プロはプラス40ヤードを達成したのに、アマチュアの飛距離は伸びない
GD 一般的にクラブは進化しているのに、スコアが良くならないのはなぜ? って思っているゴルファーが多いと思うんですけど、クラブは本当に進化しているのでしょうか?
長谷部 進化しているかどうかを問われれば、「進化しています」というのが答えになります。ドライバーの飛距離アップは、もう何十年も前から新製品が出るたびに言われ続けていて、そんなことを言っていたら「今頃300ヤード飛んでいるよ」、という笑い話になるのですが、ゴルフクラブの場合、理論上の話が多くなります。そのため、「インパクトの最適化や、ヘッドスピードが上がります、曲がらないクラブです」、いろんなロジックで新製品が出るので、その都度、前のモデルよりはよく出来ていることが多々あります。
そういった意味で進化は止まっていません。でも行ったり来たりしますよね。ヘッドの大きさ、シャフトが長くなったり短くなったり、ルールで制限されたりしたことを経て、最適化がどんどん進んでいるということも含めて進化はしていますが、その恩恵を得られているかどうか。飛距離に関しては、飛んでいる人もいればそれほど飛んでいない人もいる。
ここの問題は何かというと、最適なモノが選べていない可能性があるのと、新製品の選び方を間違えているというか選んではいけない人が買ってしまっていることも多々あるでしょう。モノの進化とか変化とか、その人の技量、結果が必ずしもシンクロしてないというところが、期待される飛距離アップやスコアが良くならない1つの理由になってないかなと思います。
GD ドライバーの飛距離から話をすると、男子プロの飛距離が260ヤードの時代がありました。女子プロで210ヤード。チタンのフルスペックになってから、プラス40ヤードと言われるようになって、結果的には男子300ヤード、女子250ヤードが現実的に起こっています。でも、アマチュアは一向に200ヤードそこそこという人がいる中で、プロと同じように40ヤード近く飛距離を伸ばしている人もいます。この違いは何って?って思っていると思うんですよね。
長谷 それはトレーニングをしっかりやって筋力を維持している、トップアマやプロゴルファーにとってみれば、クラブの長尺化、軽量化はヘッドスピードアップに繋がっているので、間違いなく恩恵を受けていると思います。
だけど一般のアマチュアはそれほどトレーニングせずにやっているとしたら、軽いクラブを振り回してスピードが上がっていた時期があったとしても、半年後には軽さに慣れてしまうので、軽量化の恩恵というのは、ある一定の時期まででしか効果がない。
これは体育の専門家も言っていた話ですが、個人の体力アップ意識とかスキルの維持の仕方によっては、プロゴルファーのように毎年距離上がっていますということにはならないんじゃないかなと思います。
GD 技術とクラブの進化がシンクロしていないと飛距離アップにつながらない?
長谷 筋力によって考えてみれば、マスコットバットのような重いものを振り回して、去年よりも今年のほうが筋力が上がっている、もしくは維持されていることが前提ならば、軽量クラブの効果は得られると思うんですけど、年齢を重ねることで体力が落ちている人が一般のアマチュアでは多いし、普通の40代、50代は体力が下降線をたどっていて、本人の自覚のないままに体力落ちているケースがある。
そういった時に、ある時ヘッドスピードが落ちていることに気づいて、軽量クラブに手を出す。でも、筋力アップをする努力をし続けなければ、また体力が落ちてきて、軽量クラブ、さらに軽量クラブと続けていくしかなくなるんじゃないかと思います。
GD 体力の維持とクラブの進化は重ならないように思うわけですよ。クラブそのものの性能が上がっていれば、クラブを振る側の技量、体力を加味しても、「クラブのおかげだよね」ということを、体感するようなことがあってもいいような気がします。
長谷 それが一番わかりやすかったのが「高反発」。反発性能が毎年上がっていた時期が1990年代後半から2000年前半までありました、反発規制が入るまでは。 初速が上がっていたので、新製品で20ヤード飛んだっていう話もあるぐらい飛距離アップしました。
ただ、あくまでも反発性能が上がっているという明確な理由によって距離が伸びていたと思うんですけど、最近は初速制限があるので、進化はしているけれども20数年前のような劇的な進化までは及ばないんじゃないのかなって気がします。
GD 高反発の次に来たのが「弾道の安定」でした。一発の飛びよりも平均飛距離をアップさせたほうが良いという考え方でしたが、どうも納得に欠けるものもがありました。打球は暴れるけど一発の飛びがあるジャジャ馬的なドライバーのほうが魅力があって、安定性を高めることが進化だと言うメーカーの提案に疑問を持っていたことがあります。
長谷 安定性を求めると必然的に一発の飛びがなくなるというのは、メーカーが常に迷っているところですよね。「今回のモデルは平均飛距離です」と言ったら、「なんか飛ばないな」って言われてしまうジレンマがある。
アマチュアは打点がバラつくってことを前提に考えればそれがいいはずなのに、店頭での測定器が普及してしまった結果、一発の飛びを求めるアマチュアが非常に多い。そこで起きているのがモデルやスペックのミスマッチ、選び方の間違いが起きているような気がします。
求めている理想のクラブ像と本人の技量のミスマッチもあると思います。結論から言うとプライドや思い込みがない人のほうがここ数年のクラブの進化の恩恵を得られると思います
GD プライドって?
長谷 「自分はこれだけ飛ぶはずだ」というような勝手な解釈とか目標があったりすると、「このクラブならあなたの打点のバラつきにも対応しますよ」っておすすめされたとしても、やっぱり1番飛ぶクラブを選んでしまう。
その代わりバラつきも大きい。コースに出たら14回ドライバー打ったとしても1回しか飛ばないことになってしまうことが多くて、あのクラブ飛ばなかったなっていう結論になることがあると思います。