ウォルターズは車椅子に乗ってプレーする“シーティング部門”にエントリー。シートが回転する特殊なゴルフカートは本人が設計に携わった特別なもので、回転した座席に座った状態でバンカーからでもグリーンからでも打つことができる。しかも彼はトリックショットの達人。
全米で3000回以上行ってきたエキシビションで障害者に勇気を与え、19年にはゴルフ殿堂入りを果たしている。
74歳になった現在も競技に出続ける彼は、同大会に3回連続で出場。第1回大会ではシーティング部門で優勝し、23年の第2回大会で3位に入っている。
「25年前にこの大会があったらよかったのに。これは障害者のための全米オープンなのです」(ウォルターズ)
70年代初頭、彼はノーステキサス大学ゴルフ部のエースだった。しかし74年にゴルフカートの事故で下半身不随に。父は息子の頭を抱えて泣いた。
ライバルたちが試合でテレビに映る姿をなすすべもなく見る息子に、父は「球を打ちに行かないか?」と提案した。「誰に言っているんだ、こんなありさまなのに!」と息子が答えると、父は「その無様な車椅子で球を打つんだよ」。これが障害者ゴルファーのレジェンドの始まりとなった。
アメリカでは数十年前からさまざまなアダプティブゴルフ大会が催されてきたが、18年に全米障害者ゴルフ協会は15のカテゴリーのゴルファーが参加できる全米選手権を開催。全米ゴルフ協会もアダプティブゴルフをパラリンピック競技に組み込む働きかけを行っている。
障害者の希望の星、ウォルターズの功績は大きい。
なお、ウォルターズの結果は初日を「83」、2日目を「85」で回り、惜しくも最終日には進めなかった。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年7月23日号「バック9」より