年3回の大会開催に関わる難しさを阿佐比氏は「個人的にはフィジカル的にもメンタル的にも追い込まれる時期が増えました。とはいえ、それは別に大した問題じゃなくて、やはりまだ終わっていないとはいえ、1年で3大会やることでコースにダメージが残ってしまい、メンバーの方に迷惑をかけないようにするにはどうしたらいいか、そこが一番気になっています。正直、今年の4月の時点ではあまりそこまで考えが及んでいなかったのですが、今年の夏の猛暑が厳しかったことで、10月のこの大会を無理をして太平洋マスターズに影響が出るとか、10月、11月の両方を無理してメンバーさんにしわ寄せがくるとか、そういったことは絶対にしてはならないと思いながらやっています」と話す。
「これまでは国内シニアツアーのマルハンカップ、そしてJGTOの三井住友VISA太平洋マスターズの2大会で、今年のような3大会は我々としても初めてですし、世界でもそんなところはないのではないでしょうか。大会ごとに要求されることは異なりますが、今回のアジアパシフィックアマはグリーンコンディションに関しての要望はスピードだけで、『10.5~11フィートにしてください』とお願いされています。またラフの長さは54ミリ。これはDPワールドツアー(グリーンスピードは11.5~12フィート、ラフは45.5ミリ)やJGTO(グリーンスピードは12.5フィート、ラフは68ミリ)の要望よりも“やさしい”設定です。
理由としては、今回のフィールドにいるトップ20の選手はプロ顔負けの技術がありますが、ゴルフ後進国の選手にDPワールドツアーやJGTOといったプロのセッティングにしてしまうと120人のラウンドが終了できない可能性があるためです」(阿佐比氏)
今回のアジアパシフィックアマの開催が決まってから、今年のマスターズ(オーガスタナショナルGC)と全英女子オープン(セントアンドリュース・オールドコース)へ招待され、気持ちが変わったという阿佐比氏。
「オーガスタはもう真似しようと思ってもできるようなレベルではないので、管理手法を真似るというより、彼らの『世界一であり続けなければいけないというプライドや誇り』をひしひしと感じましたし、我々も日本一であり続けたいという思いがあるので、その精神的な部分に影響を受けました。また、『18ホールすべてのグリーンでスピードをきっちりと合わせよう』という努力はオーガスタもセントアンドリュースも同じでした。これまでも『グリーンの均一性』については考えていましたが、どちらかというと『グリーンの刈り高や刈り方を同じ』という思いのほうが強かったのです」
「たとえば、どこか1ホールのスピードが速ければ、『そのグリーンは刈るなら他よりも長くていい』という感じです。そこを学ばなければいけないですし、今後やっていこうという思いがあります。あとは、オーガスタもセントアンドリュースも『伝統を守り続ける』という点で一緒なので、その部分も大事だと思います」
これまでも数多くの大会の要望に応えてきた阿佐比氏に今大会の予想スコアを聞くと、「練習ラウンドを見ていると先進国の選手はびっくりするぐらいいい球を打ち、特にオーストラリアの選手たちは凄い球を打ってたんです。だから、たぶんトップの人たちは相当な実力だと思います。三井住友VISA太平洋マスターズときよりもいいスコアが出るんじゃないでしょうか。先ほど述べたように、セッティングは明らかにプロよりもやさしく、グリーンは止まりますし。ピンポジション次第ではかなりいいスコアで決着するのではないでしょうか」とのこと。
最後に出場選手にひと言もらうと、「コースを楽しんでもらいたいという思いもありますが、それよりもここから羽ばたいてほしいという思いが強いです。このコースを監修した松山英樹選手もそうですが、世界のスーパースターになっていく過程で、この大会があります。その歴史の1ページに御殿場コースがあったと、彼らの胸に刻まれることの嬉しさが強いですし、そこが楽しみであります」。
ここまでの最多アンダーは松山英樹が第3回大会(シンガポール・アイランドCC)で記録した18アンダー。最少スコアも松山英樹が第2回大会(日本・霞ヶ関カンツリー倶楽部西コース)で出した269。今年、歴史的なスコアでの優勝はなるか、そして誰が優勝するのか。目が離せない。
大会は10月3~6日まで入場無料! 各国のトップアマの技術を間近で観られるチャンスなので、お時間がある方はぜひ、太平洋クラブ御殿場コースまで。
※2024年10月4日9時50分、一部加筆修正したした。