「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はツアープロがニューモデルにスイッチするとき、何にこだわってどんなところをチェックするのか教えてもらった。
画像: 7月にドライバーをタイトリスト「GT4」にスイッチした幡地隆寛。9月の『バンテリン東海クラシック」で2勝目を挙げた(写真/岡沢裕行)

7月にドライバーをタイトリスト「GT4」にスイッチした幡地隆寛。9月の『バンテリン東海クラシック」で2勝目を挙げた(写真/岡沢裕行)

「飛べば嬉しい」アマチュアとはまったく違う

みんゴル取材班(以下、み):「タイトリストGT」は契約選手が一挙にスイッチしましたが、プロがクラブやボールをニューモデルに替えるとき、どんなところを気にするのでしょうか? ツアー帯同の経験も豊富な宮城さんに教えていただきたいと思います。

宮城:ドライバー、アイアン、ウェッジでちょっとずつ違いますが、ドライバーとアイアンに関しては、プロが一番気にするポイントは出球の方向です。それぞれ自分の出したい方向や出しやすい方向があるので、そっちに飛ぶことが第一条件です。たとえばドローヒッターだったら自分の目線から消えるギリギリのところで1メートル右とか、選手によって表現の仕方は様々ですが。

み:われわれアベレージゴルファーはとりあえず真っすぐ飛べば嬉しいのですが。

宮城:真っすぐ出ればいいというものではありません。プロのスウィング軌道はほぼ一定なので、それに対してクラブがどんな球を打たせてくれるかというところを見ます。ドローヒッターであれ、フェードヒッターであれ、真っすぐ出てしまうクラブは使いません。

み:ほかにもプロが譲らないポイントはありますか?

宮城:2番目は打ち出し角とスピン量です。ドライバーであれば飛距離に直結するポイントです。弾道計測機のデータも参考にしますが、実際に飛んでいくボールの見た目の強さとか重さを重要視するプロは多いですね。アイアンの場合はとくにショートアイアンのスピン量です。こちらはスコアに直結する要素です。

み:かまえたときの顔とか見た目はあまり気にしないものですか?

宮城:そもそもクラブメーカーは中身を進化させても、顔をあまり大きく変えることはありません。タイトリストなんかは昔から顔がきれいなので「GT」も違和感なく替えることができたと思います。音や打感もプロは大事にします。初速は出たほうがいいけれど、球離れが速く感じるクラブは使いづらいといいます。

み:ボールをスイッチするときはどうでしょう? アマチュアは飛べば嬉しいですけれど。

宮城:アマチュアはドライバーで飛ぶボールを評価しますが、これも飛べばいいというものではありません。プロはニューボールをアプローチやパターから試します。なぜならパターやアプローチで初速が変ってしまうと距離感が合わなくなって使えないからです。初速が速すぎるとどうしてもインパクトでゆるみやすく距離感が狂ってきます。

み:秋から年明けにかけてニューモデルラッシュが続きますが、アマチュアがクラブを替えるのに一番いいタイミングは?

宮城:ニューモデルが出るタイミングに合わせると冬の寒い時期にフィッティングすることになります。プロでも開幕ダッシュを決めても、6月くらいに成績が落ちてくる選手がよくいます。これは体が動かないときのスウィングに合わせてクラブを作り、暖かくなって振れてくると球がつかまりすぎたりするからです。また、調子が悪いときではなく、調子がいいときのスイングに合わせるのが鉄則です。アマチュアの皆さんも寒くなる前に替えるか、春まで待ったほうがいいと思います。

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