ドライバーが飛ばなくなるのはクラブに原因がある
GD この頃はちょうどホームコースのシングル研修会に入った頃で、ドライバーは真っすぐ飛んで当たり前、ドライバーでバタバタしちゃいけないことを経験していたんです。ドライバーショットを安定させるにはどうしたらいいか? をドライバー選びの第一にしていました。
長谷部 結果的には『R9』の時々引っかかりが出るとか、スッポ抜けるような球が出たんじゃないかなと想像します。『R9』と比較したら『グローレ』のほうが自然にヘッドがターンしてくるので、プレッシャーなくいつものリズムで打てば真ん中に飛んでいくという結果だったんではないでしょうか。
GD 『R9』の時は一生懸命打っていた。『グローレ』に変えて少しリラックスして打てていたような気がします。
長谷部 一定期間は『グローレ』がエースドライバーだったんでしょう。ところが、そういう楽な打ち方をしてくると、飛距離が落ちる可能性があります。一生懸命振るというトレーニング的な要素がなくなってくるんで、ポーン、ポーンとまっすぐ飛べばいいやっていうことを続けていくと、徐々に飛距離が落ちてくる可能性があります。
一般のアマチュアはトレーニングとかをあまり継続しないので、筋肉が落ちてくる可能性があります。その時に、次に動きが見えるのがシャフトを軽くしようとしていたであろう『RS(2016)』ですね。
GD この時のテーマは、あと5ヤード飛んだらいいのになって思ってゴルフをやっていました。ヘッドを変えずにシャフトをあれこれテストしたのが『 RS(2016)』なんですよ。このクラブは「ギリギリ」と言われていて、ヘッドに関しては飛ぶお墨付きがあったので、それだったらよりスウィングとマッチしたシャフトを探そうとしていました。
長谷部 ここで気になるのが、『グローレ』の打点位置と『RS(2016)』の打点位置です。『グローレ』はちょっとトウ寄りの上目で打てばドローも打てるし下目でも大丈夫ですが、『RS(2016)』だと、おそらくフェースセンターでとらえて、ややフェードの球になっていたんじゃないかなという気がするんですけど?
GD 基本そうですね、フェードです。
長谷部 そうなるとここで利いてくるのが重心距離です。41ミリだった『グローレ』から37ミリの『RS(2016)』が気持ちよく打てたというところを考えると、クラブ長さが若干長くなって、シャフトを色々いじったとしても軽くなる傾向だったと思うので、全体的には振りやすさを求めていた。
【4モデルの重心距離/重心深度】
●『R9スーパートライ』/41.7ミリ/39.6ミリ
●『初代グローレ』/41.0ミリ/38.2ミリ
●『RS(2016)』/37.4ミリ/41.7ミリ
●『RS5(2020)』/38.5ミリ/42.0ミリ
その中で手を返さずに気持ちよく振り抜ける、なおかつギリギリ設計の最も効率のいいフェースセンターで打てるクラブに仕上げようとしていたんじゃないですかね。フェース部分が軽いからかもしれないですけど、『RS(2016)』は当時の平均値から見ても慣性モーメントは大きいんですよ。
でも、重心設計で言うと重心距離37ミリは非常に短く、重心深さ41ミリは非常に深い。普通で考えると、深いものはタイミングが取りづらくなってヘッドの操作性が悪いところを重心距離で全部補正しているヘッドだと思います。フェースが自然に返ってきてフェースセンターでとらえられていたのが、『RS(2016)』がハマった要因だと思います。
GD なかなかシャフトが決まらなかったのは、いい塩梅みたいなものを探していたっていうこと?
長谷部 そういうことですね。先調子で一生懸命打っていた時代から、中調子になって心地よい振り感を求めていた。ダウンスウィングで振り下ろしてくる時のリズム感とかタイミングの取りやすさを求めてシャフトを探していたんじゃないかなという気がします。
GD そう言われると思い当たることがあります。先調子、中調子、手元調子、いろいろなシャフトをテストしていました。結果、何が何だかわからなくなったのですが、それでも、傾向的には先調子がよさそうな印象がありました。一度『グローレ』で中調子に行きましたが、先調子が合うスウィングをしていたのかもしれません。
長谷部 フェースコントロールをインパクトで調整したかったんでしょうね。職人技じゃないですけど、気持ちよく振っていくというよりは、インパクトで操作したかった。
GD 最終的に落ち着いたのは『アッタスパンチ』でした。ここで60グラム台の6Sから50グラム台の5Sに変えたんですよ。
長谷部 ここで大きな変化として見られるのが、先調子から中手元に動いていることです。真逆の性能のシャフトなんですけど、タイミングの取りやすさで言うと、とにかく重心距離が短いヘッドだったので、フェースの返ってくるタイミングを探した結果、ダウンスウィングでしなりを感じられる『アッタスパンチ』を選んだことが想像できますね。
GD そこまでは考えていませんでしたが、あまり操作しなくても普通に打っていったら打てるなって……。『RS(2016)』と『アッタスパンチ』の組み合わせは、やめられなかったんですよ。
長谷部 初速が出るヘッドなので、あとは正確にインパクトさえすれば飛ばせるということがわかっていたので、振りやすさ重視のシャフト選び、タイミングさえ合えば間違いなく真っすぐいく感覚があったのでしょう。慣性モーメントが大きいので引っかかりも少ないということですかね。
GD その後の『RS5(2020)』に移行するのに結構ちょっと苦労しました。 なかなか『RS(2016)』を超える感じがしなかったんですけど、でも使ってみると打ちやすさがあって。『アッタスパンチ』と『RS5』の組み合わせも試してみたんですが、何かが違うってなって、シャフトをまた『ツアーAD PT』の5Sにして、今は完全に定着しています、もう4年になりますが……。
長谷部 考えられることとすれば、オフセンターヒットの強さが、左右のバラつきを抑えているのではないでしょうか。ミスはしたけど真っすぐいっているな、みたいな結果がこのヘッドのメリットとして考えられます。
ヘッド重量も若干重くなっているんですけど、慣性モーメントがめちゃめちゃ大きいんですよね。2020年の平均値よりも圧倒的に『RS5』はでかい。これは『R9』の時みたいな動きになっているんですけど、世の中の平均値よりも慣性モーメントがちょっと大きい、安定感を求めたヘッドを好む傾向はあるようです。
そうした時に手元よりのシャフトだとヘッドの動きが少しもたもたするはずなんですよ。ヘッドの重量が重いというよりは、慣性モーメントが大きいので振り下ろしてくるときのヘッドの動きが鈍くなるはずなんです。タイミングの取りやすさを求めて、また中調子に戻った可能性はあります。