ヘッドを走らせながら左右ブレが抑えられる
シャフトのスペシャリスト2人が分析

「4plus」のチーフフィッター・吉川仁氏(左)と、ひとりひとりの最適解を導き出すプロフィッター・澤田嘉之氏(右)がダブル解説
シャフトの目利き2人は「ねじれ剛性」について話す。
「大慣性モーメントヘッドで球が散らばらないようにするためにシャフトを硬くすると “しなり”が生かせず飛ばせません。しかし、最新のカスタムシャフトはねじれ剛性(トルク)をコントロールして、打点ミスをしたときのねじれ=ブレを抑えています。タイトリストのドライバー『GT』シリーズがカスタムシャフトだけにしたのは、そういう背景があるかもしれません」(吉川)
「ここ10年くらいで、カーボンシートが著しく進化しているし、製法も向上しています。それによって、今年のトレンドと言える“しなるけどねじれない”というシャフトが作れるようになりました。大慣性モーメントヘッドの強みであるブレにくさを最大限に生かしながら、ヘッドを走らせて飛ばせるでしょう」(澤田)
ねじれ剛性(トルク)とは?
シャフトのねじれにくさの指標。ねじれ剛性が高い(小トルク)=ねじれにくい、ねじれ剛性が低い(大トルク)=ねじれやすい。
先端のねじれ剛性が低いと芯を外せばフェースが動く
シャフト先端のねじれ剛性が低いとトウダウンの量が増えやすく、打点がトウ側にズレる。するとシャフトが当たり負けて、大慣性モーメントヘッドでもフェースが開いてしまう。

ヘッドのトウ側にボールが当たると当たり負けしてフェースが開く(ギアーズで解析)
最新シャフトは「ねじれ剛性」が高いから飛んで曲がらない
今までは「しなり」と「ねじれ」が比例していたが、今は「しなるけどねじれにくい」が可能になった。
▼従来のシャフト
大MOIヘッドで球が散る>フレックスを硬くする>シャフトがしならない>球は安定するが飛距離が落ちる
▼2024年のシャフト
大MOIヘッドで球が散る>最新シャフトに替える>しなるのにねじれ剛性が高く暴れない>飛距離キープで弾道が安定する

いまどきのシャフトは先端のねじれ剛性が高い!
先端のねじれ剛性が低いとトウ側に打点がズレやすくなる
同ブランドでも、最新モデルと従来モデルの「ねじれ剛性」を調べると、最新モデルは特に先端剛性が高く、ブレにくさが証明された。
※ねじれ剛性は3.0以下が剛性が高い(剛性が高い=トルクが小さい)
スペシャリストに計測してもらったのは3項目
①ねじれ剛性
この企画のために米国から調達してもらったトルク計測器で、シャフトの「全体」と「中~先」のトルクを測った。
②4点剛性
「4plus」独自ののノウハウとマシンによって、シャフトの先端側から4カ所にわたり剛性値をはじき出した。
③振動数
シャフトの硬さ(とくに手元側)の目安となる振動数も計測。数値が大きいほど硬い、数値が小さいほど軟らかい。

写真上が「ねじれ剛性」、写真左下が「4点剛性」、写真右下が「振動数」を計測している様子
ツアーAD・GCとDIで比較
先のトルクが絞られた新時代のスタンダード「ツアーAD GC」

ツアーAD GCの計測結果
シャフト全体のトルクは程よくあるが、中~先にかけてはトルクが絞られている。打点ミスをしてもねじれにくい。
全体の剛性を上げて当たり負けを抑えた「ツアーAD DI」

ツアーAD DIの計測結果
4点剛性の数値だと先端は硬め。だが先端のトルクに関してはそれほど高めておらず、全体的にトルク・剛性を高めている。
スピーダーNX・バイオレットとブラックで比較
スピーダー史上もっとも高剛性の“紫”「スピーダーNX・バイオレット」

スピーダーNX バイオレットの計測結果
トルク、4点剛性ともブラックと明らかに違う剛性具合。全体のトルクはツアーAD以上の小ささ!
“一発”のポテンシャルを備えるカスタム「スピーダーNX・ブラック」

スピーダーNX バイオレットの計測結果
トルクが大きめで振動数が少なめ。「スピーダー」らしく、動きを生かして飛ばせる。
ツアーADおよびスピーダーのどちらも最新シャフトのほうが先端から250mmまでの先端剛性が高くなっている。この計測からもねじれに強いシャフトになっているといえる。
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取材・文/新井田聡
写真/野村知也、森 浩輔
撮影協力/4plus
※月刊ゴルフダイジェスト2024年11月号 「2024年シャフト徹底解剖図巻」より一部抜粋