「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

「54度」がアプローチを複雑化させている?

GD ウェッジって、「何ヤード飛ぶか?」という飛距離が1つの基準にはなると思うし、他の番手よりも求められている数字が細かかったりするから、どういう組み合わせにするのかという話になると思うんですけど、PGAツアーの選手が「52、56、60」を採用するのは、グリーン周りすべてのアプローチに対応できるというと考え方があります。

ショットとしてのウェッジと、アプローチとしてのウェッジ、使い方が2種類あると。2つの場面でどう使えるかというのが、最終的にはウェッジ選びの根本になってくるのかなってと思うんですけど。

長谷部 そうですね。グリーン周りで複雑なシーンが日本ではそれほどないとしても、ラフからのアプローチではバウンスの少ない60度だとザックリしそうだから56度使うというのが正解だと思いますし、そういったショットシーンが具体的にそんなに回数が多くなかったとしても56度をセッティングする意味はあると思います。

距離の違いを正確に刻もうとしてロフト選びをするのは、ちょっと間違いないような気がしていて、54度を仮に選んだとしても、この54度はこういうシーンで使えるから入れたんだということが明確であれば、それはそれでいいと思います。

GD 明確にするということになると、「52、58」だと52度はちょっと足を使いたいアプローチで使います、58度は止めたい時に使います、使い方が明確に分かれています。

でも、「50、54、58」だと50度は足を使います、58度は止めたい時となると、54度は足も使えるけど、止めることもできる。両方の機能があるので、54度の使い方って、結局アプローチのバリエーションを増やしているんだけど、複雑化させていますね。

長谷部 現場で迷いを生じさせることってあまり良くないと思うので、クラブを握った瞬間にどういう打ち方をするか自動的に決まっている方がアマチュアには楽だと思います。

これしかできないという打ち方を持っている方が強いと思うんですけど、54度でバンカーを打つと飛びすぎてしまうことがあると思うので、バンカーには常に使用できない。バンカーは58度になるっていうことを考えたら、54度って使い勝手を考えたら結構難しくないですか? っていう話にはなります。

GD 一見、「50、54、58」って使い勝手が良さそうですが、いざ使おうととしたら使えるシーンが限定されてしまう。

長谷部 ただ、ここ数年のウェッジの出荷量、販売数で言うと、54度がまずまず売れています。

GD そうなんですか。

長谷部 ウェッジを新調するときの1つの取っかかりとして、「今度54度入れてみて、アイアン立ってきたから50度にしてみよう」とチャレンジをしている人が非常に多いのかなというように思います。

その結果が今どうなっているか、正解はなかなか見えないんですけど、いずれこの辺のロフトが精査されていくことは考えられるかなと思います。

GD 「52、58」、「52、56」でやっていた人がうまくいかないから、「50、54、58」にしてみたら、何か違う世界が生まれるんじゃないかっていうようにも考えられる。

長谷部 そうですね。だから自分の場合を言えば52度が飛ばなくなったので、50度入れてみようと思って入れましたけど、全然使い勝手がわからなくて、諦めつつあります。

そういった意味ではちょっと過渡期には来ているんだと思いますね。ロフトが立ってきたアイアンのおかげで隙間が空いちゃった、だから不安になる。

そんな細かい打ち分けできないよというアマチュアが、「4度ピッチでとりあえずセットしたら綺麗に行けそうだな」という理想はあると思います。

ただ、ウェッジの特性上、何種類の打ち方もできてしまうことが器用貧乏じゃないですけどあり得るので、最近 出てきている丸くないアイアン形状のウェッジがもしかしたらニーズとして出てくる可能性はありますよね。

GD この議論ってピッチングのロフトありきの話になっていると思うですけど、使い勝手からすると、「52、56、60」というのが明確なのかなって思ってしまいます。56度って54度に比べたらバンカーで打ちやすいとか、アプローチの基準クラブにもなる。でも、54度はアプローチの基準クラブにはまだなってない。60度は明確にロブショットっていうものがある。

そうすると、立っているロフトを使っているんだったら、52度の上に48度ないし46度を入れてウェッジ4本になってしまうけども、もうその方が使い勝手とすると、いいような気がしてきました。

長谷部 60度ってどうしてもアマチュアの中には難しいイメージがついてしまっているんですけど、実は球を上げやすいし、意識せずにロブショットっぽい止まる球が打てるので、結構おすすめではあるんですよね。

GD 日本のゴルフのシチュエーションだと60度って本当にいるのかって言ったら58度で十分だよねってなるから、現実的な世界で言ったら「52、58」がやっぱり正解なのかなって思ってしまいますけどね。ピッチングとの間が空いていたら、第2のギャップウェッジを入れて、「48、52、58」というのがアマチュアにとっては正解なのかな?

長谷部 そうだと思います。自分のPWから58度までの距離感を大切に、ロフトを選びたいですね。

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