「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

シャフトとヘッドで「つかまり」と「つかまり過ぎ」を相殺する

GD 6モデルの中には、やさしいモデル、難しいモデルがあり、一貫性のようなものをあまり感じないのですが、共通しているという点はどこですか?

長谷部 『EPICスター』で重心深度の深いものを使いました。このドライバーはフェース面上の重心高さが割と低く、重心が深いヘッドでした。はじめてのカーボンコンポジットなんですが、フルチタンから変えられたのは、打音がフルチタンに近く、「ポコッ」という打音がしなかったんです。『EPICスター』でスピン量は減らせたので飛んで結果も良かった、重心距離が長いものを使った結果として球筋がフェードでも飛ぶことを認識できて、ドロー一辺倒の考え方が変わったクラブでもあるんですね。

その後選ぶのが『SIM2』なんですが、重心距離の長さも変わってくるので、一貫性という意味では目指す球筋が変わったので、(ギア問答#36で話した)「重心距離って割と変わらないものですよ」とは真逆なんですけど、自分の場合は重心距離が変わることによって球筋も変えざるを得なかった。むしろ球筋を変えたいから重心距離を変えてきたという変遷になります。

GD 『Xドライブ405』から『EPICスター』まではスイートスポットがヒール寄りで、「SIM2」と「ローグST マックス LS」はトウ寄りです。ドローを打ちたいと思っていても、フェードバイアスがかかっているものになっています。

※スイートスポット位置
●ツアーステージ Xドライブ405/ヒール側に1.5ミリ
●レガシー ブラック/ヒール側に5.6ミリ
●グローレF/ヒール側に1.8ミリ
●EPICスター サブゼロ/ヒール側に1.4ミリ
●SIM2/トウ側に1.8ミリ
●ローグST マックス LS/トウ側に0.6ミリ

長谷部 3年ぐらい前からですかね、ストレートに近いフェードで飛ばすプロを見てドローにあまりこだわらなくなりました。むしろ初速を生かしてほぼストレートボールのフェードを目指す意識が芽生えましたね。ドローを完全に否定するわけじゃないんですけど、今の最新のクラブで飛ばすには、フェースセンターできっちり球をとらえて、初速を高めつつ、フェード系でもいいという感じになってきました。

GD 一般的にドローバイアスのクラブは飛ばないという書き込みとか、話を聞きますが、飛距離性能はフェードバイアスのほうが上ってことですか?

長谷部 それは打点と重心位置の関係だと思うので、一概には言えないと思うんですけど、ドローバイアスのものはヘッドがターンしやすいので、ヒール側に当たってしまうと飛距離をロスする可能性があります。フェードバイアスのほうがゆっくりフェースが返ってくるので、重心距離が長めでも結果としては挙動が安定するので、初速が得られるんじゃないかと思います。

GD 手を返して打つよりも、フェース面を変えないで振り抜くことで飛距離が伸びると言われるのも、その辺が作用している可能性がある?

長谷部 体の正面でとらえる打ち方を理想としていた昭和のゴルファーは、そこを目指してスウィングを作ってきたわけなんですが、最近は体をしっかり回転させて、手を遅らせてもいいからフェース面を変えない打ち方が今のドライバーの打ち方なのかなと思いますね。

GD フェースプログレッションの変遷を見ると、数字が増えて、また減っています。フェースプログレッションはヘッドの回旋に影響してくる数字だと思うのですが、この変化の理由は何ですか?

※フェースプログレッション
●ツアーステージ Xドライブ405/16.4ミリ
●レガシー ブラック/17.5ミリ
●グローレF/21.6ミリ(最大)
●EPICスター サブゼロ/18.4ミリ
●SIM2/16.3ミリ
●ローグST マックス LS/14.4ミリ

長谷部 ここは完全にフェースの遅れを取り戻すためです。フェースプロフェッションが少なめでつかまりのいいものを選んでいるという結果になります。『グローレF』は形状がいいんですけど、アゴが出ている(フェースプログレッションが大きい)ので球がつかまりにくい。

『EPICスター』も若干大きめなのでつかまりづらいヘッドになります。ここを重心の深さが補正しているという形になっています。今はスピンを減らしたいので、重心をそれほど深くなく、でもつかまりは担保したいので、フェースプログレッションの数値はすごく気にしています。

GD 『ローグST マックス LS』は、重心距離と重心深度が40ミリ切っています。今の平均からすると。「40、40」ぐらいが多いかと思うんですけど、その辺はどうなんですか? 重心距離40ミリ、重心深度40ミリがひとつの基準値になっていると思うんですけど。

長谷部 『SIM2』は重心距離41.1ミリで、重心深度は36.9ミリで浅めになっています。つかまりを抑えつつスピン量を減らすフェードバイアスのヘッドですが、スピン量を抑えられる機能が隠れていると思うんで、フェードヒッターにはつかまりが良くて、なおかつスピンが減らせるので、安心してフェードが打てるクラブなんじゃないかなって気がしますけどね。

GD 低重心率は『グローレF』以降下がっていますけど。

※低重心率
●ツアーステージ Xドライブ405/62.6%
●レガシー ブラック/64.7%
●グローレF/66.6%
●EPICスター サブゼロ/60.0%
●SIM2/61.6%
●ローグST マックス LS/60.6%

長谷部 『SIM2』は形状的に見ても重心が浅めになっている。『ローグST マックス LS』は少し形状がストレッチしているんですけど、重心が非常に浅い。見た目の安心感はあるけれども、重心が浅いのでスピンは増えない。今流行りのネオマレットの浅重心みたいです。

GD シャフトとの兼ね合いはどうなんでしょう。

長谷部 『グローレF』の途中から『スピーダー』にしました。それまでは『ツアーAD』の「DI6」、「DI5」だったんですが、だんだんドローが打ちづらくなってきて、『スピーダー』で球をつかまえにいきました。中調子の『スピーダー』だったんですけど、ちょっと走るのでつかまえやすくなりました。それを『EPICスター』でも継続していました。『SIM2』でもう一度「DI5」を使いましたけど、今は『スピーダーNX ブルー』を使っています。

GD それはどういう感覚で変えてったんですか?

長谷部 気持ちよく振り切ることができたのが『ツアーAD』の「DIシリーズ」だったんですが、一生懸命振っていました。コントロールしたいという気持ちがだんだん出てきて、操作性のいい『スピーダー』に変えたという感じですかね。

つかまる安心感が『スピーダー』にあった。「DI5」だと右にスッポ抜けることがあった。『スピード』にはそれがなかったので、確実につかまえられるシャフトを選びつつ、ヘッドでは逃がしている感じです。

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