今年のホブランは未勝利でベスト10フィニッシュはわずかに2回。そのひとつ、松山(英樹)くんが優勝したプレーオフシリーズ第1戦のセントジュード選手権で2位となり、最終のツアー選手権にまで進出しました。
さすが昨季の年間王者といったところですが、今年は厳しい1年であったことは間違いありません。その"健全じゃないぶり"は、いろんな発言から見て取れます。
たとえば、「いいショットが打てないと試合に出たくないし、出たとしても意味がない」。
実際、今シーズンの出場はわずかに15試合。それもメジャーと出場選手が限られたシグネチャー中心で、その他の大会はスコットランドオープンのみ。
セントジュード選手権の大会前には、「オリンピックでは終盤にいい流れになったのでは?」との記者の言葉に、「あれはたまたまパットが入っただけ」と素っ気ない返し。ショットがよくないとゴルフが面白くないという状態なのです。
プレーオフシリーズに入る前の会見では、「スウィングの話はあまり詳しくはしないよ」としながら、昨年の終盤に思うようにフェードが打てなくなり、オフに徹底的にフェードを打つ練習をした結果、フェースコントロールがめちゃくちゃになり「スウィングを壊した」と危ういくらい冗舌に語りました。
ホブランに興味を抱く理由は、まるでボクの現役時代を見ているかのようだから。もちろんレベルが違いますが、その精神状態と苦しさは、痛いほど理解できます。違いがあるとすれば、コーチに対する考え方でしょう。というのもコーチは心のよりどころであり、ボクはずっと井上透コーチに師事してきました。
ところがホブランの場合、デビューからわずか5年ちょっとで、10人ほどのコーチを取っかえ引っかえ。昨年は新コーチのジョー・マヨをコーチに迎え、グリーン周りが圧倒的に安定しメジャー級の難コースを克服、それが年間王者へとつながりました。
ところが今シーズン初めには、そのマヨをバッサリと切ったことに、驚きを通り越して衝撃すら覚えたものです。ちなみに再びマヨを招聘した全米プロでは3位に入っているのですが……。
もちろんコーチとの関係は、選手によっていろんなタイプがあります。一人のコーチと長い関係を続けるスコッティ・シェフラーやジョーダン・スピース、基本のコーチはいるもの他のコーチの理論に時おり耳を傾けるローリー・マキロイ、コリン・モリカワは一度は解消したコーチのもとで、再び調子を取り戻しました。
タイガー・ウッズはコーチを代えたタイプの一人ですが、ホブランの頻度はタイガーの比ではありません。現役時代、"不健康"であったボクですら、ホブランが〝健全じゃない〞と感じる大きな理由になっています。世界のトップレベルの選手は、そもそも普通ではありません。
ボクの"不健康"は引退へとつながりましたが、さてホブランはまだ27歳です。これをどう乗り越え、再び優勝争いの舞台に戻ってくるのか。ここからまた、ホブランに注目したいと思います。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年10月15日号「さとうの目」より