松山英樹の21年マスターズ優勝をサポートした目澤秀憲に、レッスン技術に造詣が深いライターDが、最新スウィング理論について話を聞いていく連載「みんなのスウィング3.0」。最終回は「情報の重要性」について考えた。
画像: タイガーでさえ、加齢による身体能力の低下にはあらがえないが、ストックヤーデージ(各番手の飛距離)は、全盛期と比較しても意外と落ちていない。そのためのクラブ選びにもデータをフル活用している(PHOTO/Blue Sky Photos)

タイガーでさえ、加齢による身体能力の低下にはあらがえないが、ストックヤーデージ(各番手の飛距離)は、全盛期と比較しても意外と落ちていない。そのためのクラブ選びにもデータをフル活用している(PHOTO/Blue Sky Photos)

D この連載ではこれまで、弾道データをはじめとする「情報」の重要性について何度も話してきましたが、この傾向は今後ますます加速していきそうですね。

目澤 そうですね。だから、これからのコーチというのは、今まで以上にいろいろなことを知らないといけなくなると思います。

D もちろん、全部をひとりでやるのは大変ですし、その必要もないですから、コーチ分野の「分業化」も進むでしょうね。

目澤 それは間違いないです。たとえば、近々PGAツアーでは「ドライバー専門コーチ」が出てくるんじゃないかと思っています。

D これまでは、元プレーヤーがコーチになるケースが多かったですが、情報を扱う能力に長けていれば、自分自身がプロみたいな球を打てる必要はないわけで、そういう「ノンプレーヤーコーチ」が増えていくような気もします。サショ・マッケンジー博士(カナダ、聖フランシスコ・ザビエル大学教授。運動学の視点でスウィングを研究し、PGAツアープレーヤーのコーチやメーカーのアドバイザーなども務める)のような、「学者コーチ」も多くなってきましたし。

目澤 「ディケード」(プレーデータの分析から、スコアを縮めるために次の1打をどう打つべきか提示するシステム)を作った、スコット・フォーセットは、プロでうまくいかなくて、一度アマチュアに復帰したのち、チャンピオンズツアーでまたプロに戻った珍しい経歴の持ち主ですが、そのディケードを使う、ロバート・マッキンタイアが、今年PGAツアーで初優勝(欧州ツアーでの優勝経験あり)しました。スウィングのコーチではない、「戦略コーチ」のフォーセットがPGAツアーの優勝者を生み出したというのは、意外と大きな出来事だと思います。

D これまであまり一般的ではなかった手法を取り入れるというのは、勇気が要りますからね。

目澤 そうなんです。今もいろいろな人たちが様々な方向からゴルフを研究して、少しでもスウィングを良くしたりスコアを縮める方法を模索していますが、それをプレーヤーまで届けるハードルが意外に高い。

D 最終的に「信じるかどうかはあなた次第」みたいな選択を突き付ける状況が生まれてしまう。

目澤 まさにその通りです。だからコーチは、なぜこれが良いのか、きちんと説明できるようにしておかなくてはいけないんです。

D 逆に言うと、説明ができない、論理的なバックアップのない情報というのは、積極的に切り捨てていかなくてはいけない時代になってきている感じもしますね。

目澤 アマチュアゴルファーも含めて、手に入れられる情報の量が「過去イチ」多いのが現状ですが、その中の「良い情報」というのは、意外に少なかったりします。どうしたら、なるべく「良い情報」だけがゴルファーに届くかを考えるのも、これからのコーチの務めだと思いますので、これからもいろいろ勉強しながら活動してきたいです。

D ありがとうございました。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年8月6日号「みんなのスウィング3.0 最終回」より

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