鳥肌立ちっぱなしのバックナイン
誰が勝つか全く予想のつかない今大会。やっぱり最終日は最終組だろうと思い、11時47分スタートの池村寛世、木下稜介について最終日の取材をスタートした。池村は7アンダーを叩き出した初日から首位をキープ、対する木下は10位タイ、3位タイ、トップタイと順調に順位を上げてきていた。
多くのギャラリーからの声援を浴びながら、今日も1番からスタート。両者ともフェアウェイキープはできたものの、グリーンのタッチが合わずボギースタート。グリーン上での球の伸び具合が前日よりも増していたように見えた。木下に至っては8~9mの距離を3m以上オーバーさせて3パットスタート。難セッティングの会場が本気を出してきたと思った。
その後、木下が3番で6m近いパッティングを沈めて再び単独首位に戻ったと思いきや、1組前でプレーする今平が4番でバーディ、稲森が5番でバーディを獲って3名が3アンダー、トップタイとなった。続く6番で稲森がボギーを打って順位を落としてからは、今平と木下の一騎打ちが始まる。
8番のパー3、今平が3mのバーディパットを決めて1打離したと思えば、後続の木下は8mのバーディパットを沈めて追いつき、9番パー4、木下が3~4mを決められずにボギーを打ったかと思えば、今平も11番で3mの距離を外してボギー。11番で再び2人が首位に並んだ。
13番では木下がバーディを獲って単独首位になるも、今平がそれを許さず直後の14番でバーディ。14、15番では木下が連続ボギーを打って、2人のスコアは2打差に。残りは3ホール。「今回は今平が勝ちかな」そう話すギャラリーの声もまばらに聞こえていた。
そう思っていた矢先の16番、セカンドをバンカーに入れた今平がボギーを打って差は1打差に。「まだ木下もあるかもしれない」そう期待しつつ17番パー3を見ているとティーショットがバンカーへ。さっき聞いた今平優勝予想が正しいのか……、そう思って18番へ移動すると後ろから大歓声。なんと木下がバンカーからのチップインを成功させ、3アンダーで再び首位に戻ってきたのだ。全身に鳥肌が立つのを感じた。
そうして迎えた18番、今平はフェアウェイ右サイドからセカンドを打ってピン手前20mの位置へグリーンオン。プレーオフで決着かと思っていたところ、今平が20mの超ロングパットを沈めて最後の最後にスコアを伸ばした。グリーンの外周からスタンド席から、各方位から大歓声と拍手が上がった。木下のセカンドがグリーン左のラフに入り、チップインしなかったことで今平が1打差で逃げ切り第89回日本オープンゴルフ選手権の優勝者が決まった。
今回の優勝は、今平にとって通算10勝目であり、初めてのメジャー制覇でもある。「いままであまり成績が良くなかったですが、日本オープンはやっぱり優勝したい大会でもあったので今回優勝できてすごく嬉しいです。最後のバーディパットは、とりあえずパーを取ってプレーオフに持っていければいいなと思っていたのでまさか入るとは……。今まで優勝したなかで一番嬉しい場面でしたね」
今平は最後のパッティングについて、「興奮のあまり頭が真っ白だった」とも話していたが、観戦した人たちも大興奮だったに違いない。スコア速報を追っているだけでは得られない情報、興奮、感動がツアー会場にはある。JGTO主催の男子レギュラーツアーは年内4試合を残すのみではあるが、重い腰を上げて、是非現地での観戦をお勧めしたい。
PHOTO/Tadashi Anezaki