森本貴義
もりもとたかよし・73年京都府出身。アスレチックトレーナー、関西医療大学客員教授、PHPビジネスコーチ上級。約20年間、日米のプロ野球界で(オリックスやシアトルマリナーズなど)のトレーナーを務める。現在は宮里優作の専属トレーナーでもある。
「脱ぐ」ではなく「着る」を考えよう!
「夏の疲労の原因は、水分が失われることと紫外線に当たること。大きく分けてこの2つです」。こう語るのは、アスレチックトレーナーの森本貴義氏だ。
「気温が高いと水分は必然的に失われていく。また紫外線をたくさん浴びることにより疲労が大きくなることが最近のスポーツ医学で確認されています。紫外線は目から、そして皮膚からも吸収されます。なるべく皮膚に日光が当たらない状況にすることが大事です」
そこで、アンダーウェアの着用を考えたほうがいいと森本氏。タイツやアームカバーも皮膚を露出させないためには強い味方だ。
「今は昔に比べてかなり紫外線量が増えています。僕たちが子どもの頃は『日光浴』という言葉がありましたが、今そういう意味では日中5~10分、日にあたれば充分。それより日を浴びないほうの意識になったほうがいいんです」
女性はもちろん、若い男性も”美白ケア“をする時代。肌を焼きたいおじさまたちは要注意だ。
「皮膚がんのリスクもあるでしょうし、日に焼けると皺になる。その皺を目立たなくするためまた日に焼く、という悪循環になります」
また、アンダーウェアの機能が疲労軽減につながると森本氏。
「アンダーウェアは基本的にコンプレッションされています。これが疲労度を軽減することも確認されていて、脱いだ後に血流がよく回るというデータもある。また、普通のポロシャツなどよりは筋肉の出力が上がります。ですから軽装でゴルフするよりコンプレッションウェアを着けてゴルフをするほうが実は疲労の軽減になりますし、パフォーマンスもアップするんです。筋肉を締めているほうが筋力を測定したときにプラスに働く。普通のパンツとコンプレッションウェアを履かせてスクワットするのでは、後者のほうがいいデータが出るんです。たとえばジャンプ。ゴルフではスウィング中の地面反力と関係しますが、着用の有無でデータが違います」
野球選手は、夏場でも長いパンツの下にもタイツを履いたりアンダーウェアを着たりするという。
「野球ではここ10年くらいで着る人が増えました。イニングごとに着替えられることもある。もちろんゴルフもですが、今まであまり着用しなかったスポーツでもここ数年で増えました」
磁気の効果で疲労蓄積を軽減:コラントッテSPORTS PRO ウェアトップスロング&ウェアロングタイツ
医療機器として認証されている製品。スポーツにより疲労した筋肉を和らげるためリンパを含む体液や血液の流れをよくすることを目的とした磁石を配置。血流を促進することで血流内の老廃物を流し、疲労蓄積の軽減が期待できる。また背中部や大腿部などにパワーネットを使用。骨盤を安定させたり下半身のブレを減らし、筋肉の負荷を抑えパフォーマンス向上にもつなげる。
しかし、夏場はどうしても締め付けられることで、より暑く感じるイメージがある。
「確かに、ゴルフでは6時間くらい着替えられないこともある。ハーフで着替えることも考えつつ、ここ数年で、コンプレッションウェアにも体を冷やす冷感素材のものが各メーカーさんからたくさん出ています。夏場はそれを付けるとコンプレッションもされていて肌感覚も何度か下がるので快適でしょう」
もちろん、フィーリングは大事にしたほうがいいと森本氏。
「選手によっては汗をかいたじめじめ感が出る。それが嫌な人は無理に着なくてもいい。宮里(優作)がそうです。でも試したことはありますし、特に女子プロなんかはけっこう着ている選手も多い。プロは毎日ゴルフしますからかなり紫外線にさらされるんです。年間通しての紫外線を浴びる量は、1年間のパフォーマンスにはすごく関係してきます」
森本氏は、選手にアンダーウェアに関しても“指導”するという。
「ギアに関しても選手が問題を持っていれば指導するのと同じです。選手が抱えている問題はそれぞれなので一般化はできませんが、アンダーウェアも毎年リサーチして、いろいろなものを試し、いいと思ったものを紹介します。10年前はただの着圧着しかなかったのが、ここ数年は冷感素材はもちろん、マグネットが入っていて血流を促進するようなものがあったり、各メーカーさんがそれぞれ得意分野で考えたり、デザインのバリエーションも増えています。いろいろ試して、皆さんのニーズやフィーリングによっていいものを選べばいいんです」
選ぶ際に色は影響するのか?
「感覚的に黒は熱を吸収してより暑くなるというように思われていますが、黒でも冷感素材が使われていたりすると機能面では変わりません。色だけで選ばず、商品のメリットをしっかり見極めたほうがいいと思います。着用していると見た目もアスリートとしてカッコいいですし、トレンドに乗っていると思われますよ(笑)」
いずれにせよ、ギアと同じように積極的に相談するべきなのだ。
「絶対そうです。自分のパフォーマンスや日常生活を変える大きな要素になります。夏場の疲労感は、20~30%は違うと僕は考えています。熱中症も増えてきているので、今の時期は冷感素材のもの、なるべく皮膚を出さないようなものでゴルフを楽しんでもらえたらいいと思います」
韓国発! 肌に見えるアームウェア:ダロットゴルフストッキング
アームストッキング。右手の甲をカバーするグローブが付くタイプもある。冷感素材を使用してクーリング効果があり、夏の暑さでも快適に着用できる。肌色は紫外線94.9%カット(白&黒は紫外線99.9%カット)で、日焼けによる疲労も軽減される。ベージュ(肌色)に関しては男性でも着用できるL~LLがある。「SOUMA CLUB/ソムアクラブ」で購入可能。
PHOTO/Hiroaki Arihara、Shinji Osawa
※週刊ゴルフダイジェスト2024年7月30日号「夏ゴルフ疲労対策 タイツをはくのはもはや常識」より一部抜粋