――2年に⼀度開催される世界選抜 vs アメリカ代表のチーム対抗戦・プレジデンツカップ。世界選抜は松山英樹をはじめ、アダム・スコットやミンウー・リーなど、ベテランと若手がバランス良く混成されている。対するアメリカ代表は、世界ランク1位のスコッティ・シェフラー、2位のザンダー・シャウフェレほか、昨年のZOZOチャンピオンシップに勝ったコリン・モリカワなど豪華そのもの! まさにゴルフのオールスター戦といっても過⾔ではない。
杉澤: 選⼿からみたらプレジデンツカップってどういう位置付けなんでしょう?
丸山: やっぱり代表に選ばれるっていうのはひとつのステータスだよね。アメリカの大統領だったり、開催地の大統領に会えるっていうのはなかなか経験できないことじゃん。そのなかで、この大会に選ばれるっていうのは特別視されるわけですよ。いうならオールスターってことだから。
杉澤: そんなところで松山選手は世界選抜にトップで選ばれるという……。すごいことですよね。前回、丸山さんが副キャプテンとして参加した2013年は松山くんはルーキー的なポジションだったと思うんですけど、今回はチームのトップじゃないですか。この違いは丸山さんからみてどうなんですか?
丸山: いやぁ、しかし十数年、ずっと代表にいるっていうのがそもそも……、ねえ?(笑) この世界って歳を重ねていくほど上手くいかなくなっていく人も多いわけで、この年でまた最高地点に到達してトップで臨むっていうのは彼としても、もちろん違う思いがあると思うね。いまは自分が調子よければ全員木っ端みじんにできるわけで、自信を持ってると思う。そこは大きな違いがあるんじゃないかな。
――ここまで世界選抜は1998年に勝利したのみで苦杯をなめつづけているが、唯⼀勝利した1998年大会で個人5連勝し、勝利の立役者となったのが、何を隠そう丸⼭茂樹プロである。プレジデンツカップで勝つためには何が必要なのだろうか。
杉澤: まず大きく見るとチーム戦じゃないですか。普段は個人で戦ってる中で、ここは選手から見てどうなんですか?
丸山: 自分が98年にプレーした時なんかはグレッグ・ノーマン、ニック・プライスのようなプレーヤーズキャプテンみたいな存在がいて、この人たちが選手の士気を高めるのが上手だったんだよね。もう放送できないようなことをガンガンいうわけですよ(笑)。平和主義で入っていった僕としては「これはちょっと違うぞ」と。勝ちに行くエネルギーが全然違うのが⼀番最初の印象だったかな。実は今回もWhatsApp(世界で使⽤されているメッセンジャーアプリ)でグループがあるんですよ。これがまあまあね……、みんなすごいね(笑)
杉澤: すごく見たい(笑) ちなみに主に誰が発言するんですか?
丸山: もちろんキャプテンのマイク・ウィアーが主で、副キャプテンのアーニー・エルスが入ったり、カミロ・ビジェガスが送ってきたり。
杉澤: カミロ、言いそうだな、なんか(笑)
丸山: けっこうここに食いついて若手のミンウー・リーとかトム・キムとかが面白いことを言ってきたり(笑)
杉澤: じゃあ、すでにチームワークみたいなものはできてるんですね。
丸山: できてると思う!
――試合方式は最終日以外はダブルス、最終日はシングルスで、すべてマッチプレー方式なのもこの大会の特徴だ。
杉澤: マッチプレーの見どころってどういうところなんですか?
丸山: まず選手同士の駆け引きがあるね。微妙な距離でオッケー出さなかったりとか、急に「これオッケーなの?」みたいなので安心させたりとか、そういうのはある。あとマッチプレーはそのホールでいくつ叩いても関係ないわけだから、普段と入れ込み方が違うよね。このパットやアプローチが勝負を決めるってなったら狙っていくし、そういう勢いみたいなものを押さえたり、出したりっていうディフェンス・オフェンス能力がストロークプレーよりあからさまに出る。相手が調子悪そうだったらあんまり無理していかないでパー狙いとかね。
杉澤: なるほど! 相手の調子も伺うんですね。
――実は丸山自身もあのタイガー・ウッズに手玉に取られたことがあるとのこと。
丸山: 1998年とか、ボクはたまたま何回かタイガーに勝ってたんだよね。彼ってボクと相性があんまり良くなくて、ボクと⼀緒に回るとタイガーの調子が悪い時が多かった。そういうのを踏まえてタイガーは全部ティーショットをボクの後ろに置いてきたんだよね。それで、先に全部セカンドをビタッと寄せてきてボクにプレッシャーをかけてきた。本人が僕に勝ったあとにインタビューで言っていて。
杉澤: めちゃくちゃすごい話ですね。なんか車のアレみたいですね……アレ。
丸山: テールトゥノーズね!
杉澤: すみません、カタカナ弱くて(笑) 今回もそういうことはあり得る?
丸山: 選手にはよるけど、そんなに普段と変わんないよっていう選手がほとんどだとは思う。ただ、みんな相性はあると思う。「あいつと回ると良くないんだよ」みたいなのは絶対あるから、こういう大会だとそういうのが顕著に現れたりもするよね。英樹は「ウインダム・クラークは僕と回るとめちゃくちゃ調子が悪いんですよ」と言っていた。実際、パリ五輪も英樹と一緒だった初日・2日目はそれほど良くなかったけど、解放されてからグーンと良くなったからね。(※編集部注:3日目、4日目と「65」を記録)
――今回丸山は副キャプテンとして参戦するわけだが、どんなアドバイスをする予定なのだろうか。
杉澤: オリンピックの時はルール上、試合中はアドバイスできなかったじゃないですか? 今回はルール上問題ないということで、例えば「相手の調子が悪そう」とか気づいたら、どんなアドバイスをするんですか?
丸山: う~ん、まず早藤将太から攻めてみる。
杉澤: なるほど!松山くんに直接言うんじゃなくてキャディから。
丸山: 将太がどういうふうに思うかだよね。「相手調子、悪そうじゃない?」みたいな感じでいろいろ探ってみたりとかはあるかな。ただ今回はクラブチョイスのアドバイスが多いと思う。先回りしてパー3を他の選手がどのクラブで打ったかの情報を渡すとか。そういうのは先手先手で動いてあげたい。他にも風の状態とか、ボクらカートを持ってるから、サッと行って情報を将太に渡すとかはあるよね。
杉澤: 丸山さんってそういうのすごく気を遣いますよね。松山くんとかは専属コーチもいるわけじゃないですか。オリンピックの時とか、そういう空気感を壊さないように風のようにアドバイスを流してくれるというか……。
丸山: そう?(笑) でも、案外気付かない盲点になってる部分とか、なにかのときにポツンと出せたらいいなって思ってる。パッと空気がとまったときポツンと出す言葉って大事じゃない?
杉澤: 僕ほとんど外しますね。
丸山: (笑)。 でも杉ちゃんはその外しが面白いんだよね。いい空間をつくるところに居てくれてるんだと思うよ。
杉澤: 褒められたて良かったです(笑)。丸山さんはそういう空気をつくるコーチングをしていくということですね。
丸山: ちょっとずつ盛り上げられればいいね。
松山英樹擁する世界選抜がアメリカ代表に挑む、2年に⼀度の祭典・プレジデンツカップ。丸山茂樹副キャプテンの動きにも注目しつつ応援してみてはいかがだろうか!
U-NEXT /今井敬太