゼクシオ エックス』に代表されるやさしいドライバーもある。MOIの面では極大というレベルではないが、代を追うごとにスイートエリアは拡大し、こちらもやさしさの面で否定する向きはないだろう。
この双方の“やさしさ”について、フィッティングスタジオ「4plus」代表、吉川仁さんの見解を聞いた。
「海外ブランドを中心とした、いわゆるMAX系ドライバーは、やや軽く仕上げて振りやすくしている面もありますが、やはり極大のMOIによってスウィング中のヘッドの挙動を安定させる、またフェースセンターを外した時でもヘッドのブレを抑えることによって、真っすぐ飛ばしやすくなるところを狙っている。結果“やさしい”ドライバーに仕立てています」
「かたや『ゼクシオ13』や『ゼクシオ エックス』が狙っている“やさしさ”は、ボールがつかまる、上がる、これが大基本だと思います。数々の歴代モデルを打ってきましたが、どれも気楽に振って1球目から芯を食い、気持ちのいいハイドローが打てる。これは最近のMAX系ドライバーでは味わえません。やさしさの種類、そしてそこへのアプローチがまったく違います」
ゼクシオは初代から、純正シャフトの評価も非常に高い。またグリップエンドにウェイトを装着するなど、他ではあまり見られない工夫も施されている。
「ヘッド、シャフト、グリップと、クラブトータルでやさしさを完成させている。もちろん海外ブランドのMAX系もトータルで考えられてはいるでしょうが、そこ(トータル設計)へのこだわり、熱量は明らかに違うはず。これが1球目から気持ちのいいハイドローが打てる大きなポイントだと思います」
【やさしさ検証①・ゼクシオ13】
必ず“つかまる”インパクトになる。これが大事!
では、ゼクシオのやさしさを実際に打ちながら探ってみることにしよう。まずは『ゼクシオ13』から。ロフト10.5度、シャフトは純正のSだ。
「ライ角がアップライトで、つかまりそう。でも以前ほどフェースはクローズじゃなく違和感なく構えやすい。今回から2つになったクラウンの突起(ニューアクティブウイング)の向きによって、インサイドアウト軌道をイメージでき、それも構えやすさにつながっているように感じます」
スペックに合わせて、ヘッドスピードを38m/s程度にして打つと、ゼクシオ特有の快音を響かせながら高弾道のドローボールに。飛距離も軽く220ヤードを越える。
「これなんですよ! ウォーミングアップもしていないのに、いきなりドライバーで真っ芯を食う。しかも多くのアマチュアが打ちたいと願うハイドロー。これが最初から出てくれると、そのあと安心してティーショットできるんです。逆に右に滑るような球が出ちゃうと、つかまえにいったり、それをやりすぎてチーピンしたり……。その日のティーショットに不安を抱えることになります」
吉川さんのショットを見ていても、まったく力むことなく上げて下すだけのリズムでナイスショットを連発する。確かにとても魅力的な性能だ。ただ左を嫌がるプレーヤーにとってはどうなのだろう
「誤解されがちなんですが、プロでも大前提として“つかまる”ヘッドを選んでいます。フェードが持ち球のプレーヤーも、“つかまった”フェードじゃないと距離が出ないし、コントロールもできません。ゴルファーにとって“つかまる”は正義なんです。インパクト時のフェースアングルに注目してください。これが私の場合は何球打ってもマイナス(クローズ)です。このつかまり感があれば、必ず右から左に戻ってくる。なによりも安心材料になります」
もちろんMAX系のようなMOIの非常に大きいドライバーには、ミスヒットに強いというメリットがある反面、ゼクシオ13がマッチするようなゴルファーにとっては、ヘッドが返りきらずに右にすっぽ抜けるような球も出やすいのも事実だ。
その後、吉川さんに意図的にカット軌道で打ってもらうなどしたが、こすり球のような“飛ばない”ボール、あるいは右にすっぽ抜けるような球は出ない。
「相当右に行くだろうな、というスウィングをしても、フェアウェイに残る曲がり幅。“あっ!”と思った時でも、大きなミスになりません。シャフトの出来もいいですね。意外と先がやわくないから、インパクトで動きすぎてフェースが上を向くような挙動がない。スピンも過剰にならないし効率良くボールを押し込める。非常にインパクト効率が良く(ミート率1.50)、飛距離が伸びます」
【やさしさ検証②・ゼクシオ エックス】
基本はドロー。ネック調整で“どストレート”の強い球!
続いて『ゼクシオ エックス』。こちらもロフト10.5度、純正のSシャフト。『ゼクシオ13』に比べてしっかり感があるため、吉川さん的にはさらに気持ちよく振れるようだ。
「純正シャフトのSですけど、普通に使えます。何ならコレ使いたい! 上げて下ろすだけで250ヤード楽に行くって、ちょっと考えにくいです。打点を見ても本当に芯にしか当たってないんですよ。こんなに真ん中にばかり当たることありません(笑)」
ヘッドスピード40m/sぐらいだったのが、気持ちよく振れるようで次第にスウィングスピードがアップ。つかまり傾向が強くなってきたため、ロフト角マイナス1度、フェース角2度オープンのネック調整を試みる。
「お~ッ、こんなに変わりますか! スピンもさらに減って280ヤード近く行きました(ヘッドスピード45m/s)。弾道も完全なストレート。これ“自分用”なんじゃないか? と思うほどドンピシャ合ってます。純正のSでもヘッドスピード45m/sぐらいまでカバーしますね。やさしくつかまる『ゼクシオ エックス』のヘッドに、しっかり目のシャフトをカスタムしたら、それよりヘッドスピードの速い人にとっても、かなりいいドライバーに仕上がりそう。個人的にも、もっと研究したいドライバーです」
ヘッドスピード45m/sで280ヤード近くを叩き出した『ゼクシオ エックス』、そしてつかまり性能が高く、最大のインパクト効率を生み出す『ゼクシオ13』の双方には、共通のテクノロジーが用いられている。
ひとつは「BiFLEX FACE(バイフレックスフェース)」。トウサイドはエッジの丸みを大きくして、フレームの剛性を強化。大きくたわむフェースをフレームがしっかり受け止めることで、ボディのたわみを大きくし、高初速に貢献する。対してヒールサイドは、逆にエッジの丸みを小さめにし、フェースの高さを保っている。これによりフェース自体のたわみが大きくなり、高初速を実現する。
もうひとつは、クラウン後方ヒール側に設置された2枚の羽根のような突起「New ActivWing(ニューアクティブウイング)」。2段階にして表面積が増したことで、空力性能がさらに向上し、ダウンスウィング前半でのヘッドの挙動が安定、インパクト時のフェース角、打点の安定につながる。
「BiFLEX FACE」の効果により、フェースセンターはもちろん、真ん中を外しても高初速を維持、そして、「New ActivWng」により、さらに打点のブレを防ぐ。最適なインパクトを高確率で導くために二重の保険がかかっているような仕組みだ。
試打を終えた吉川さんは、「PGAツアーで主流となっているフェース面の開閉をあまり使わない最新スウィングができる人には、極大MOIのMAX系は合いますが、日本人ゴルファーに多い、積極的にフェースの開閉を使うスウィングには、『ゼクシオ13』や『ゼクシオ エックス』のようなつかまえる動きのしやすいドライバーのほうがマッチすることが多い」と結論付ける。
ドライバーの本当のやさしさとは何か。改めてゼクシオシリーズを打つことで、その答えが見えてくるかもしれない。
PHOTO/Takanori Miki
THANKS/4plus FITTING LABO & GOLF SALON
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