「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

クラブの進化だけではスコアアップにつながらない

GD ここまでの話だと上手い人がクラブの恩恵を受けていることも、一般アマチュアのクラブ選びが間違っているっていうのもわかりました。しかし、クラブそのものがこれだけ進化していることが目に見えてわかるのに自分のゴルフが変わらない。実は変わっているのに気が付いていないということなんですかね?

長谷 勘違いが多いんだと思うんですよ。自分も年齢とともに体力をしているし、技量も落ちているにも関わらず、昔のクラブを10年間使い続けた時期がありました。

これも勘違いですよね。本当は変えたほうがいいのに、これがいいんだと思って使い続けている。アマチュアの場合、検証する機会がラウンドだとすれば、月1回コースに行けているアマチュアがどれだけいますか? って言った時に、そう多くないと思います。

でも、ゴルフ市場を支えているのは月1ゴルファーじゃなく、もっと回数の少ないアマチュアが悩みに悩んでゴルフショップに行って相談して買っているはずなので、自分の理想とのギャップ、本音でちゃんと相談しているかどうか。実態とは違う選択をしてしまっても、お店の方はこれを買いたいというお客様を止めることはまずないですから、ギャップはそこでも生まれているような気がします。

GD クラブは進化しているけど、現実とのギャップが広がっている?

長谷 選択肢が多いだけに、「売れている」って言われれば気になるし、今、自分の使っているブランドを使い続けたいと思えば、そのブランドがいつの間にか開発の方針を変えていたりする。それにも関わらず追っかけてしまうこともあるんですよね。

GD 10年以上前のことですが、メーカーに「ボールが売れなくて困っているんですよ」って相談されたことがあります。「それはドライバーが曲がらなくなったから球が無くならなくなって売れないんですよ」って答えたことがあります。

ドライバーが進化して、打球が曲がらなくなった、だから球が無くなりませんというロジックが成立するわけです。だけどスコアカードに記入するスコアは変わらない。パターも昔に比べれば、より研究されて入りやすいものがあるにもかかわらずスコアは変わらない。

長谷 クラブはショット、ショットの最適なものが提案できるわけですよね。ウェッジだったらこれが一番いいですよ。パターならこれが一番ですよ。だけど、その1個1個を繋いでいくのはプレイヤーのマネジメントが果たすべき役割なので、マネジメントが悪いとスコアは良くならない。結局無理をしちゃうから、自分もそうですけど、スコアを崩すわけですよ。

「かっこよく打ちたい」とか、「あそこまでこのクラブで飛ばしたい」とかプライドや欲求との戦いですよね。それが常に毎ショット起きているのがアマチュアだと思うんです。最適なクラブをメーカーは提案している。だけど自分が実際に打つとなると、実は目的とは違う番手、クラブを握っていたりすることがある。

GD 点と点を繋いでいってスコアになると思うんですけど、今クラブなら点を作ることはできる。簡単に言えば、昔フェアウェイウッドってとてつもなく難しかった。でも今はそこまで難しくないから、パー5でスコアを大きく崩さなくなっているように感じます。でもトータルするとスコアが悪い。ショットがいいのになんでスコアが悪いんだろうという現象が起きています。

長谷 セカンドショットで「じゃあ飛ばせばいいのか?」って言った時に、飛びすぎてハザードに捕まってしまって、結局余計な1打を使ってしまっているんだとすると、「クラブとしては打ちやすく、まっすぐ飛ぶようになった機能をマネジメントできているんですか?」って問われているような気がするので、ショットミスは減った、でもクラブ選択とマネジメントミスは減っていないんじゃないですかってことになります。

GD 昔は練習場でも打てません。だからコースでも打てません。今は練習場では打てます。コースでもポイント、ポイントでは打てます。だけどスコアは良くならないっていうところにモヤモヤしていると思います。

長谷 そこはもうマネジメントしかないんじゃないですかね。メーカーとしてはどうしようもないですし、道具単体ではマネジメントまではいかないので。

GD この「ギア問答」ではこれまでクラブのセッティングに問題があるとか、スペックが合わないとか、合わせるにはどうしらいいかを話し合ってきましたが、スコアメイキングの話になると最終的にはマネジメントになるんですかね?

長谷 マネジメントという結論になってしまうのは、スウィングを安定させるためレッスンプロがいるので、一定の打ち方を学んでこれを繰り返すことによってスウィングは良くなります。でもそれはショットが良くなるだけで、ショットを繋いでいくマネジメントにはなっていない。

「ハザードがあるから刻んでいきましょう、恥ずかしくないですよ」、こういう判断はラウンド中にトップアマと言われる上手なアマチュアやプロが言ってくれない限りなかなかわかりません。アマチュアは、あまり考えずに直線的に飛ばしていこうと思いやすいんです。ハザードに入れて叩かなくていい1打を使っている。

GD 球を打つためのスウィングの進化、コースを回るテクニック、それとクラブの進化。この3つがちゃんとそろわないと、クラブの進化の恩恵が受けられないと?

長谷 「ギア問答#30」でウェッジの距離感、ロフトの選び方というテーマの時に、「1つのクラブでもいろんな打ち方ができるよね」、「距離のコントロールも含めてセッティングにしましょう」と言ったように、アマチュアもそういう技術を身につけたりすることでマネジメントが楽になったりすることがあります。

クラブ頼りのマネジメントではミスをした時の差が大きいので、クラブが進化したからスコアも良くなると考えるのはちょっと違うような気がします。

GD クラブとスウィングの関係は当然あります。腕前とマネジメントという関係もあります。身の丈にあった攻め方をしろというやり方。クラブとマネジメントの関係もある。これが三位一体にならないとスコアに繋がらない。

クラブは進化しているけど、スウィングとマネジメントに関してはプレイヤー自身がやらなきゃいけないことだから、ここを磨かないとクラブの本当の進化というものの恩恵を受けることができないっていう話になりますね。

長谷 そうですね。理想のスウィング、理想の飛距離、理想の弾道をイメージする。イメトレはちゃんとできているんですけど、そこに自分が追いついていないことを認められるかってことだと思います。プロの試合を見ていて、フワッと上げたアプローチがチップインをする。「凄いな、やってみたいな」と思う気持ちが湧いてきます。

でも、レッスン番組でアプローチを教えるプロはピッチングウェッジ、9番アイアンで転がしましょうと言う人が多いですよね。そのほうが距離も合わせやすいし、ミスが少ない。結果、プロはチップインがあるだけなのに、アマチュアはフワッと上げたらポコンと上げたら入るんじゃないかって思う。そこを一足飛びに考えてしまうところが、結構あるような気がします。

【購読のご案内】
「長谷部祐とギア問答!」は、ゴルフダイジェスト公式メールマガジンで定期配信(購読無料)しております。みんなのゴルフダイジェストサイト内のバナーをクリックし、購読登録をお願いします。

This article is a sponsored article by
''.