1960年代から2000年代初頭まで、50年の長きに渡って躍動した杉原輝雄。小柄な体、ツアーでは最も飛ばない飛距離で、当時トーナメントの舞台としては最長の距離を誇る試合で勝ったこともある。2打目をいちばん先に打つのだが、そのフェアウェイウッドが他の選手のアイアンより正確だった。ジャンボ尾崎が唯一舌を巻いた選手で、「マムシの杉原」、「フェアウェイの運び屋」、「グリーンの魔術師」「ゴルフ界の首領(ドン)」と数々の異名をとったのも頷ける話だ。「小が大を喰う」杉原ゴルフ、その勝負哲学を、当時の「週刊ゴルフダイジェスト」トーナメント記者が聞いた、試合の折々に杉原が発した肉声を公開したい。現代にも通用する名箴言があると思う。
画像: アドレスに入るまでは5歩と決めている杉原輝雄

アドレスに入るまでは5歩と決めている杉原輝雄

アドレスに入るリズムは5歩

ーー「ティーグラウンドでアドレスに入るまでのリズムは5歩と決めてる。自分なりのルーティーンが大事や」

ティーグラウンドでアドレスまでの動作は、皆さんどうされてますか?

ラウンドではただスウィングして打つというだけでなく、“考える”ことが山のようにありますやろ。距離のジャッジ、風は? パットでのラインは? などの判断を短い時間で行わなければいけません。だから、いつも一定の行動(たとえばアドレスの入り方など)には、その場でいちいち考えんでもいいように、ルーティーン化しておいたほうがいいわけです。

ボクのティーグラウンドでのルーティーンをお話しておきましょう。

まず、ティーペグを刺したあとは、目標とボールを結んだ後方に一度戻り、そこへ立って攻略ルートを確認します。球筋をイメージして、ボールの落下地点を確認するんです。その際、ボールと目標を結んだライン上のボールの2~3メートル前に、ゴミでもなんでもいいですから、スパットを見つけておきます。

ティーの高さですが、チタンヘッド素材のドライバーはスピン回転が少ないんでやや高めにしてます。その高さはヘッドをソールして、ちょうどボールの“赤道”がヘッドの上辺にくるぐらいです。

そして後方から目標ラインを見ながら、アドレスに入りますが、その時の歩数はきっかり5歩でっせ。その歩数はどんな場合でも変わりません。

そしてアドレスするのですが、その時はもう目標から、先程見つけておいたスパットに目を向け、そこにヘッドをスクェアに合わせていくのです。その際、先にグリップをつくっておくほうがいいでしょう。アドレスに入ってからグリップをつくると、フェースの向きが変わってしまうことがあるので、要注意です。

ドローボールは球一個分内側に置く

ーー「ドローを打たないかんこともある。その時はボール一個分中央寄りに置いて、クローズスタンスや」

ボクの“持ち球”はフェードです。フェードなら5番ウッドなど、グリーンオンした時にミドルアイアン並みに止まってくれるのです。フェアウェイの運び屋との異名もそこからきてるんでしょう。

それがドローボールやと、着地してからランが多くて止まりづらくなります。だから、ドローボールが距離が出るといっても、“安全で切り札”にもなるフェードを持ち球にしているわけです。とはいっても、どうしてもドローボールを打たなならん状況も出てきます。ハザードが右サイドで、左サイドは広くなっていたりするところや、左ドッグでフェアウェイなりに打っていけばぐーんと有利になるところなど。

ドローボールを打つ体勢ですが、まずボールの位置を左足線上からボール1個分中央寄りにします。そしてスタンスは左足を心もち前に出したクローズスタンスです。そして左足の爪先は20度ほど開いておくのが肝心。左足をまっすぐに置くと、体重移動はスムーズにいかず、ドローボールというより引っかけになることもあるから、注意が必要です。

ティーアップはティーマークの右サイドにします。フェアウェイに右端のエッジを目標にして、ドローボールで左へ転がってもフェアウェイの左端には残るようなセッティングをすることが大事です。

グリップでは、方向性に狂いが出ないように、右人差し指と親指はゆるまないように握ります。かといって握りしめては逆効果。キャディさんからクラブを受け取るぐらいの強さで握って、ひとさし指と親指がつくるV字のすきまを埋める、それくらいの感覚で結構やね。V字が空いてるとシャフトがグリップの中で動いて、どこへ飛んでいくか分らない球筋になりかねません。あとはスタンスにそってテークバックしてやれば、弾道は少し低くなったドローボールが自然に出ます。

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