男子ゴルフ国内ツアー「Sansan KBCオーガスタトーナメント2024」(8月22~25日)で、今季LIVゴルフを主戦場にする30歳の香妻陣一朗が通算19アンダーでトップに並んだ小斉平優和とのプレーオフを制し、2年ぶりのツアー3勝目をつかんだ。香妻はサウジアラビア政府系ファンドが設立したLIVゴルフに初めてフル参戦した日本人プロ。優勝の瞬間を会場の福岡県糸島市・芥屋ゴルフ倶楽部で見守った父・尚樹さんにとっても、感慨深い優勝となった。
画像: シェフラーの右足使いを参考にして飛距離アップしたという香妻陣一朗(撮影/有原裕晶)

シェフラーの右足使いを参考にして飛距離アップしたという香妻陣一朗(撮影/有原裕晶)

崖っぷちからの来季"国内出場権"獲得

画像: Sansan KBCオーガスタトーナメント2024で小斉平優和とのプレーオフを制し、2年ぶりのツアー3勝目をつかんだ香妻(撮影/有原裕晶)

Sansan KBCオーガスタトーナメント2024で小斉平優和とのプレーオフを制し、2年ぶりのツアー3勝目をつかんだ香妻(撮影/有原裕晶)

香妻は25日の大会最終日、16番まで2位に4打差の単独首位だったが、17、18番で連続ボギーをたたき、連続バーディで上がった小斉平に並ばれた。決着は18番パー5を使用したプレーオフ2ホール目。ティーショットでOB連発した相手に対し、しっかりパーでまとめて勝ち切った。

コースでプレーを注視していた尚樹さんはハラハラしながらも、我が子の成長を感じ取った。

「最終ホールは2打差あったからパーでも優勝だった。なのにドライバーを持ったからね。『何で?』と思ったよ。でも、後で聞いたら最後はカッコよくバーディを取りたかったって。こんな強気のメンタリティも海外で養ったのかと頼もしく感じたよ」

崖っぷちに立たされながら最高の結果を出した。香妻は来季のLIVゴルフ出場権をつかむためには、実質残り1試合(最終戦は団体戦のため)で優勝か2位に入る必要がある。もちろんチャンスは残されているが、厳しい状況に変わりなく、来季の国内ツアーシード権は維持しておきたい。ただ、ここで高いハードルとなるのが出場義務試合数で、全日程の半分(今季は12試合)となっている。

今季の香妻はLIVゴルフが主戦場で、国内試合はこれが4試合目。今後も今週のフジサンケイクラシック、日本オープン、ダンロップフェニックスの3試合の出場予定で来季のシードを確定するには優勝しかない状況だった。

この苦境を見事に優勝で脱した息子だったが、尚樹さんは2日目のプレーを直に見て、確かな成長を感じ取っていた。そして自分の心の中でだけ密かに優勝を予言していた。

「本人は自分はレベルアップしているって言うんだけど、LIVゴルフの試合では30位とか40位にいるから、なかなか信じられないところもあった。でもね、金曜日(大会2日目)に見て分かった。芥屋でのプレーは何度も見ているから物差しがあるんだよね。で、前は越えられなかったバンカーを全然問題にしないくらいドライバーが飛んでいた。4番ホールはバンカーを越えたり越えなかったりというホールだったのに、はるかに飛んでいた。成長しているのは間違いない。これは今週いけるかもって思ったよ」

父を驚かせた世界のトップ選手たちとの"コミュ力"

画像: プロを目指した小学校時代の陣一朗。左は女子プロの琴乃、中央は父・尚樹さん

プロを目指した小学校時代の陣一朗。左は女子プロの琴乃、中央は父・尚樹さん

尚樹さんは7月末にスペインのアンダルシアで行われたLIVゴルフリーグを長女の女子プロゴルファー琴乃とともに観戦した。その際に息子がLIVゴルフの主力である元PGAツアーの猛者たちにすっかり溶け込んでいるところを目の当たりにし、息子の成長ぶりに驚いた。

「(ブルックス)ケプカと友達みたいでね。『お前飛ばないのに、何でトレーニングしないのか』と言われたんだって。彼らはシーズン中でも週5回やっているとかで、陣一郎も早速始めたみたい。この2年でLIVの選手と直接英語で会話できるコミュニケーション力を身につけたことも大きかったんじゃないかな」

交友関係はケプカだけにとどまらない。ケビン・ナに"秘密の"アプローチを伝授され、ブライソン・デシャンボーとも仲がいいという。

「もっとも自分は陣一朗にデシャンボーを紹介されたとき、誰だか分らなかったけどね。だってひげを生やしていたから分かりにくかったんだよ。でも、前からファンだった(セルヒオ)ガルシアとは『ビッグファンです』と言ってさ、肩を組んで写真を撮らせてもらったよ」

「シェフラードリル」で飛距離20Yアップ!

画像: "シェフラードリル"で体の開きがなくなり、飛距離が伸びたという香妻(撮影/有原裕晶)

"シェフラードリル"で体の開きがなくなり、飛距離が伸びたという香妻(撮影/有原裕晶)

香妻は元々研究熱心な選手だが、尚樹さんはLIVゴルフ参戦以後、一層熱心になったように感じ取っている。世界ランク1位のスコッティ・シェフラーの右足を引く独特のフォームを参考にしているのもそのひとつ。

「先日、息子と飲みながら話したとき、ちょっと飛ぶようになったんじゃないかと言ったら『310ヤードくらい。20ヤードくらい伸びたかな。シェフラーの右足の使い方をするようになったんだ。あれ、いいよ』って。右足を引くと体が開きにくいし、右肩が落ちることもないから、つかまりが良くなるそうなんだ。それを『シェフラードリル』って名づけたりして、頼もしいよね」

今回の優勝にはこの飛距離アップの努力が大きく貢献した。

香妻は今後、明日、開幕するフジサンケイクラシックに出場し、9月13日から米シカゴで行われるLIVゴルフ今季最後の個人戦に臨む。

「できれば最後の個人戦で来年のLIV出場権を決めてくれたらいいけど、こればかりは。でもね、次の試合もこれからも、やっぱり見る人たちを魅了できるゴルフをしてほしい。身長は高くないけど、これだけのゴルフができるんだっていうね、模範になるような選手になってくれたらいいね」

当面の目標はフジサンケイクラシック。香妻は尚樹さんの思いも胸に2週連続優勝がかかる舞台に立つ。

LIVゴルフ参戦の香妻陣一朗にインタビュー

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