アマチュアのスペックが高止まりしている?
GD 練習場にいて、数十年前の光景を頭に思い浮かべると、今のほうがドライバーも飛んでいるような気がします。昔のほうがもっと散らかっていた。今でも散らかってはいるけど、良い音をさせて飛ばしているような気がします。それってある意味、クラブの進化の恩恵だと思うんですよ。
360グラムあったドライバーが300グラムになったおかげで、「明治の大砲」が消えたと言われるのもクラブの進化であって、ヘッドが大きくなったことで、当たるようになった。でも結果としてプロのように40ヤードプラスには結びついていない。これってなんなのかな? って不思議なんですよね。
やさしくなったのも確かだし、飛距離性能も上がっているのもわかる。だけど現実として弾道に現れているかといったら、現れている人もいるけど、現れない人もいます。
長谷 プロのクラブ進化による飛距離アップは、芯で当てられるか当てられないかの技術の差になってしまうのでしょうけど、パーシモン時代に比べればアマチュアでも十分飛距離アップしていると思います。クラブの軽量化によってオーバースウィングが減ったり、カット打ちが減ったり、長い目で見ればスウィングに影響を与えるぐらいクラブは進化しています。しかし、それは長いクラブに関してで、短いクラブは相変わらずスチールシャフトを使っていたとしたら、短いモノのスペックはそんなに変わってない。14本の組み合わせとか使い方によってはスコアも変わってきます。
ちょっと話がずれちゃうかもしれないですけど、最近、片山晋呉プロが7番のユーティリティを入れたという情報がありますね。5番ウッド、7番ウッドを多用していた彼は他のプロと比べてパワー不足を認識しているから、ショートウッドを使って勝ち続けた。50歳をすぎてもう高い球が打てない、自分に合うものをちゃんと選んでパワー的なデメリットを解消している。アマチュアも本来そこに目を向けるべきで、自分の技量不足とパワー不足をどうクラブで補うかという視点に立った時のクラブ選びをちゃんとすれば、進化したクラブの中で、もう少し何か結果が出せるんじゃないかなと思いますけどね。
GD スペック的に言ったら、プライド高い人ほどオーバースペックを使っている傾向はありますよね。
長谷 そうですね。「6S」にこだわっていた人が、実は 50グラムのSRが最適ということもあるし、スチールシャフトにこだわり続ける必要が本当にあるのかっていうことです。レディスクラブを打ってみたら、めちゃめちゃ振りやすい。それがあなたの振れる限界なんですよとなった時に、受け入れられるかどうかだと思うんです。
男性シニアがクラブを軽くしたいなと思っても、レディスクラブには手を出さないのはメーカー側の問題もあるかもしれませんけど、素直にそういったスペックを選べる、プライドを捨てていけば、まだまだやれんじゃないのっていう気がします。
GD レディスペックにはちょっと抵抗はあるけども、手は出しませんよね。
長谷 デザイン的にもね。
GD クラブの専門家からすれば、レディスクラブのメリットってやっぱあるわけですか?
長谷 めちゃめちゃあるでしょうね。シャフトをしならせることができるメリットと軽さは一般のアマチュアにとってみれば振りやすい。よくクラブの重さがスウィングを安定させるって言われることがあるので、一概に軽いレディスクラブを手放しに肯定はできないんですけど、速く振る、飛ばすことに関しては軽いほうがいいと思います。
タイガー・ウッズとあなたのパワーの差を考えた時の重量差ってどれぐらいですか? ドライバーのスペック、何グラム違いますか? アイアンのスペックの差はどれだけありますか? となった時、あまり差がなかったりする。そう考えた時、あれだけのパワーのある人と同じような重さのモノを使っている。「自分のパワーだったら、もうちょっと軽くしたほうがいいのかなっ?」て、幅を広げて考えることが必要だと思うんですよ。
GD 昔は選択肢が少ないからプロとアマチュアのクラブって近いところにあったかもしれない。でも今は選択肢が増えて、重いスペックもあるけど、軽いスペックはグッっと広がっています。ということは、アマチュアのスペックが高止まりしているということですか?
長谷 そうですね。以前別の機会で40グラムがこれから主流になりますよって言ったことがあります。まだシャフトメーカーがそこの開発に注力してない問題があると提言させてもらったんですけど、本来ならば60グラムにプロが落ちてきているんだったら、50グラムじゃなくて40グラムでしょうって言いたいんですよ。
昔プロが80グラムを使った時はアマチュア60グラムでした。20グラム差があったぐらい大きくスライドしていかないと。今の50代とか60代のゴルファーは気持ちよく振れないんじゃないのって思うんですよね。それぐらい思い切った軽量化を考えて、ヘッドスピードを上げるのか、ちゃんとトレーニング、もしくはスウィングを練習して今の体力を維持する。どちらかしかないんじゃないかなと思います。
GD クラブの進化で恩恵を受けている人は、どちらかというと上手い人。上手い人の定義をすれば、球をクラブの芯でとらえるのが上手い人。そういう人がクラブの恩恵を受けていますよね。これはクラブの設計通りに球を打っているからということ?
長谷 設計通りって言ったらちょっと語弊があるのかもしれないですけど、最高の条件で打っているということですよね。アマチュア用に芯の広いものもたくさんあるはずなんですけど、新製品進化の理論が数年で変わっていて、慣性モーメント重視といってみたり、フェースの反発安定化みたいなところで行ったり来たりして定まってないので、その都度アマチュアは翻弄されて 芯を外すアマチュアは慣性モーメントに行ったほうがいい、フェースの反発の安定性に行ったほうがいい。一体どっちなんだいってことになっています。
スウィングの安定をさせるにはある程度のクラブの重さも必要、重いヘッドが有効だって言われると、一般のアマチュアには混乱してしまいます。
GD 女子プロのレベルが上がっている要因のひとつに、男子プロよりも女子プロのほうが芯で球を打つのが上手いと言われています。そこにクラブの恩恵が繋がっていくのかなと思うのですが。
長谷 女子の平均飛距離が上がっているのはまた別の要素もあると思うんですけど。でも、女子の中でもクラブの選択肢が増えてきているからパワーのある人もない人も、クラブのパフォーマンスを最大限引き出しているような気がしますね。プロのフェースを見ると打痕が1点に集中していることからもわかるように、クラブのパフォーマンスを引き出すためには、打点の安定は間違いなく影響すると思います。
GD 一時女子プロがなんで飛ぶのかって言ったらワンタッチ(ボールの手前にソールが触れる)しているからと言われました。アッパー打法が流行ったことがありますが、実はそうじゃない?
長谷 そうじゃないと思います。ワンタッチの理由は、当時は重いクラブしかなかったり、重いヘッドしかなくて、それを無理やり使っていた。あとスウィング理論として、アッパー軌道が体力的に理論として多かったと思うんですけど、今はトレーニングもしているし、ましてや筋肉がついていると言ったら失礼ですけど、肩周りの筋肉がちゃんとついてくる若い選手も多いので、今の飛距離アップを考えると、柔軟性だけじゃないパワーがトップ選手にはついていると思います。