古田さんのクラブ選びの基準は“難しくない”こと
現役時代は、あえて人より大きなキャッチャーミットを使ったり、相手ピッチャーによってバットの長さを変えたりと、道具には並々ならぬこだわりを持っていたという、ミスター・スワローズの古田敦也さん。キャディバッグを覗いてみると、アイアンはコンボ、ウェッジのロフトもギャップが均一ではないなど、さすがはシングルプレーヤーという感じだ。
「いや、実はゴルフクラブに関しては、こだわりはないほうなんですよ(笑)。フィッティングして、結果がよかったから入れている、というのが正直なところ。例えばアイアンは6番だけZX5 MkⅡですが、そのほうがやさしくて結果が良かったから(7番以下はZX7 MkⅡ)。そうですね、あえて選ぶ基準を挙げるなら、“難しくないこと”、かな。だいたいのところに運べる、ミスをカバーしてくれる、そういうやさしいクラブを使いたいですね」(古田さん)
確かにアイアンも5番を入れずに6番から。ただそれならば、アイアンはすべてZX5 MkⅡのほうがいいような気もするが……。
「ヘッドが小さいほうが、ラフからの抜けがいいのかな、とか。あと弾道を抑えながらラインを出していくショットを打ちたいので、下の番手はZX7 MkⅡにしています。だけど本当は、心置きなく振り抜いて高い球を打ちたい願望もある。ただそれだと左に巻くミスが出やすいので、いつもはちょっと力を抑えて中弾道を打っています」
そんな古田さんの7番アイアンの飛距離は165ヤード。現状のアイアンに不満はなく、特段替える理由はないというが、さらにやさしくかつ飛距離が出せればそれに越したことはないともいうのも本音だ。そこで古田さんも気になっているのが『ゼクシオ エックス』。自身のZX7 MkⅡと打ち比べることにした。
愛用のアイアンはコントロールしやすいが、左へのミスが気になる
まずは自身のZX7 MkⅡの7番をテスト。
「まあ打ち慣れてますからね。打感もいいし、距離も申し分ないです。バッティングに例えると、おっつけるように右に打ち出して、そこから戻すショットをコースでは多用します。自分のスウィングのクセなんですが、大きく振るとフックボールが出やすいので、ちょっと抑える感じはありますね。先端が少し軽く感じるので操作しやすい反面、過剰に操作してしまい、それがミスにつながることもあるんです」と古田さん。
安定したドローボール放つ古田さん、さすがはシングルプレーヤーだ。しかし、たまに大きくフックするミスもあり、それを警戒して少し加減して打っている感は否めない。
『ゼクシオ エックス』は、心配のタネのフックが出にくい!
では、古田さんもお待ちかねの『ゼクシオ エックス』の試打に移ろう。シャフトは古田さんが日ごろ愛用しているダイナミックゴールドのX100にカスタム。
「見た目、いいですよね。かっこいい。ZX7 MkⅡと比べるとちょっとヘッドが大きいけど、その分やさしさを感じますね。僕も50代後半、こういうやさしい感じのクラブで楽にゴルフしたほうがいいと思うんですよ。素振りすると、こっち(ゼクシオ エックス)のほうが、先が重く感じます。野球のバットも先が重いじゃないですか。その点ではとてもフィーリングがいいですね。先が重いので、振り出したらヘッドが勝手に走ってくれそうです」
実際に打つと、真っすぐ、またほんのわずかフェード気味に飛ぶボールになった。
「これはちょっと意外! もっとつかまって左に来るかなと思っていたので」
「もう少ししっかり振ってみます」という古田さんの弾道も左に巻かず、ストレート。その分飛距離も平均で10ヤード以上伸びている。
「ヘッドがオートマチックに進んで、自然とインパクトに戻ってくる感覚があります。自分で変に操作しようとしないからなのか、ボールが曲がりにくいですね。このアイアンは自分の引っかけグセをうまく解消してくれそうな気がします。(ロフトが立っているのに)弾道が高い点も間違いなくゴルフにプラスになります」
『ゼクシオ エックス』アイアンはとことん“低重心”を追求した
ロフトが立っているのに、ボールが高弾道なのはなぜか。これについては、住友ゴム工業(株)スポーツ事業本部 商品開発部 松永聖史さんが解説してくれた。
「新しい『ゼクシオ エックス』は、とことん“直打ち”時の反発性能の向上に取り組んだアイアンです。アイアンは基本的に芝の上から直接打つクラブ。必然的にフェースの下部でヒットするケースが増えます。そのためのフェース下部の反発の向上=一層の低重心化を推し進めました。従来のゼクシオ エックスアイアンは鍛造ボディでしたが、それだと強度を保つために特にトップブレード部を軽量化することが困難でした。つまりヘッド上部にそれなりの重量を取られるので、低重心化には限界があったのです。そこで今回はボディを鋳造に変更。上部を軽量化しても強度が保たれるので、その分の余剰重量をヘッド下部に集めることができ、かつてない低重心ヘッドになりました。低重心なのでボールがよく上がることに加え、実打付近の反発力も高いため、初速がアップ。その分最高到達点が先の高い所になるので、落下角度も大きくなります。結果、ロフトがややストロング(7番:28.5度)でも止まる球になるのです。30度やそれ以上のロフトのアイアンと比べても、落下角度が足りないという声はありません」
鋳造と聞くと、鍛造に比べて打感が硬いのでは、というイメージがあるが……。
「それは一概には言えません。打感には、構造や肉厚、異素材の組み合わせなど、様々な要因が関係します。新しい『ゼクシオ エックス』は、ボディは鋳造ですが、フェースは鍛造ですし、バックフェース側のバッチも打感・打音をマイルドにしています。前モデルとまったく遜色はありません」
古田さんも「ボールの弾きはいいんですが、打感や打音に硬さはまったく感じない、というか逆に気持ちいいですね」と証言。
現状のZX7 MkⅡに不満はないが、それを大きく上回る『ゼクシオ エックス』の飛びとやさしさを体感した古田さん。「こういう簡単なクラブで回ったほうが絶対結果はいいんだよな……」。パワーヒッターかつ上級者の古田さんのバッグに、新『ゼクシオ エックス』アイアンが入る日は遠くなさそうだ。
アスリート派のゴルファーにとって、“新たな選択肢”として『ゼクシオ エックス』を試してみると、アイアンの価値観が一変するかもしれない。
PHOTO/Takanori Miki