「マイナスをプラスに転じる」という事例を見事に実現させたのは、愛媛県にあるゴルフ場だった。

そのコース名は松山シーサイドCC。同CCは1977年に開場。瀬戸内海を望む高台に位置しロケ―ションは抜群で、コース間は大きなクスノキでセパレートされている。そのクスノキが開場当時は小さな苗木であったが、47年も経つと大きな樹木へと成長。

立派なのは良いのだが、コース管理を行ううえで大きな弊害が生じてきた。陽が遮られて風通しが悪くなり、結果、芝生の光合成が妨げられ、その成長を阻害することになったのだ。そこでやむなく間伐することになったという。

しかし、その間伐材を処分する費用には苦慮したという。産業廃棄物に出す費用は本来予定外で、経営自体を健全にするには、ないほうが良いに決まっている。

運ばれていくクスノキを苦々しく見ていた支配人の藤井伸忠氏が、あるときクスノキが樟脳の原料であることを知った。それから藤井氏の独学が始まった。間伐材を有効利用するための「水蒸気蒸留法」というハーバルウォーター(ハーブ水)の製造法を調べ、実験を重ねて製造に必要な蒸留窯なども揃え、自社だけの製造装置を完成させたのである。

画像: クスノキの香りがするアロマミストのほかにクスノキと配合させたゼラニウム、ハッカの3種類

クスノキの香りがするアロマミストのほかにクスノキと配合させたゼラニウム、ハッカの3種類

藤井氏は大学の理工学部(電気)出身で、「化学とは畑が違うものの、理工学的思考経路は似ている」と話してくれた。こうして作られた商品は、クスノキの香りがするアロマミストのほかにクスノキと配合させたゼラニウム、ハッカの3種類。販売開始以降、店頭では毎月10本、ウェブで20本ほど売れているという。

「新しい命を吹き込むという意味で“IBUKI”と名付けました。まだ産廃費用と釣り合うには至っていませんが、望みは持っています」(藤井氏)

同CCの製品は100%無添加で、今後も別の商品化を検討していくという。全国のゴルフ場でサイドビジネスを生み出す努力が続けられているが、具現化するのは稀少。同CCにエールを送りたい。

※週刊ゴルフダイジェスト11月19日号「バックナイン」より

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