「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

『ゼクシオ』も11代目から大慣性モーメント化にスイッチ

GD 『ゼクシオ』は13代目まできましたが、11代目(2020年)から『ピン G400マックス』を意識してか、大慣性モーメント化しました。「ゼクシオもピンを意識するようになったのか」と言われているんですけど、これまでの『ゼクシオ』の流れが「ピン」に移行したことについて、どう考えますか?

長谷部 「ピン」に人気が移行したきっかけは、誰もが知るメジャータイトルを獲った渋野日向子プロの影響と言われていますけど、その前から「Gシリーズ」として重ヘッド、大慣性モーメントをピンが言い続けていたので、それが渋野日向子をきっかけに火がついたと思うんですよね。大慣性モーメントのメリットであるオフセンターヒットに強いことが一定層にハマったんだと思います。

ジワジワと浸透していたものがジャンプアップするきっかけがあって、それにみんな翻弄されるようになってしまったと思うんですけど、まだ『G400マックス』の時は、今ほど慣性モーメントが大きくなく、ほどよかったんじゃないかなと思います。

GD ひとつの怪物ドライバーが出現する手前には何かがある。「ピン」がいろんなことを試しながらジワジワやっていた時に、『G400マックス』でジャンプアップしたということですね。

でも、そこにも共通することはアマチュアゴルファーが、結局「やさしさを求めている」ということじゃないですか。1発の飛びとは言うけれども、実はやさしいクラブが出ると、そこに飛びつく傾向があるように思います。

長谷部 そこに関しては、世代交代の話をしたほうがいいのかなという気がします。『ゼクシオ』が団塊の世代より上のシニアゴルファーを中心に市場が形成されていて、20年経過しました。当時50歳、60歳だった人は70歳を超えています。じゃあ今の40代、50代、もしくは30代の人たちが『ゼクシオ』を買うか? って言われたらそうでない。

ゴルファーの人口のボリュームとしては上のほうが厚いとしても、30代、40代が増えてくる中で、アマチュア用のクラブの受け皿が『ゼクシオ』ではなかったということが、ひとつあると思うんですよね。その時に求められたクラブがたまたま「ピン」の大慣性モーメントだったぐらいに考えないと、シニアゴルファー全員が「ピン」に移行しているとは思えないし、この機能がいいと割り切れないところがあるので、新規参入ゴルファーのアベレージゴルファーの大多数が、たまたま「ピン」にハマったと見た方がいいんじゃないでしょうか。

GD 『ゼクシオ』は「部長さんのクラブ」と言われていました。価格設定も含めて50歳という設定だったと思います。そうすると世代交代を含めて考えても、50歳という年齢は、体力が落ちてくる、振る力が落ちてきたときに、やさしさを求めるようになるのかな? って気がします。

『2代目ゼクシオ』と『G400マックス』は20年ちょっとの時代の違いはあるけども、年齢的な視点から言えば、ちょうど50歳になった時に手を出しやすいクラブっていうことになりませんか?

長谷部 『G400マックス』以前の「ピン」のドライバーの価格が、5万~6万円台だった時代があったと思うんです。それって別に部長さんじゃなくても買える値段設定になっていて、もうちょっと若い世代が「ピン」を手にしやすい環境があったんじゃないでしょうか。

一方『ゼクシオ』は当時から8万円台という価格をずっとキープしていたので、物価の変動があったとしても、ちょっと上のほうを見た、いわゆる日本のクラブの中では高いほうの部類なので。

GD 『G400マックス』の手前に安いものがあって、手を出しやすい価格設定のものがあったとするんであれば、『ゼクシオ』にも同様に「キャロウェイ」の『ビッグバーサ』がありました。その流れはメタルの並行輸入品で2万円台ぐらいからはじまって、チタンになっても『グレートビックバーサ』、『ビゲストビッグバーサー』は5万円台後半の価格設定だったと思います。

歴史は繰り返すじゃないけども、『2代目ゼクシオ』が2002年当時ブレイクするにあたって、キャロウェイから引き継いだ地盤ができていた。それと同じように「ピン」も地盤ができていて『G400マックス』がブレイクポイントになった?

長谷部 そうですよね。渋野日向子の影響力はあったとしても、いきなりポッと出でヒットしたというよりも、ジワジワとファンを増やしていたとみるべきでしょう。

GD 『ゼクシオ』が約20年アマチュア市場を引っ張ってきて、現在は、『G400マックス』を起源とする“マックスブーム“が起きています。2018年からだとすると6年しか立っていません。そうすると、『ゼクシオ』が20年間リードしてきたように、「ピン」を筆頭とするマックスブームがしばらく続く。次にこのような大きな変化が起こるのは実はかなり先ってこともあり得ますね?

長谷部 ブランドスイッチを考えると、しばらくは今のマックスと言われるトレンドが続くんでしょうね。ただちょっとヘッドが大きくなりすぎて若干戻ってきているのと、ミニドライバーに象徴されるように最近の大型トレンドに物足りなさを感じているゴルファーが一定層いるので、細分化されてくる。 ツアーのもの、アマチュアのもの、それらにも当てはまらないアマチュア独特の市場が出てくると思われます。

GD 『2代目ゼクシオ』も『G400マックス』も当時のやさしいクラブの代表格とした場合、決定的な違いは、ヘッドの大きさによる操作性があります。

長谷部 全く真逆って言っていいぐらいですよね。重心設計、重量配分の仕方が違うのでなんとも言えないですけど、スウィングで言うと手を一生懸命返すということを初心者の頃に学んでいたアマチュアが、『ゼクシオ』の振りやすさを評価した。

『G400マックス』はゴルフをはじめた頃からメタルウッドで、大きなヘッドではじめた人にとってみれば、手を返すなんていうことすらあまり考えないで、オートマティックに面を変えずに振ろうとする。深重心のほうが打ちやすいっていう人も増えているようなので、ターゲットがちょっとずつ変わってきているでしょう。日本人のみならずゴルファー全体のスウィングが変わってきているのに対して、その時代で最適なものがあったということですよね。

This article is a sponsored article by
''.