「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

ウェッジを4度ピッチにする意味はあるのか

長谷部 アイアンのロフトが立ってきて、ピッチングのロフトが46度以下になってきてしまっている時代の流れの中で、 52度ではギャップウェッジとしても空きすぎてしまう。まして、その下のサンドウェッジと考えると、またさらに開いてしまうというところに、中間の4度ピッチ、偶数になりますけど「50、54」というのがきたように見ています。

ところが、「じゃあ、どう攻略するの?」となった時に、ロフトがまだちゃんと見極められてない、定まってないような気がします。

GD ここで迷走している人がけっこういると思うんですよ。ゴルフのクラブが数値化されることになって、ロフトに関しても数値で管理されるようになった。4度ピッチで組んでいけば等間隔で飛距離を打ち分けられるのか? と言ったら、実はそうじゃないというところがある。

長谷部 そうですね、理論上は成立しそうですが、ピッチングからサンドウェッジまでクラブの長さがそれほどに変わらないことと、ヘッドが大きくなる、重心位置が変わる、それとともにバウンスの当たり方がシビアになってくるので、バウンスが当たることによってロフトが立ってくるモノ、もしくは思ったように立たないというケースがあります。

そうなると、抜けの良さを求めるウェッジ、もしくはバウンスをしっかり当ててフルショットに対応できるウェッジとでは、ロフト表示が同じであっても、フルショット時の距離感は変わってきてしまう。

自分も長く52度のウェッジを使っていました。もう何十年も使っていました。そのクラブが最近、想定通りに飛ばなくなってきたので、新しいウェッジを探そうと思った時に、同じロフトでは足りないんじゃないかということに行き当たり、50度にロフトを新調しました。でも今度は、それでは飛び過ぎてしまうというジレンマに陥っていて、今相当悩んでいます、というのが実情です。

GD 数字が揃っている、番手が揃っている。そうすれば距離も揃っているような気がして、ゴルファーとしてはちょっと安心する。でも実際にコース行ってみると、「あれ?思った距離が出てない」っていうことがあります。

長谷部 自分の経験上の話になりますけど、プロは1つ1つのクラブを入れ替えるときに非常にシビアな試打を繰り返し、ソールのあたり方、スピン量、フェースの食いつき、その辺から距離感をちゃんと出していきます。

プロがミスをすることってあんまりないんですけど、アマチュアは豊富な練習、試打の機会がない中で、1本だけウェッジを入れ替えることをやってしまった時に起こるのが、距離が合わないことです。そういうことになると迷走する可能性があるので、そこは気をつけたいですね。

GD 人間のスウィングとは違い、機械が打ったらロフトが変われば飛距離が変わるのでしょうけど、人間が打つ場合は経験値によってロフト立てたりとか クラブ抜いたりとか、いろんなことやっている可能性があるわけですよね。

「50、54、58」よりは「52、58」の2本だった時の方が、なんとなくアプローチバリエーションとか、ゴルファーの感性というものが発揮されていたような感じがします。

長谷部 そうですね。同じ長さ、同じヘッド重量、同じバランスであったとしても、ソールの当たり方で飛び方が変わってきたりすることによって、なんとなく手加減してしまう、力加減が変わってしまうことあります。

同じロフトのモノで距離を打ち分けた方が、人間の感覚としては距離のコントロールがしやすいこともあると思います。52度で色々打ち分けられたのが、54度になったらさらに細かく打ち分けられるのかって言ったら決してそんなことはなくて、クラブを持ち変えた瞬間に、なんとなく人間の感性が変わってしまうことがあるとすると、選択肢が豊富になったため、自分のセッティングの中で選択肢が豊富になった結果、正確な距離が打てるのではなくて、逆に迷いを生じている可能性があります。

GD ピッチングのロフトが43度とか、そういったストロングロフトを使ってしまうと、「50、54、58」にしても、「52、58」にしても、もう1本ウェッジが必要になってくる。 「52、58」の人だったら、48度を入れればいいかもしれないけども、「50、54、58」だと、ピッチングと50度の間に隙間があるから、もう1本46度を入れる必要性が見えてきます。そうなってくると、ウェッジのロフトピッチ3度、4度を果たして使い分けられるものなのか、という新たな疑問が生じてきます。

長谷部 あんまり4度ピッチということにこだわりすぎないで、今までの6度差まではなんとか打ちこなしていたこともあるとすると、「アイアンのロフトが立ってしまったから、じゃあウェッジを増やさなきゃ」ということではないと思います。

ウェッジすべてを総取り換えして入れ替えたとしても、個人差はあるとは思いますけど、それで正確な距離が打てる、もしくはいつも行くコースの残り距離にちゃんとアジャストすることができるのか、非常に難しくなってくるところがあるので、そこは冷静に見なければいけません。

残り100ヤード。ゴルフ場では目印となる杭を見たり、スプリンクラーヘッドに記された距離で判断することが多いと思うんですが、染みついている100ヤードの感覚があるはずです。

100ヤード前後をどのクラブで打っていくのかっていうのも、アマチュアのウェッジ選びの中でとても重要な気がしていて、50ヤードとか60ヤードの距離を正確に測って練習する機会ってないと思うので、そういった意味では、100ヤードを何で打って、その以下をどうやって打っていくか。ここも冷静に見てロフト設定を考えた方がいいのかなと思います。

GD 100ヤードは、ゴルフゲームの1つの基準、「へそ」であるっていうように言われています。そこがウェッジ選びの基準点になる?

長谷部 そうですね。残り距離から逆算して、フルショットで気持ちよく打てるクラブを選ぶというのが最適な解決策だと思うんですけど、そうもいかないのが実情だとは思うので、その中で自分がわかりやすい、練習しやすい距離感と距離をベースに、それが50度なのか52度なのかというのを定めておくことが重要で、あとは60度なのか58度なのか、その間のロフト差が極端に8度空いたとしても、52度とか50度で打ち分けられるんだったら、それでもいいんじゃないのかなっていう気はしますね。

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