「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

メーカーが売りたいものとプロが使いたいものは合致しない

GD 松山英樹がエースドライバーを破損して失った後、数年間放浪したじゃないですか。その間、「ダンロップ」は一所懸命、松山が納得するドライバーを作ることをしていましたが、なかなか納得するものできなかった。でも、できたら今度はずっとそれを使い続けて……。

長谷部 そうですね。松山プロは自分がやりたいことと欲しいものがほぼほぼ定まっているんだと思います。だから変えないし、変わらない。

でも、ビジネスで考えると3年も5年も使い続けられると「ダンロップ」としては美味しくないわけで、新しいモデルを使ってほしい。でも本人はそれ以上のものをいらないっていうふうに固まってしまうと、次はどうしようという難題が持ち上がってきます。

GD プレーヤーが求めているものとビジネスは結びつかない?

長谷部 ビジネスとしてのサイクルとプロの変えたいタイミング、もしくは使いたいタイミングはズレてくるので、ここをどう考えてマーケティングするかっていうことですよね。

GD そうすると、いろんな責任とか負担とかを考えると、クラブにこだわりが強いとすれば、いろいろなメーカーのモノから選んできて14本を組み上げる方が良いセッティングができる?

長谷部 有名な選手ほど各メーカーが無償で素早い対応をすると思うので、選びやすくなりますし、比較もしやすくなる。同じ条件の試合会場で打ち比べができ、今ではトラックマンで全部データも出るわけですから、その場で判断できるということになるので、選択肢が広がって、ベストのパフォーマンスのものをその時選べる方が結果的にいいのかなって気はしますね。

GD 結果を残す有名プロがそのような動きをすると、今後そういったプロが増えそうですね。

長谷部 最近よくあるのがキャディバッグはあるブランドだけど、中身は全然違う。

GD 使用するボールメーカーのキャディバッグを使っているケースはありますよね。

長谷部 ボールは消耗品ですし、提供されるメリットが大きいんじゃないですか。購入するとそれなりにコストかかってしまいますし、あらゆる面で安定して供給してもらえるっていうことは、プロのコスト面を考えてもかなりメリットがあると思うので、そこは外さない。

DPワールドツアー主催、JGTO共催で行われたISPS HANDA欧州・日本どっちが勝つかトーナメントに勝った桂川有人。現在、クラブ契約フリー。キャディバッグは使用するボールと同じ「スリクソン」。中身は「タイトリスト」を軸に構成されている。ドライバーはタイトリスト『GT3(10度)』、3W、5Wはタイトリスト『GT2』、4UTはスリクソン『ZX Mk Ⅱ』、5I、6Iはタイトリスト『T150』、7~PWがタイトリスト『T100』、ウェッジは『ボーケイ SM10』。写真はISPS優勝時

GD ボールを持っているメーカーが露出を考えると、帽子とキャディバックは良い広告効果がありますからね。

長谷部 クラブメーカーとして考えると、ドライバーカウントとか、ウェッジカウント、いわゆる調査データをどうマーケティングに使うかだけなんですけど、でもシェアナンバーワンがイコールアマチュアにとっていいクラブとは違うので、そこはどのようにその宣伝をするか、プロを使って宣伝をするかっていう戦略にすべてかかっているような気がしますね。

GD 今その考えからすると、シャフトメーカーと契約するプロっていないじゃないですかね。それは選択肢を残しておきたいと考えるんですかね?

長谷部 シャフトも万能ではないですし、シャフトメーカーなりの開発の癖っていうのもあるので、その時その時で好きなシャフトを使いたいんじゃないですかね。

GD シャフトメーカーとすると、有名選手と組んで製品アピールをしたいじゃないですか。そうすると契約したいということになると思うんですけど。以前、石川遼のキャディをグラファイトデザインの社員が勤めていたことがありました。

長谷部 そうですね。石川選手とグラファイトデザインとの関係性、契約がどうなっているか詳しくは知りませんけど、関係性が強いのは昔からですよね。それはちょっとした微調整をすぐに対応してくれるっていうスピード感や言ったことが伝わりやすいという信頼感だと思いますが、そういったことがプロにとっては安心感につながるんじゃないですかね。

GD シャフトに関してはツアーの現場からのフィードバックがすごく影響されているような気がします。

長谷部 バリエーションが増える背景には、プロのフィードバックが細かくあるのは間違いありません。ちょっと先調子っぽいのが欲しい、ちょっと重たいのがほしいし。そういったプロのリクエストに対して、結果的にバリエーションが広がっていくので、ツアープロのフィードバックは大切だと思います。

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PHOTO/Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa

※2024年7月22日17時08分、読者からの問い合わせにより、川﨑春花プロのキャプションに注釈を追記しました。

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