自分に合ったモデルが選びやすくなる
み:最近のドライバーは、スタンダードモデルのほかにドローバイアス、ロースピンを加えた3兄弟が当たり前。ピンの「G430シリーズ」は7兄弟、キャロウェイの「パラダイムAiスモークシリーズ」も基本の4兄弟のほかにツアーバージョンが追加され、6兄弟になりました。素朴な疑問なのですがメーカーが同じシリーズでたくさんの兄弟モデルをラインナップするのはなぜでしょう?
宮城:ヘッドの作り分けがかんたんにできるようになったことが大きいと思います。昔の鋳造技術だとどうしても肉厚になってしまうのでヘッドを軽く作ることができませんでした。重心を下げればスピンを減らせることはわかっていましたが、余剰重量がないため重心位置の調整が難しく、スピンを減らす方法はロフトを立てるか、シャフトを選ぶしかありませんでした。
み:手元に昔の「タイトリスト975D」のカタログがありますが、モデルとしては1種類で、そのかわりロフトバリエーションがやたらと多く、6.5度から11.5度まで6種類もあります。6.5度なんてフェースが絶壁にしか見えません。いったい誰が使うのか。
宮城:タイガー・ウッズが当時「タイトリスト975D」の6.5度を使っていましたね。ヘッドスピードが50m/sくらいある選手はそれくらいのロフトでないとスピンを抑えられなかったからです。
み:いまはそんなに立っているロフトは見なくなりました。ロフトバリエーションが減って、そのかわりにヘッドのタイプが増えたということでしょうか。
宮城:背景としてボールがロースピン化したこともありますが、製造技術が進化してヘッドを肉薄に作れるようになったことが大きいです。460ccでも十分な余剰重量を使って重心位置を設定し、打ち出しを上げながらスピン量をコントロールできるようになりました。スタンダードとスライサー用のドローバイアスタイプはけっこう前からありましたが、ロースピンタイプが増えてきたのは、ツアープロ用に作られていたプロトタイプが市販されるようになったからです。
み:昔は自分のヘッドスピードに応じてロフトを選ぶだけでしたが、モデル数が増えたことでどれを選べばいいかわかりにくい部分もあります。ゴルフメディア的には比較試打などで企画などを作りやすいのですが。
宮城:選択肢が増えるのは悪いことではありません。きちんと試打したりフィッティングを受けたりすれば自分に合うドライバーを手に入れることができます。スタンダードを打ってみて球がつかまらない人はドローバイアス、スピンが多すぎたらロースピンタイプといったようにチャート式のフィッティングができるのでショップとしても売りやすくなっています。
み:以前は日本メーカーでも体積違いとか、同じ460ccでも丸型と洋梨型だったり、たくさんのモデルから選ぶことができる時代がありました。
宮城:モデル数を増やせばメーカーにとっては売れ残りのリスクも増えます。多くのモデルを用意するのはピンやキャロウェイのように、たくさんのクラブが売れているようなメーカーだからできることです。海外メーカーの物量作戦によって日本のメーカーがさらに引き離されてしまうのではないかと危惧していますが、プロトタイプの限定品なら高額でも売れるので活路を見出せるかもしれません。